「料理バイキング 白鯨」前編
今日俺はとある場所へ来ていた。いや招かれたというべきか・・・・・・ 先日俺の元へ一通の手紙が郵便受け入っていた。それは、ここへの招待状だった。このバイキング料理店へ俺を招待するとは変わったやつだ。
招待した相手はネット上の食レポーたちのレビュアーサイト「美味の漢字は美味い味と書く。」の運営から送られてきたものだった。今まで割引クーポンの紙切れ一枚送られてきたこともなくましてや招待状といったこんなものが送られてきたことに俺は少し戸惑ってもいた。
これは俺が「美味の漢字は美味い味と書く。」からも食レポーの1人として認められたということか?それとも食レポレビューの評価の高いレビュアーにランダムで無作為に送っているやつなのか?見当もつかない。
だが俺はこの招待状を受け取りこの店に来た。運営からの初めての俺に対しての挑戦状だ。このバイキング料理店でどのような評価を俺がつけるかで運営が俺に対しての食レポーとしての評価を下すのだろう。一度もあったことのない運営側の人間に俺が足元も見られるなど許せないが「美味の漢字は美味い味と書く。」の土俵上で評価を得ている俺には文句を言う資格はなかった。俺の舌を見くびられては困る。今まで様々な料理を食べて俺が評価を付けてきた店は他の食レポー達の間でも評判はいい・・・・・・ 俺が食レポした店は売り上げが食レポレビューを投稿する前より上がっていることが多い、すなわちこれは紛れもない事実だ。いいだろう・・・ 俺が運営にほかの食レポーたちとの格の違いを見せつけてやる。
今日やってきた店はこちらだ。
「料理バイキング 白鯨」
店構え ★★☆ 見た目は船というか海賊船をモチーフにしたような店だ。
立地 ☆☆☆ 不明だ。ただ足場はふらつくこともなく安定している。
どんな店か ★☆☆ バイキング料理が出される店と言うことしかわからない。
店先でようやくアイマスクを外す許可がでた。招待状を手にして書かれている日時に決められた場所に行き、連れてこられたのがこの「料理バイキング 白鯨」だ。
これ以上もこれ以下もまったくもって知識がない店だ。目先の先入観にとらわれずに評価しろと言うことか。運営の目的が大体わかってきた。アイマスクは運営側の余興かと思っていたがそうではなかったわけか・・・
「いいだろう俺が単騎でこの船に乗り込んで食らい尽くしてやるよ白鯨の骨までな・・・・・・ 」
巨大な白鯨との戦いではなく俺VSバイキング料理だ。これは間違ってはいけない。あくまで主旨は料理の評価・・・ 単純に言えば美味いか不味いか・・・ また来たいか来たくないか・・・ 単純なものだ。
海賊船のような店の中に入る。白鯨なのに捕鯨船ではなく海賊船と言うところが引っかかるがこれも何かに繋がっているのだろうか・・・ 甲板から出ている扉の入口から船内へと入る。船内は店先でみたあの海賊船の中とは思えないほどの広さがだった。船として海には浮かばないだろうこれだと。見た目だけの側だけの海賊船であった。
船内に入ると船員いやウェイターとここでは言おうか、テーブルへと案内してくれた。そのテーブルは予約席となっており初めから運営がこの位置で料理を食べるように決めていた位置のようだ。
バイキング料理を食べるにあたって席はまぁそれほど重要ではない。
料理と位置が近ければ料理を運んできやすいがそれは他の人が料理を運ぶ際に近くを行ったり来たりすると言うことでもあるのだ。落ち着いて料理を食べることができない。ほかの客がどんな料理をバイキング形式の店で取って食べるのかと言ったことを知ることができるがこれは相手側も俺がどんな料理を取って食べているか知られてしまう。
だから席と料理の位置が程よい席が好ましいそれ以外は俺はどうでもよい。
席に着いて俺はいったんあたりを見渡す。客は・・・ 4、5人と言ったところか。この客も俺と同じ食レポーの人たちなのか・・・・・・ まったくわからない。謎が多すぎる。この料理店は・・・ 俺以外の客が俺と同じ食レポーかどうかと言うのは今は関係ない。料理に集中するんだ・・・ あたりを見渡すのはやめ俺は席を立ち料理を取るために立ち上がる。ここからがバイキングだ。初めに席に着いて立った瞬間からバイキング・・・ 狩猟の開始だ。
この店はトレーに皿やボールといったものを乗せそれに料理を自分の食べたい分を入れて自分の席に持ち帰り食べるといった、居たって普通のバイキング料理店だ。トレーに皿を2枚小皿を1枚ボールを1個乗せる。この店は少し大きめのさらに小さく正方形に区切られた皿もあったが、これが俺の狩猟初戦の構えだ。あんな女子供が食べる料理の皿など俺はごめんだ。皿はご飯類や麺類また肉類、デザートといったものに対応することができる。うどんやラーメンと言ったものは専用のボールかこのボールで取ることとなるのでこの皿で扱う麺類には入らない。小皿は漬物系や調味料などつまり味リセットに近い存在だ。ボールはサラダ類やスープ類と言った感じだ。
俺はまず1枚目の皿に魚飯を入れる。白飯もいいがここは海賊船をモチーフにしていたこともあり、まずは魚飯を選んだ。皿の半分に魚を乗せる。残りの半分は何を入れるかだが俺は好きなものを取って入れる。見栄えも重要かもしれないがバイキング形式では自分の好きなものを自分の好きな量入れて食べることができる。それがバイキングだ。他人から見える見栄えばかり気にして少しの量しかとらないのは考えられない。嫌いなものは取らなくてもいい。
俺は見た目が鮮やかになるからと言って緑の野菜や赤いデザートなどと言ったものは取らない。なぜバイキングに来てまで嫌いなものを自ら取って食べなくてはならないのか、好きなものを好きなだけ食べて金を払うのならともかく嫌いなものまで食べて金を払うではずいぶんと違ってくる。
魚飯を入れた残り半分空いたスペースに俺はから揚げ数個とイモとエビ、うずら卵の天ぷらを入れる。これで1皿目は終わりだ。2枚目の皿にはミートパスタを入れる。そのミートパスタの上にミートボール数個取ってを乗せる。バジルや粉チーズと言ったものは乗せない、かけない。これで2枚目はおしまいだ。小皿には沢庵を乗せる。
「そういえば最近かつ丼食ってないな・・・」
沢庵で思い出したが俺はかつ丼を最近食ってない。かつ丼が嫌いな男はいない。だが俺はかつ丼は食べても運ばれてくるときに丼の蓋の上に乗せられている漬物の沢庵は食べない。俺の好きなかつ丼の上に置かれているのだ。こんなもの許されるか。かつ丼を頼んだのにメインでかつ丼ではない一番初めに目に入るのがこの丼の蓋の上に置かれた沢庵だ。かつ丼を食べるためには丼の蓋の上に置かれた・・・ 沢庵の入った小皿を一度どけて・・・ 丼の蓋を開けて・・・ だ。許されるのかこんなこと・・・ 俺は許さない。 減点だ グリンピースが入っているかつ丼、あれはなしだ。
ボールにはコンポタージュを入れる。これで俺の一回目の狩猟が終わった。これをもって席へ戻る。席へ戻ると俺の席に1人客が座っていた。