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3 女騎士に梅干しを食べさせる

なんとか寝る前に更新できました! よかった!

 こうして、幸福寺および俺と竜神様の第二の人生がスタートした。


 なお、竜神様が――

「あまり神とおおっぴらに言われるのもよくないし、リューナでいいわ。あと、タメ口で問題ないわ。そういうの気にしない性格だから」


 とおっしゃられたので、今後、リューナと呼ぶ。


 あくまで、俺は呼び捨ての許可を得てるからそう呼ぶわけで、無許可で呼び捨てにするのはお勧めしない。


 第二の人生二日目と三日目はひたすら寺の掃除をすることにした。


 外に出るのは一応控えておいたほうがいいし(なにせ、ドラゴンとか空、飛んでたしな)、そうなると、掃除ぐらいしかすることがないのだ。


 とはいえ、普通の家と違って、建物の数が無茶苦茶多い。


 本堂は大日如来が安置されていて、それが住職一家の生活スペースと渡り廊下でつながっているが、ほかにもいろいろある。


 いわゆる、お堂がたくさんあるのだ。

 多いので箇条書きにすると――


●まず、不動堂。

 不動明王が祀られている。


●次に、池の中の小島にある弁天堂。

 弁財天が祀られている。


●北側にある毘沙門堂

 毘沙門天が祀られている。


●薬師堂は医療系のホトケである薬師如来が祀られている。


●あと、もうちょっと近代的な建物である信徒会館や宝物の入ってる倉庫もある。厳密にはまだある。


 それだけあると、掃除といったって、とても一日では終わらないのだ。


 そして、四日後。

 ネコ耳女騎士のライカさんがまたやってきた。


 今度は単身だ。


「あっ、ライカさん、先日は食材助かりました」


「いやいや! あなた方は救国の英雄も当然だ!」


 ぶんぶん手を振られた。


「本当はもっと多額の恩賞なりが出るのだが、国がバタついているので、勅令などに時間がかかっているだけだ! お金も領地も出ると思うのでお待ちいただきたい!」


 どうやら食料だけ渡すケチな国だと思われたくないらしい。


「まあ、たしかにここのお金、まったく持ってないし、それはほしいかな」


「ああ、もちろんいくらでも出すぞ! むしろあなた方が王国でほしいものは何だって持ってこよう!」


 それはこっちが恐縮するので、やはりお金をもらうほうが気楽だな……。


 ああ、そうだ、ちょうどいいし、この世界のことを教えてもらおう。

 地理的なこと、全然わからないんだよな。


 この寺が丘の上にあること。

 ふもとの盆地みたいなところに王都らしい城壁都市が見えること。


 わかるのはそれだけだ。


「あの、ライカさん、もしよろしければこの世界の――」


「今日は調べさせていただきたいことがあって、参上した」


 話をぶった切られた。


 そして、ちょっと困った。


 なんだ、調べるって……。


 お前、魔法使いじゃなくて一般人だろなどと言われるとウソついてた手前、ちょっと嫌だ。


「この施設、明らかに我が国というか、この大陸の3ヶ国とは異なる文明でできているので、簡単な調査をさせていただきたいのだ」


「ああ、なるほど」


 俺自身への調査じゃなくて、よかった。


「魔法で移ってきたと思うのだが、まあ、魔法の失敗などということもあるし、そこは問わない。もし、今後魔族との戦いに備えられる設備などあれば見習いたいとも思ってな」


「わかりました。それだったらご案内します」


 俺は玄関からライカさんを連れ歩くことにした。


 まずは生活スペースからというのがいいだろう。


「ほう、靴を脱いで上がるのだな」


「はい、そうです。俺のいた国だとそれがデフォですね」


 続いて、トイレ。


「このボタンを押すと、水が流れます」


「ほう。我が国最新式の魔法式水洗トイレと似ているな」


 マジか。意外と発達してるな、この異世界。


 でも、異世界って欧米系だから、あの機能、慣れてないかな。


「ちなみに、お湯を出してお尻を洗う機能もあります」


「な、なんだ、それは……?」


 やっぱり困惑した顔をしてるな。


「ライカさんは女性なので俺がやってみせるわけにはいかないんですが……よかったら試してみますか? 俺はもちろん外で待ってます」


 ライカさん、明らかに不安そう。


 そうだよね、お尻系のことはチャレンジするの憚られるよね。


「よ、よし……近衛騎士がビビってはダメだ……。やってやろうではないか……」


 おっ、勇気あるな!


 俺は押すボタンを教えたうえで外で待つことにした。


 なぜか待っている俺まで緊張してきた。


「ひゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 なかなか大きな悲鳴が聞こえた。


 大丈夫ですかと入りたいところだが、それは許されない。


 ライカさん、女騎士なら耐えてくれ! 耐えるんだ!


 そのあと、荒い息のライカさんが出てきた。


 混乱しているのか、猫の尻尾が訳わからん動きをしていた。


「なかなか考えてもいない衝撃だった……」


「ですよね。みんな、最初はそうなります」


 絶対鍛えようのない箇所だからな。


「ちょっと、新しい世界が開けそうだった……」


「え?」


 なんか、妙にいい笑顔で言われたぞ。


「まだよくわからないが、もしかすると、あれなしではトイレに行けない体になるやもしれん。そういう可能性は感じた」


 そうなんだよなあ。


 拒否反応示す人がいる一方ではまる人もいるんだよなあ。


 まさにウォシュ○ットの正しい反応だ。


 次に台所を案内する。


 ――と、リューナこと竜神様が作業をしていた。


「もらった食材にいい梅があったから、漬けてるの」


 この人、なにげに料理好きなタイプだな。


「ほう、梅ジャム作りかな」


「いいえ、梅干しよ」


 その時、にやっとリューナが笑った。


 あっ、何か悪だくみ、思いついた顔だ。


「梅干しの去年漬けたやつならあるけど、試してみる? ここのは塩分控えめだから、そんなにすっぱくないわよ」


「なるほど。毒でなければ、なんだっていただこう。王を守るためなら近衛兵たるもの、森や洞窟で何日も野宿することも厭わないからな」


 あ~あ、ひどいことになるぞ。


 真っ赤な梅干しを一つ渡されたライカさんはそれを口に放りこんだ。


 そして――


「うああああああアアアアアアアアアアあああああああアアアアあああ!!!!!!!!!!」


 トイレより大きな絶叫がこだましたのだった。

明日というか今日ですが、12日も複数回更新の予定です!

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