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19 魔族との戦争終結!?

「あの、その仮面取ってもらえませんか?」


 失礼かもしれないが、一度疑惑ができてしまった以上、このままにはできない。


「実はものすごくシャイなんです……」


 本当かな。いまいち信用できないんだよな。


「そういえば、どこかで聞いたことある声ですね」


 サロメが言った。


「あの、俺に見せないでいいんで、彼女に顔を見せてもらえないでしょうか? 魔族だからダメというわけではないんですけど、この寺、魔族に何度も襲われていまして」


「わ、わかりました……顔を見せます……」


 そう言うと、その人は覆面をがばっと外した。


 そして、サロメが意外な反応を示した。


「あっ! あっ! 魔王様!」


 えええええええ! 魔王が来たの!?


 俺はすぐにその顔を確認した。

 割と若い男の顔だ。たしかにサロメに似た角が生えている。付け角ではなかったらしい。


「ば、ばれてしまったか……。そうだ、我こそは魔王だ!」


「その魔王がどうしてここに来てるんだ……?」


「あまりにもここを攻略する部隊が失敗ばかりするので自分の目で見に来たのが一つ。それと、いっそ、自分で相談してみようかなと思ったのが一つ」


 けっこう衝撃的な作戦をとってくるな。


「――って、このシチュエーション、かなり危険なのでは……」


 目の前に魔王がいるのだ。


 そうか、悩みの相談に来る人という設定だと、魔族も排除されずに入ってこれてたもんな。


「いや、攻撃はせぬ。なんというか、それって死亡フラグな気がするのだ……」


 魔王は空気を読んだ。

 たしかに想定外の攻撃で魔族側は何度も撃退されたわけだから、単身で無茶なことはしてこないのか。


「ひとまず、ここが本当に悩み相談をやっている場所であることと、サロメが働いていることはわかった……」


 サロメはどうしようといった顔で魔王から距離をとっている。

 怖くなるのも当然と言えば当然か。


 しかし、これ、どうしたらいいのかな。

 普通に考えればお帰り願うのが正しいのだろうが――


「あの、一応、この寺は相談のあとに本尊のところに行って祈ってもらうことになってるんだけど――やります?」


 仏教的にあまり差別をするのもよくないと思ったので、提案してみた。


「祈る、だと?」


「それで心の平安を得た人は多いですし。もしかしたら悩みが晴れるかもしれないです」


 けっこう無茶苦茶な話だとは思うが。


 しばらく、魔王は悩んでいるようだったが――


「毒を喰らわば皿までだ。やってやろう……」


 多分、魔王も正体ばれた手前ふんぎりがつかないのだろう。


「では、案内します……」


 俺は魔王を本尊の前まで案内した。


「なるほど。独特の神像だな」


「この神像の前に座って、手を合わせて祈ってください。気持ちがすっきりしますよ」


 半信半疑だったが、魔王は正座して仏像に祈りを捧げた。

 目も律儀に閉じていた。


 神々しい光が本尊から現れた気がした。


 そして、魔王が目を開いた時――

 憑き物がとれたように魔王の目は輝いていた。


「我は悪い夢を見ていたのかもしれんな」


 なんか雰囲気が魔王っぽくないぞ。


「意固地になってここを攻めるのはやめる。王国を攻めるのもいったん、とりやめだ」


「えっ、本当ですか!?」


 かなりとんでもないことを俺は聞いているぞ。


「勝てぬものはしょうがない。このままゴリ押しをしても何も変わらんのだから、ほかの手を考える」


 まあ、戦争を続けろと言うのもおかしいので、そうしてもらうことにしよう。


「そうだ、布施を払うのだったな。これは魔王の家に伝わる指輪だ」


 真っ黒な宝石の指輪を仏像の前に魔王は置いた。


「では、我はこれにて帰る。サロメも、安住の地が見つかったようでよかったな」


「は、はい、ありがとうございます……」


 そして、魔王はごく普通に裏門から出ていった。


「ちょっと、二人とも! まだまだ相談の仕事残ってるでしょ! 早く仕事戻って!」


 俺たちがぽけっとしてるとリューナが催促に来た。


「悪い、歴史のターニングポイントに立ち会ってしまってな」

「何それ?」



 翌日。

 王様から、戦争終結に功績があったということで領地を大幅加増するという書状が来た。


 どうやら、銅像も王都に建つらしい。


 また、謎の出世を遂げてしまったな。

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