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18 覆面の依頼者

 その日の夜、物音で目が覚めた。


 外に出ると、すでにリューナもサロメも出てきていた。


「いったい、何なんだ?」


「あっ、圭一まで起こすほどじゃないと思ったので、寝たままにしていました」


 サロメが表門のほうを見ながら言った。


「これぐらいなら、ガーディアンだけでどうにかなるはずですから」


 そう、表門のあたりで戦闘が起こっていた。


 ということは仁王像か。


「魔族が夜を狙って攻めてきてたみたい。でも、仁王に撃退されてるようね。私たちの出番は何もないわ」


 リューナも落ち着いている。

 たしかに、とくに何の問題もなさそうだった。


 魔族の声がうっすらと聞こえる。


「くそっ! まったく歯が立たん!」

「部隊長がやられた!」

「一回、退却だ!」


 どうやら敵の作戦は大失敗したらしい。

 まあ、夜だからといって仁王が動かないなんて設定があるわけないよな。


「このお寺に住んでわかりましたが、ここの守りは鉄壁です。どれだけ軍隊を動員してもどうしようもないと思います」


 サロメが言うと説得力があるな。


「ふあ~あ、じゃあ、もう寝ましょうか。魔族も帰ったみたいだし」


 翌朝。

 どこから情報がいったのか、また魔族を倒したということで感謝状を幼女国王名義でもらった。


 どうやら、この寺で生活している間はまったくの平和だな。


 その週はそれから二度も魔族が攻めてきたらしかったが、やはりあっさり撃退されたようで、建物にも何の被害も出なかった。


「これだけ寺の攻略の失敗が続けば、魔族も攻撃の手を諦めると思います」


 そうサロメも解釈していた。

 本当にそうなってると最高なんだけどな。



 そんなある日。

 ものすごく変な客が来た。


 まあ、お悩み相談室には悩みのある人しか来ないので、おかしな人が来るリスクも常にあるのだが、その人の変さは群を抜いていた。


 なにせ、覆面だったのだ。


 レスラーみたいな独特の覆面でまったく顔がわからない。


 しかもサロメみたいな羊の角がついてるし、鬼みたいなとがった角も頭頂部にある。


 角が多すぎてバランスが悪い。


「これ、仮面の付属物です……」


 よく聞かれることなのか、覆面の人は先に説明してきた。


「なるほど……。それでどういったご用件でしょうか?」


 プロレス団体が不振とかそういうことだろうか。


 それすら絶対にないと言えないようなキャラなんだよな。


 まあ、過去にも匿名希望の人もいたし、それと似たようなものだろう。


「実は……最近、長らく進めていた計画が上手くいかないようになっていまして……」


「ああ、仕事上の悩みですね」


 それだったら、よくあるやつなので、対応可能だ。


「最初のうちは部下の責任ということにしていました。しかし、まったく計画が進まないとなると、より上の責任ということにもなってくるわけで……。どうしたものかなと……」


 この口ぶりからすると、この人、なんらかの幹部なんだな。


「そうですね、具体的なアドバイスはできないんですけど、悩みを聞くことなら可能です。もっといろいろと話して心の重荷を減らしてください」


「そうですか。本当に突然、計画に障害がやってきたんです。予測不可能なぐらいいきなりのことだったので、困りました。それにずっと苦しめられています」


「まあ、突発的な事態もありますもんね」


「こちらもそれを取り除こうとできうる限りの努力はしてきたつもりです。ですが、現状、それは上手くいっているとは言えません。失敗は重なるばかりで、もう諦めるしかないのかなとすら思っています……」


「上手くいかない時は時間を置くのもいいかもしれませんよ」


「ですねえ。それしかないのかなあ……。ほかに打開策も見えないしなあ……」


 と、俺の後ろ、廊下のところをサロメが歩いていた。


「いやあ、やっと休憩できそうです」


 びくっ!


 なんか、俺の相談者の肩がこわばったぞ。


「あの、なんかありましたか?」


「いえ、何でもありません……。本当に何でもありませんから!」


 やけにあわててるような反応だな。

 まあ、いいか。


「プロジェクトの障害は現状、どんな様子なんですか?」


「目の上のたんこぶなうえに、けっこうのんびりしているようで、余計にいらいらとしています」


 どっかにボトルネックでもあるのかな。いろいろと大変そうだな。


 と、またサロメが後ろの廊下を通った。


「ペンをとってくるの忘れました~」


 ここ、一応障子閉めてるほうがいいかな。


 びくっ!

 また、なんか反応があったぞ。


 さらにサロメが俺の部屋をのぞきこんできた。


「あれ。魔族が相談に来てるなんて珍しいですね」


 え?


「いや、この人は仮面に角がついてるだけだぞ」


「あははは、どれが付け角で、どれが本物の角かぐらいすぐわかりますよ~。その人は魔族です」


 ぽたぽた。

 仮面の相談者から冷や汗みたいなものが流れてきた。

 この人、いったい、誰なんだ!?


 どうにも嫌な予感がした。

 いや、覆面な時点で不自然なのだけれど。


「あの、その仮面取ってもらえませんか?」

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