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異世界お悩み相談室 ~実家の寺院ごと転生しました~  作者: 森田季節


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17 病院機能も追加

「そういえば、エルフを見てない」


「何をバカなことを言ってるのよ」


 朝食の時間(ちなみに今日はサロメが作ってくれた)、俺はそんなことを言った。

 たしかにバカなことかもしれない。


 でも、俺は本気だ。


「ほら、せっかく異世界に来たのに、エルフをまだ見てないんだぞ。こんなもったいないことがあっていいか?」


「エルフなら結婚式のパレードの時にいたわよ」

「はい、いましたね」


 マジか! 全然気付いてなかった!


「サロメ、エルフってこのあたりに住んでいるのかしら?」

「そうですねえ。エルフの集落はこのあたりにはないでしょうけど、王都に住んでる人はいるでしょうし、ゼロというわけでもないんじゃないでしょうか」


「じゃあ、そんなに出くわす率は高くないのか」


 そういえば、お悩み相談室にもエルフが来たという話はまったく聞かない。


「あと、圭一、ここにお嫁さんがいるのにエルフ、エルフと言うのもどうかと思うわ」


 リューナに指摘された……。


「いや、違うんだ。浮気的な意味合いはなくて、俺は単純にエルフを見たいだけなんだ」


「でも、男のエルフより女のエルフのほうがいいんですよね?」


「そ、それはそうかもしれんが……」


「はぁ、圭一はバカです……」


 サロメにあきれられかけた。違うって。別に恋愛対象として見るって言ってるわけじゃないんだって……。女優に会いたい的な意味合いみたいなものなんだって……。


 ――と、扉をどんどんとノックする音が聞こえてきた。


 まだお悩み相談室が開く時間ではないのだが。


 無視するわけにも行かないし、俺は扉のほうに行く。



 そこにはエルフの女性が立っていた。


 正真正銘のエルフだ。


 まさか、こんなところでエルフに出会えるなんて。

 俺はついてるぞ。


 ただ――そのエルフの膝には矢が刺さっていた。


「負傷してる!」


「すまぬ……私は山の向こう側で狩りをして暮らしている者なのだが……誤って仲間の弓矢を膝に受けてしまってな」


「なるほど、だから矢が刺さってるんですね」


「ここはお悩み相談室なのだろう? この傷に関する悩みもどうにかしてくれんか」


 無茶ぶりだろ、それ!


「いや、それ、医者に行ってくださいよ……」


「これ以上、歩くのがつらい」


 むしろ、ここまでは歩いてきたのか。


「あと、これ、獣を仕留めるために毒が塗ってあって、そろそろ毒が回って死ぬのだ。なので、王都まで行くよゆうがない」


 大ピンチかよ!


「と、とにかく、そこに座って待っててください!」


 俺はすぐにリューナのところに説明に向かった。


「瀕死のエルフが来た!」


「やれやれね……。回復魔法なんて使えないわよ……」

「わたしもダメです。眠らせてやすらかにあの世に逝ってもらうぐらいしかできません」


 それは根本的な解決にはなってない。


「困ったわね。悩みを聞いてもどうしようもないわ……」


 当たり前と言えば当たり前だ。


「ここは寺であって病院じゃないものな」


「大昔は寺で治療行為の真似事もやってたんだけどね。呪術と医療の区別があいまいだったから」


「ああ、その話は知ってる。平安時代とか、病気になったら、医者より祈祷を行う僧侶のほうが重要視されてたりしたよな」


 とはいえ、今は時間に余裕がないからそんなことをやっている場合じゃない。


 しかし、その時、ひらめくものがあった。


「祈祷……待てよ。もしかしたら、どうにかなるかもしれない」


「圭一、いったいどうするんですか?」


「この寺には薬師堂があったはずなんだ」


「そうね、あまり大きなお堂じゃないけどあるわよね」


「そこにエルフを連れていく!」


 玄関に戻るとエルフが青い顔をしてなにやら書いていた。

「おお、このまま死ぬのかと思って、辞世の詩を作っていた」

「いや、まだそれには早い! ワンチャン助かるから! さあ、背中に乗ってくれ!」


 俺はエルフをおぶって、薬師堂のほうに移動する。


 お堂のカギはすでにリューナが開けている。


 中に安置されているのは薬師如来像。


 ご存じ、医療関係の仏様だ。


 これまで仏像が特殊な力を持ったことから類推すれば、これでどうにかなる可能性が高い!


「さあ、祈って! さあ、さあ!」


「わ、わかった……」


 エルフと俺とあと後ろからついてきたサロメと、カギを開けて待っていたリューナとで必死に祈った。


 ――と仏像がまた発光した。


 淡いあたたかそうな光がエルフに照射される。


「あれ……体力が戻ってきたような……」


 明らかにエルフの顔色はよくなっている。


「やった! 成功した!」


 俺は思わずガッツポーズする。


「なるほどね。薬師如来様も力を発揮するわけか」


 リューナも感心していた。


「圭一、人助けに尽力していましたね。やっぱり、かっこいいです」


 俺も妻からの株があがったのでよかった。



 その三日後。

「前回、ここにやってきたエルフの友人なのだが、矢が刺さってしまってな……」


「お前ら、弓矢、下手だろ……」


 お悩み相談室は健康面の問題にも対処できるようにパワーアップした。


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