14 最高の結婚式
結婚式への参加者の数は想像以上に多かった。
ちなみにいきなり会場に入ると、式典がはじまったと勘違いされるので、外から回り込む際、窓から中を見ての感想だ。
「国中の呼べる限りの貴族と役人が詰めかけている。ほかにも抽選に当たった市民も交じっている」
ライカが説明を加えてくれた。
「まさに英雄の結婚式だからな。これぐらい盛大にやるのは当然のことだ」
「あと、けっこう獣人がいるな。ライカもネコ耳だけど」
「この国はもともと獣人にやさしい国家なのだ。むしろ、差別されていた獣人をたくさん受け入れることで国力を増して、周囲の小国家に打ち勝ってきたという伝統もある」
たしかに獣人の才能を排除する国家より、そのほうが強くなるか。
「さあ、式がはじまるまで二人は控えの間に入っていてくれ。着替えもせんといかんしな」
控えの間に入って、結婚式用の服に着替える。
ただ、男のほうはそんなに大差はなくて、スーツをさらに礼服っぽくした感じだ。
一方で、サロメのほうはウェディングドレスみたいなのに着替えていた。
「に、似合いますかね……」
「うわっ、俺、今日だけで何回惚れ直したらいいんだよ」
勢いで結婚することにしてしまった過去の自分を全力で褒めてやりたい。
こんな最高のお嫁さん、世界中探したってほかにいない。
「今すぐ抱き着きたいけど、服に変な型がついたりするからダメだよな」
「わたしも、圭一に抱き着いですよ。我慢します……」
ううむ、我ながら見事なラブラブぶりだ。
控えの間で結婚式の簡単なだんどりの説明を受けて――
俺たちはいよいよ大広間に入る。
拍手喝采で迎えられた。
「英雄!」「侯爵万歳!」「圭一様!」「結婚おめでとう」
俺を讃える声が響く。
俺もサロメも手を小さく振って応えながら、中央の道を進む。
さて、これでこの世界の聖職者が奥の壇で待っているはずだが――
「おめでとう、二人とも」
そこにはリューナが待っていた。
厳密にはリューナも待っていた。この世界の聖職者もいる。
「王のはからいで、こういう形になったの。誓う神はいろいろだけれど、二人とも、この世界の多くの人のために生きてね。そうである限り、私も応援するわ」
「ありがとう、リューナ」「リューナさん、本当に感謝します!」
うわ、思わず泣けてきた。
とくにすごい演出があるわけでもないのに感動する。
そして、俺とサロメは静かに向かい合う。
といっても、会場は静かじゃないけどな。声が飛び交っている。
いよいよキスの時間だ。
「いつまでも幸せにする」
「わたしもです」
俺たちはゆっくりと、顔を近づけてはじめてのキスをした。
◇
結婚式のあと、王都をパレードでまわった。
結婚を讃えるというより、俺が国を救った英雄だったからだ。
なので、リューナもパレードには加わっている。
どうやら、ひとまず嫌われたり、怖がられたりしてないので、大丈夫そうだ。
「あのさ」
パレードの途中、サロメに言った。
「俺が夫で本当によかったのかな……。ほら、恋愛期間なしで結婚しちゃったし……」
異世界では恋愛結婚が主流なのかはわからないけど、自分としてはやりすぎた気持ちもある。
「だったら、これから恋愛すればいいと思います」
サロメは俺の手をぎゅっと握った。
「少なくとも、圭一が真面目なのはわかります。やりすぎたところもあるかもしれませんけど、わたしはその真面目さに賭けようと思います」
「ありがとう」
こうして、無事にパレードも終わって、俺たちは寺に戻った。