13 王様に褒められる
まさか、幼女が王様だったなんて……。
「わらわのお父上はものすごい大酒飲みでな、酒を飲みすぎて死んでしまったのじゃ。なので、忘れ形見のわらわが王をつとめておるというわけじゃ」
ああ、日本でも酒の飲みすぎで早死にした将軍とかけっこういたんだよな……。
「なので、わらわは酒を飲まぬことにしておるのじゃ! 偉いじゃろう!」
いや、幼女が飲酒したらダメだろ!
そういう法律があるのか知らんけど、感覚的に子供の健康に悪いってわかるし!
そのまま、幼女王ハルーシャは俺とサロメのほうに寄ってきた。
「幸福寺侯の圭一であるな」
俺を見上げる王様。
「は、はい……」
「おぬしのおかげで我が国は救われた! ありがとうなのじゃ!」
幼女王は俺にそのまま抱きついてきた。
「本当にこの国は魔族に攻められて滅亡寸前じゃったのじゃ! それが奇跡的に危機を乗り切ったのじゃ! すべておぬしの功績じゃ!」
あっ、なんかすごく感謝されている。
周囲にいた家臣たちはなぜか感動して泣いていた。
ライカも泣いていた。
「王は魔族が攻めてくる、攻めてくるとおしっこをずっと漏らしていた。それぐらいおびえていたのだ」
「そんな話は今はやめるのじゃ!」
王が怒った。
「あまりにも漏らすからついにはトイレで政務をとる有様だった。それがこんなに元気になって……。私もうれしい……」
「だから、お漏らしのことはそれ以上しゃべらんでいい!」
そりゃ、敵が攻めてくるとなれば、子供は冷静ではいられないか。
「本当に、王はずっと怖がっていた。笑顔を見せることもなかった。それがこんなに元気な姿になられた、すべて圭一殿のおかげだ」
ライカが少しかしこまったことを言うので、俺もこそばゆい。
「王様、この俺があなた様を必ずお守りいたしますので、ご安心ください」
一応、家臣なわけだし、それらしいことを言って――それから、頭も撫でた。
もしかしたら、不敬だったかもしれないけど、姪っ子みたいにしか見えない。
「あぁ、亡くなったお父上に撫でられた記憶が蘇るのじゃ……」
どうやら悪い反応ではないらしい。
「もっと、撫でろ。もっと撫でるのじゃ~。そちらの侯爵の妻もやるのじゃ」
サロメも命令をされたので、
「わ、わかりました……」
俺と一緒に幼女王の頭を撫でる。
「あうぅ、気持ちよすぎるのじゃ……」
謎の光景だが、王が喜んでいるのは確かなので、まあよいだろう。
「なんだか、わたしたちの……子供みたいですね」
ぼそっとサロメが言った。
俺の顔が赤くなる。
「そ、そうかもな……。こんなかわいい子が生まれたらいいな……」
こんな幸せな家庭を築けたらいいな。
「二人とも、そろそろ王を撫でるのをやめたほうがよい」
そこにライカが止めに入った。
「あっ、やっぱり不敬に当たるか?」
「違う、そうではないのだが」
じゃあ、何が問題なんだろう。
「あまり気持ちよくなると、王はおもらしをすることがある」
さっと、俺とサロメは手を引っこめた。
そして、顔をかぁっと赤くするハルーシャ。
「な、何を言っておる、ライカ! わらわがそんなにピンポイントでおもらしをするわけがないであろうが!」
「申し訳ありません! いつも、そろそろおもらしをされるので……」
「今すぐ、替えのパンツを持ってくるのじゃ!」
「本当に漏らしてるのかよ!」
ついついツッコミを入れてしまった。
「大丈夫じゃぞ? そんなに漏れてない。もう、ほぼお漏らししてないと言ってもよいレベルじゃ」
いや、漏らしてるじゃん……。
「こ、こほん……」
威厳を保つためか、王は咳ばらいをした。
「とにかく、圭一の功績はとてつもないものがある。無論、その結婚式もとことん讃えたいと思う! 妻が魔族であろうと気にはせん! 安心するがよい!」
「ありがとうございます!」「ありがとうございます!」
俺とサロメはそろって頭を下げた。
王様がこう言ったということは国家公認なのだ。
「おめでとう、二人とも」
後ろからぱちぱちとリューナが拍手をしてくれていた。
リューナもいつもの巫女っぽい服からドレスに着替えている。
「いやあ、よかった。本当によかった。この私もうれしい」
ライカも祝福してくれている。
「うむ、わらわは心が広いからな! わらわほど、心の広い王はどこを探してもおらんぞ!」
「これでお漏らしの数が少なければよいのですが……」
ライカが余計なことを言った。
「ライカ、死刑」
「心狭い!」
「さすがに冗談じゃ。あまり、お漏らしお漏らしと言うのは風評被害じゃ。そんなにやってない。せいぜい一日二回程度じゃし」
「頻度高い!」
それ、夜寝てる時だけじゃなくて、日中にもやってる計算だ!
「まあ、水属性じゃな、水属性ということじゃ」
何かが違う気がする。
「ああ、あと、魔族の娘よ」
今度は王はサロメのほうを見上げる。
「は、はい……何でしょうか……」
「その角を触らせるのじゃ」
「あっ、はい、いいですけど……」
「おぉ、羊さんの角なのじゃ~」
無邪気に王は喜んでいた。
「さあ、結婚式の会場へ行こうか。城の大広間を使うがよい!」
よし、いよいよ俺とサロメの結婚式だ。
「行きましょうか」
サロメが俺の手を握ってくる。
今の俺はこの国で一番幸せな男かもしれない。




