10 結婚しました
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俺の言葉は勢いで言ったものにしては筋が通っていると思う。
だって、俺、かなり王国に貢献してるはずだ。その人間の妻を害するような仕打ちはさすがになかなかできないだろう。
ただ、言ってから、ちょっとずつ恥ずかしくなってきた……。
「ああ、その……嫁というのは、あくまで設定的なものであって……俺と恋愛することまでは強制しないから……」
サロメのほうもじわじわ恥ずかしくなってきたらしく、赤くなった顔をちょっとそらした。
「そ、それなら……魔族を捕まえて奴隷にしたとでも言っておけばいいじゃないですか……。嫁にしなくても……」
「奴隷なんて関係は嫌だ。何が嫌かって、その……対等じゃないし……」
対等な関係性じゃなかったら、そこに恋愛だってない。
「ぷっ……」
サロメが声を出して小さな声で笑った。
「なんか、わたしと本当に恋したいみたいですね」
「うん、できるならそうしたい」
この言葉は自然と言えた。
サロメは俺のほうに体を向けると――
俺にぎゅっと抱きついた。
羞恥心が残ってるから、力いっぱいってわけじゃないけど。
それでも俺の錯覚かもしれないけど愛情を感じた。
「じゃあ、妻のこと、ちゃんと守ってくださいね」
サロメが上目づかいで俺の顔を見つめる。
微笑みながら。
「うん、絶対に守る」
「ところで、あなたのお名前も聞いてないんですが」
そういえばまったく話してなかった……。
「圭一です、サロメさん……」
「サロメでいいです……圭一……」
こうして、俺は結婚することになりました。
リューナの休憩時間の合間を縫って、そのことを伝えた。
「ええええええええっ!」
ものすごくわかりやすく驚かれた。
「結婚する!? たしかにそのサロメって子はかわいそうだし、守ってあげるべきだと思うけど、ほかに方法ないの?」
俺は寺の中で王国にずっと隠して匿うのは難しいし、それなら妻ですとでも宣言したほうが王国も「お、おう……」と言うしかないのではと説明した。
「まっ、いいか。ある意味、その子の作戦で王国側は死者が一人も出てないわけだし、許されそうな気はするわ」
「ありがとう、リューナ! 話がわかる!」
サロメも明らかにほっとした顔になっていた。
そりゃ、自分の命がかかってるんだからそうだよな。
「ありがとうございます」
リューナに頭を下げるサロメ。
「私が理解しても王国がOKと言わなければ意味がないのよ。まあ、仕事が終わったあとにそのへんのことは話し合いましょ」
そして、お悩み相談室が閉まった頃――
「圭一殿、リューナ殿、実に甘いプルーンが王家に謙譲されたので、一部を下賜しにまいった!」
女騎士のライカが寺にやってきた。
なんか理由をつけてほぼ毎日やってくるな、この人。
そして、本尊の周囲を掃除しているサロメと遭遇した。
「うおおお! なぜ、ここに魔族がいる!」
「あっ! わたしは無害ですから! 話せばわかります! 話せばわかります!」
「問答無用! ――おっと、圭一殿」
トラブルになりそうなのがすぐにわかったので、本堂に寄った。
「あの、王国に伝えてほしいんだけど、このサロメって子と俺は結婚した」
「なんと!!!!!!!」
声デカいな! オーバーリアクションすぎる。
「ほら、恋愛って種族とかも超える時あるだろ。なので、魔族とはいえ、公爵夫人なので、そこんところ頼む。それで王国の許可を得てもらえると大変うれしい」
ちょうどいいから、好き勝手にライカに要求してみた。
「委細わかった。まぁ、王国も圭一殿のおかげで命脈を保ったようなものだし、拒絶するようなことはなかろう。それに侯爵がずっと独身というのもいいことではないしな」
「ありがとうな、ライカ」
「これぐらいならお安い御用だ。私に任せておけ」
おっ、今日のライカはなんか男前だ。
「もし、許されそうにないなら、責任をとって私が腹を切る」
「何の解決にもなってないからやめてくれ!」
妙にこいつ、死のうとするところがあるよな……。
その日の夜には、またライカが馬でやってきて――
「王から結婚の許諾を得てきたぞ。あと、結婚祝いの品々もあとで馬車にて届ける!」
無事に許されたことを報告に来てくれた。
「夜にわざわざ悪いな」
「こういうことはすぐに伝えておきたいものでな。ああ、それと、日程はそちらで決めてもらえればいいのだが」
まだ何か話があるらしい。
「圭一殿は一度も王にお目どおりしていないし、結婚式を兼ねて王都に出てきてはいかがか? ぶっちゃけ、魔族が妻なわけだし、二心がないことの表明にもいいかと思う」
そっか、ついに寺から出る日が来るのか。
次回は夕方あたりに更新できればと思います!