乾望
乾望
死んだ絵描きが残した筆は
まだかまだかと待っている
胸躍らせながら待っている
再び宙舞うそのときを
地球を描くそのときを
七色帯びるそのときを
世界を創るそのときを
死んだ絵描きが愛した筆は
いつかいつかと待っている
風化しゆく自身の体を
憂いながら待っている
絵描きの手に取られるその時を
願いながら待っている
まだかまだかと待っている
はやくはやくと待っている
深夜ドライブ
川沿いの土手の、両脇に腰ほどの茶色い草が生えた一本道
どこまでも続きそうな、長い一本道
ヘッドライトを上へ向けても、先の先まで見ることはできない
少し遠くへ目をやると、川に架かる橋の、アーチ状のシルエットがぼんやり見える
土手の下へ目をやると、こちらにはまるで無関心な様子の家々が、不規則に規則正しく並んでる
無理もない。この家々は、自分とは無関係なのだから
川沿いの土手の、どこまでも続きそうな長い一本道
この道をまっすぐ行けば、あの日々の、あの時歩いた一本道に続いているような、そんな気がする一本道
川沿いの景色など、何処のものも同じようなものだ
そんなことを考えながら、あの日々の、あの道の匂いを頭の中で感じながら、ひたすら進む
そうして国道にぶつかって、夢の中から現実へとハンドルを切る
上を向いたヘッドライトは、もう少しそのままで。




