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青の涙  作者: 刹那氷
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プロローグ

一発の銃弾が少女の胸を貫いた。

滴り落ちる血液と彼女の顔から流れる涙と体から流れる血液はまるで花のように雪の下に咲いている。

 辺りからは悲鳴や逃げ出す人々の足音その両方が僕の耳に混ざって聞こえて今にも吐きそうなそんな感覚だった。

「なんで…どうしてこんな」

少し涙をぬぐって僕は彼女を抱きかかえた。まだ温かい彼女の体が僕の腕へ伝わってきた。

 この世界には人が死んだ時、埋葬する葬儀屋も墓もないだから死んだ人間はただ抜け殻のようになってそして花を咲かせる。

死体は腐り骨を見せる、そんな話を僕はどこかで聞いた事があった。だが、そんな話は信じる暇もなくついさっき僕の目の前で死が起きたのだそして目を閉じている彼女の頭からは一厘の花が咲き始めていた。

花の色は白く歩く途中にたれた血が道に目印のようについていていた。

 僕の家に入り彼女をそっと藁の引いた床に寝かすともうすでに彼女の体からは血が出なくなっていた。

それは彼女の体が花になることを意味していた。

血の付いた服の中から白い花が咲き始めていて1時間ぐらいで彼女は花に埋もれて服と彼女に咲いた花だけが残ったどれだけ花をかき分けても彼女の体の暖かさも声もそこには無い花が僕の目の前に散らかっているだけだ。この世界の死に僕は虚しさを感じていた。

 人が死ぬ度にこんな現象が起こり繰り返されて誰もがその人を忘れてしまう死を見なかった人々はそこに流れていた血痕もその人の体も見ることはないそこにある花をただ踏んで過ぎ去る人もいれば死を理解して花を見ながら通りすぎる人もいるそうして人を忘れるぐらいなら僕は彼女の花を鉢に植えた。

 残りの花は誰にもみられないように冬の海へと捨てた。

そうして僕は自分の家にある彼女から咲いた花を見る。その花はいつみても変わらず可憐にさいている。

考えてみれば残った花も海には捨てるべきではなかった。

あの時の僕はきっととても残酷な事をしてしまったのかもしれない

こんな世界で生きている僕の心の中にはいつも涙が流れていて顔からその涙が出ないほど泣くと言う行動が出来なくなった。

それは彼女が死んでから今でも変わっていない。







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