魔法で出来ない事
一華の過去はかなり壮絶なものとなっている。
否流我とはその過去からの仲である。
一華は仲間を確保できるのか!?
「入るよ」
放送室に入る。
「来ましたね。後ろの女の子は?」
「知ってるでしょ?」
「ええ。よく知っています」
「なんでこういうことするの?」
「いきなり本題ですか」
「遠回しの方が良かった?」
「いいえ」
「もっかい聞く。どうしてこんなことするの?」
「あなたに話したら何か変わるのですか?」
「んなことないけど、ニコラさんが救われるかもしれない」
「そのような救う価値も無い女、どうするつもりで?」
「救う価値がない?」
「ええ。何があったかは彼女が1番知っている筈ですが」
ニコラの方を向く。
「何が、あったの?」
「わ、私はシーナさんから夢を奪ったのです」
「夢?」「奪った?」
「シーナさんは自動車の運転免許を持っています。彼女の夢は自分の好きな男性と同じ職場、つまりとある運送会社に勤める事でした」
「あるとき私は道順を覚えるためにトラックを走らせていました。とある一本道でのことです。私の前に急に飛び出てきたのです。そこは制限速度70kmのところでした。」
「そのとき私は親の喧嘩に巻き込まれていました。それはとても辛かったのです。そこで……。」
「車に飛び込んで自殺しようと、したのか」
「……」
「そして、その車がーいえ、そのトラックはシーナさんのものだったのですね」
「……はい」
ニコラはか細い声で肯定した。
「その後は察しがつく。職場は解雇されるわ好きな人から避けられるわで大変だったろう」
「……あなたの目的がみえないのですが
あなたはどちらの味方なのですか?」
「中立だ。ナホは?」
「ニコラに肩入れしたいですが今は中立です」
「……もしかしてどっちも笑顔で仲直りさせたいのですか?」
「できれば、な」
そう言うとシーナは俯く。肩を震わせて。
「……………な」
何か言葉を発した。
「「?」」
小さくて聞き取れない。
「…………乗るな」
何がいいたいんだ?
突然彼女は顔を上げた。凄い形相で。
「調子に!」
「!?」
「乗るなァーっ!」
周りの機械が作動する。不協和音と言うべき音がスピーカーから流れる。
「うっ……」
思わず耳を塞ぐ。そこに放送室の窓ガラスを割ってモンスターが現れた。人型が主だった。
「私はニコラを直接殺す気はなかったわ。でも、そんな脳みそお花畑の平和ボケした人を連れてきて何がしたかったの?私を侮辱したかったのでしょう?」
「ちが……」
「私は今、間接的にあなたを殺す。モンスターに殺させる。それでもまだ、その男とナホが調子に乗ったことをするなら直接殺す!私の気持ちを踏み躙ったこと、後悔しなさいよ!」
「ひ……」
ニコラの方にモンスターが行く。しかしそれはナホによって阻害された。
「いい動き。助かる」
ナホはモンスターを殺しはしない。殺すと捕まる事が多いからだ。
が、その判断は誤りだった。気絶させても起き上がってくるのだ。相手は人型。身体の内部構造もほぼ同じ。しかし、関節を外しても追いかけてくる。
「シーナ!あれはどういうことだ!?」
「敵に自らの能力を教えますか?」
「……っ!」
とうとう俺にも襲いかかってきた。蜻蛉切を天井に刺すと俺はそのモンスター―イアノモという―の懐に突っ込み肘を鳩尾に入れる。もちろん普通な気絶している。
「ウガァァ!」
「おっと!」
大振りな腕。よけるのは容易い。
「ウグゥ!」
「なっ!」
なんと関節を逆に曲げて手刀を繰り出してきた。
「ぐぁ!」
ほぼまともに当たってしまった。
「あんなのありかよ……なっ!」
他のイアノモがボディプレスをしてきた。
「ちょ、ま、くっ!」
苦肉の策。敵の前で能力は極力使わないのが戦い。しかし、やむを得ない。
「トンボ!」
俺は天井に刺さった蜻蛉切に捕まっていた。そこにワープしたのだ。これが蜻蛉切の魔法。能力型の魔法。
「へぇ。そんな能力あったんですね。それがあなたの能力ですか。能力使うなんて……。
必死ですね」
「当たり前だ!皆生きることに必死だ!生きるために生きてるんだ!他人の死なんか祈らずに皆自分の幸せのために生きてんだよ!お前も自分が楽しくなること考えろよ!もっかい好きな奴と話してみろよ!人殺した程度で嫌うような奴だったのかよ!子供の頃の夢なんだったよ!それ追いかけてみろよ!好きな奴と同じじゃなくてもいいじゃねぇかよぉ!」
「ウガァァー!」
「おい、マジかよ」
ナホが押されつつある。仕方が無い。使うか― 。
「はっ!」
イアノモたちが、急に地面にくっつき始めた。と、言うより上から押されている、俺が押してる。
「もう1つ能力があるの!?」
「うあぁぁ!」
イアノモ達を蒸発させた。
「な……」
「はぁ……はぁ……」
蜻蛉切から手が離れる。ランク6の魔力消費は辛いのだ。だがまだ仕事がある。
「ふっ!」
「きゃ! 」
シーナを引き寄せる。背中から強い風を起こしただけだが。
「な、なんですか?」
「許してやれよ……ニコラを」
「そ、んな……」
「ダメなのか?」
「あ……」
「頼む……」
「あ、あなたは何故部外者なのにこんなに首を突っ込んでくるのですか」
「俺の恋人は殺された。虐めの果てに」
「「え……」」
「また、俺の知ってる世界で虐めで人が死ぬのは嫌なんだ。だからだ」
「……………………………………」
「君たち!何を……シーナ!」
「!?」「先生……!」
「うちの生徒に手を挙げるか…」
笛を、その先生は吹いた。
「何事だ! 」「なんですの?」「どうした!」
たくさん先生が来た。まずい……。
そのとき、シーナが俺に耳打ちをしてきた。
「私の能力は、とても微弱な電気を飛ばすこと。それは筋肉を動かしたり、脳波とちょうどいい……」
「なぜ、いきなり……?」
「貴方への尊敬の意よ」
「……俺の魔法は大気圧を自在に変えられる。ランクは6だ」
「そう……ですか」
そう言ってシーナは微笑む。何が目的だ?
「そういえば私から名乗っていませんね。私はシーナ・シルットです」
「……小鳥一華だ」
「ありがとう。一華さん。ですが、やはりニコラは許せません」
「……?」
「私はニコラを殺すでしょう。私の能力で。そして―」
「やめろ!」
「うぁ……」
「ニコラさん!?どうしたのですか!?」
「む、胸が……痛い……」
そして、彼女は体中が赤くなり、節々から、毛穴から血を吹き出し、倒れた。
「ニ、コラ……?」
「な……おい!」
シーナの胸倉を掴む。
その瞬間―
「先生!?」
「グ、グゥ」
先生方も同じ症状で倒れた。
「は……?どういうことだ。何をした!?」
「心臓を少し弄り、血液を逆循環させました。これで、この学校に残ってる先生はいませんね」
「「……」 」
シーナは放送の機材を弄り出す。成程、あれで放送に合わせて電気を―電波を流してるんだ。
「シーナ、もう止めろ!」
「ナホさん」
「……」
「ナホ?おい、離せ!」
「今はナホさんは私の支配下です」
「くっ……」
そして滅びの歌が流れる。それを聞いたものは、皆、地を吹き出して死んでいく。ここにいる3人以外は。
「な……」
校庭の部活をやっている人達が死んでいく。
「おい!」
「ここは全寮制ですから。生徒もほとんど死にました。」
「……っ」
「ナホさん。もう離してください」
「っ……シーナ!」
「さあ、一華さん。私を殺してください」
「は……?」
「ニコラさんだけが死ぬのは可笑しいです。かといって私だけが死ぬのも嫌です。周りの人も虐めていたのですから」
「それはお前が……」
「私はリーダー格の人しか操っていません」
「な……じゃあ」
「みんな、自分の意思でしたよ?」
「………………」
「だから皆殺しました。でも、ナホさんだけは最後の最後まで世間の流れに抵抗して虐めませんでしたね。だから殺しませんでした」
「あと罪人は私だけです。私を殺してください」
「悪いが自分で頼む。俺は罪人に成りたくない」
「それも、そうですね。でもね、一華さん。」
「ん?」
「自殺って、とても怖いんですよ?」
その顔は泣いていた。後悔するように、泣いていた。
そして、その涙が、血に、かわった。
「ねえ、どうなったんですか?」
「最悪のGoodENDかな 」
「さっきからそればっかりじゃないですか」
「そういえば、このお願い聞いたら俺のお願い聞いてくれるんだよね?」
「……そうですね。家に戻ったら聞きましょう」
今は市内の公園に二人でいた。日が傾いてる。
「あんまり、戻って欲しくないな」
「さっきからそればっかり。なんでですか?何があったんですか?」
とても、全校生徒と教員が死にましたとは言えない。
「仕方無い。戻るか」
「こ、これは……?」
「シーナの罪滅ぼしの結果かな」
「誰がいきてるんですか!?」
「学生、教員は全滅だろうね」
「そんな……」
「実はシーナはクラスのリーダー格しか操ってないんだ」
「え?それじゃあ……」
「皆自分の意志だったんだって」
俺は知ってる。リーダー格を敵に回す怖さを。
「そんな……」
でも、そうまでしても守りたいものがある気持ちも、わかる。
「貴方の能力をもっと早く使っていればこんなことにはならなかったんじゃないですか?」
「シーナの説得は魔法じゃ出来ない事だよ」
「魔法?」
「魔法」
「能力では?」
「魔法でしょ。教科書も魔法学って」
「能力学、と……」
「「ん?方言か?」」
「さて」
「何ですか?お願いって」
「俺とパーティを組んで欲しい」
「……いいですよ。どうせやること無くなりましたし」
「よしっ!じゃあ、早速だけどフローランスに行こう!」
「急ですね!」
「明後日出発ね」
「…………」
一華編終わりです。次回からは否流我編に入ります。
あと、皆能力っていってますけど魔法ですからね?
次回からも頑張りますので出来れば広めてください!