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謹慎って本気でするやついるのかね

人間は一定以上の研究をすることを禁じられている。その為志半ばでギルドに捕らえられた研究者も少なくない。

「……と、いうわけだ。ひでぇだろ?」

「我がそこまで人間に嫌われてるとは甚だ遺憾かだが……。主が掟を破ったのだろう?」

 軍人が帰ったせいで俺はまた謹慎中だ。だが暇をこじらせた俺は雷音のところへ赴いていた。要するに雷音に愚痴りに来ていた。

「破ったんじゃない。破ってるんだ」

「……我は主が不安だ。主にも仲間がいるのだろう?さぞかし迷惑だろうな」

「ぬ……痛いところを。ん?仲間いるって言ったっけ?」

「我が襲ったときにいた奴らだろう?」

「ああ。いい奴らだ。俺が―……ンダム」

 スキルとかいう能力を持っている。その言葉を何とか呑み込む。なんとか誤魔化したが……。

「意味がわからない……。主はスキル所有者だろう?」

「!?」

 驚いたのは言うまでもない。

「我の知り合いにいたのだ。スキルについて研究している輩が」

「いた?」

「数百年と前の話だ。もう死んでいる」

「……」

「その子孫はどこかの国の長をしているらしいな。その地下に研究書類があるだろうが……。どこだったか」

「そこが1番重要だろ!」

「落ち着け。我が覚えてることを話そう。

 そもそも我々―、『インドラライオン』という種類のモンスターはいない。昔、魔法をとある人間に教わったのだ」

「魔法を?」

「うむ。昔我々は『ブランスタイガー』と呼ばれていた。この体毛を美しいと感じた人間は我々を殺戮し始めた」

「お前らを殺戮?どれだけ強かったんだ?」

「我々が弱かったのだ。あの頃はまだ階級分けもされてない時代だが、分けるなら我々はC程度だろう」

「…………」

「そこにその行為に反対するものが現れた。その意見に賛成するものが徐々に増えていった。しかし我々の体毛は大層高く売れるそうでな。それを売買することを軸として成り立つ国もあったのも事実だった。そこで反対派は考えた。我々を強くすれば良いのではないか、と」

「自分達は戦いたくないから、か?」

「そうだ。それを知った各国は反対派を捕らえ始めた。そして結局リーダーまでもが捕まった。そしてリーダーは処刑された。人間の敵を増やそうとした、とな」

「言いたいことは分かる。俺もそれでこうして謹慎しているんだからな」

「してないではないか。話を戻そう。反対派はいなくなり我々の絶滅がいよいよ現実と化そうとしていた。そして今度は我々が願った。強くなりたいと。その思いは人間に届いたのだ。奴は雷と知恵の魔法を持つ人間だった。我々の脳波をキャッチしたらしい。そやつには仲間がいた。火の魔法を使う者と水の魔法を使う者だった」

「その雷のやつがスキルを研究してるのか?」

「そうだ。『実験がてらに』と言いながら我々に火、水、雷の魔法を与えた。電気で脳回路を弄ったらしい。我の仲間にアグニライオン、ヴァルナライオンとがいるがその時に与えられた魔法の差だ。

 そしてその実験の経過を見るといい研究施設に入れられた」

「悪いやつじゃねぇか」

「研究施設というだけで悪いと決めつけるな!檻に入れられたわけでもなく放し飼いになっていた。その研究施設はたまに国から襲撃を受けるらしくてな。その用心棒としての役割が我々にはあった。何度も敵を撃退するうちに仲良くなった。……そうだ!ユーフォルビアだ!」

「雷の奴の名前か!?」

「そうだ。我々はユーフォルビアと仲良くなった。しかしある日ギルドが研究施設を押さえに来た。そのギルドはとても強かった。ユーフォルビアと2人を全力で逃がし我々は戦った。魔法とはここまで強いのかと目を見張る戦果だった。しかし敵は途絶えない。そこで『作戦』を立てた。ギルドそのものを叩こう、と」

「へぇ………!」

 凄い。ずっと防衛しかしてなかったのに攻めることを知ってたんだ。こいつら頭いいな。

「結果は落としきれなかった。が勝利と言って良いものだった。何よりこちらの被害が研究施設のみだったのだから。資料も結果もユーフォルビアが持っていたからな。仲間も誰も死ななかった」

「あ!学校で習ったわ。『モンスターの反乱』。それ以来階級分けされるようになったって」

「そうだな。その後ユーフォルビアその頭脳を使い国を建て王となったそうだ」

「はぁ~……」

 目の前に教科書に載ってる人が-人じゃない。獣がいるなんてなかなか経験できない。さて。大事なことを聞かねば。

「フルネーム分からねぇか?」

「確か……ユーフォルビア・アイリス・バルサ。だっな」

「ふぉあい!?」

「!?何だその反応は」

「バ、バルサ……!?」

 バルサって……!?ローズちゃん!?ローズちゃんの国にスキルの情報が!?

「ありがとうな!滅茶苦茶大きな情報だ!」

「そ、そうなのか?」

「オレの仲間に子孫がいるかもしれない」

「ほう?名は何と言うのだ?」

「ローズ・アマリリス・バルサだ」

「……相変わらず花が好きだな」

「明日呼んでみるよ。ここに」

「そうか。悪いが楽しみに待っておる。主の携帯端末を貸してくれぬか?」

「ん?何に使うんだ?」

 渡す。すると1件のメールが届いた。

「なになに……?」

 のぞき込む。そこには「小鳥一華。これで合っているか?」と書かれていた。

「もしかしてこれ、お前が打ったのか?」

「脳波をメール電波に変えて送ったのだ。主がこのアドレスに送れば我に届くだろう」

「すげぇな。なんでも出来るじゃねえか」

「とりあえず今日は帰れ。そろそろ主の仲間が帰ってくる頃だろう」

「げ……」

 それはやばいな。さっさと帰らねば。ここから部屋まで歩いて2時間か。ん~歩いて帰りたかったが仕方ない。蜻蛉切で帰るか。蜻蛉切は部屋に置いてある。

「じゃあな!」

「ではな」

 森の中へ消えていった。



 俺が部屋に着くのと否流我達が帰ってくるのは同時だった。

「お、おかえり」

「ヾ(〃゜ω゜)ノタダィマ!アイタカッタ!!」

「うわ……」

「リアルドン引きですね」

「今のは誰でも引くわよ」


「さて」

「嫌よ」

「まだなんも言ってねぇ!」

「『さて』って不穏な発音なのよ。一華が言うと」

「ぬぅ……。それはさておきだな」

「置くんですか」

「明日会わせたい奴がいる」

「ほう」

「予定空けておいてくれ」

「分かったわ。でも誰なの?」

「秘密だ( ̄▽+ ̄)キリッ」

「ナホ。お風呂湧いてるかしら?」

「はい」

「くぅ……」

 決め顔をスルーされてしまった。悲しいことだ。

「しかし誰なんだ?」

 改めて問いかけられる。

「本当に会ってからのお楽しみだ」



「おおう……」

「怖いんですけど……」

「……!っ……!」

 ローズちゃんに関しては言葉も出ないらしい。

「……一華よ。こ奴らが主の仲間か?」

「!?」

「話せるんですか!?」

「……」

「ローズちゃんが倒れた!」

「その娘がローズか。

 ……面影がある」

「なんの話だ?」

「説明もしてなかったのか」

「ああ~……。忘れてた。友達の雷音だ」

「随分とぞんざいな説明だな」

 雷音の口からこれまでの経緯を話す。

「話聞いてるとあそこの王様がいい奴に思えてくるな」

「悪い奴だったのか?」

「裏ギルドとつながってたな。それにリリスの婚約を勝手に決めていた」

「悪い奴じゃねえか」

 憤慨だ!

「なにか理由があったかもしれないぞ?」

「そうだよ!何言ってんの」

「お前どっちの味方だよ。なんにせよボルソルソに行かないことには始まらないな」

「リリスちゃんの故郷ですか?」

「故郷ってほど離れてもないけど……そうなるな」

「休校日に行くのよね?」

「お、ローズちゃん起きたか。そうだな」

「じゃあ問題ないわ。ブランスタイガーさん」

「ほう。その名で我を呼ぶ者がまだいるとはな」

「昔に絵画が飾ってあったわ。『初代王の作品』とも書かれてたのも今の話で頷けるわ」

「そうか……」

 寂しそうだな。

「その絵が見たいのか?」

「いや、そこまで我々を思ってくれていたのか、と思うとな」

「……いい人だったんだな」

「うむ。そうだ。これを持っていけ」

 雷音は純白の細長い何かを差し出してきた。

「これは?」

「死んだ仲間の尾だ」

「怖ぇよ!?」

「冗談だ。マフラーだ。これを巻いていけばその王にも事情が伝わるだろう」

「マフラーパスってやつか」

「初めて聞いたわ。その言葉」

「とにかくボルソルソに行こう。動くのはそれからだ」

「ええ!」「はい!」「ああ!」





「乗り気でないのはあたしだけなのかしら?」

 ギルドに所属しているとはいえ俺達は学生。更に今回は学校からの支給なんてあるわけ無い。全て自費。宿代は浮かそうと考えた結果……。

「こんな家に住んでたのか。危ないよ……」

 ローズちゃんのアジトに来ていた。

「設備はしっかりしているのは驚いたな」

「そうですね。必要なものは揃っています。どうやって揃えたんですか?」

「そ、それは……」

「人ん家からパクったんだろ?」

「何よ否流我!その悪意たっぷりの言い方は!」

「そうなんですか」

「軽蔑はしないでほしい……」

「そうだぞナホ。ローズちゃんは盗賊だったんだ。そうでもしないと生きていけなかったんだろ?」

「そうね。何も無かったから」

「大変だったんですね……」

「だからって……俺の心まで盗むなよ///」

「ごめんなさいね。あたしにはそのボケに対するツッコミの語彙がないの」

「ボケ……!?」

「話を割って悪いがどうやって城に入るんだ?」

「マフパスだろ?」

 マフラーパスのことだ。

「そうだろうが、そもそも何か変だ」

「そうですか?」

 否流我が変と言うなら変なんだろう。

「……火薬の匂いが街中からする」

 それは否流我にしか分からないだろう。

「分かるの?」

「だいたいはな。ここ、戦争してんじゃないか?」

「戦争ですか!?」

「それはまぁ厄介だなぁおい」

「……もしかして今のセリフには続きがあったりするのか?」

「流石否流我だ。邪魔するなら相手国潰すか、と言いたかった」

「無理ですよね」

「ええ」

「歩く弾薬庫に未来兵器レールガンを使う人間がいるんだぞ。たぶん勝てる」

「ちょっと待って。何か出来る気がしてきたわ。潰さないでね?」

 ローズちゃんが焦りながら俺を止める。

「そうか。まぁでも城には行こう。戦争中ならゴタゴタで色んな情報が手に入るかも」

「「入りたく無い……」」

 えぇ……。ハモるなよ。モチベーション下がるだろ。

「お城ですか……。女の子の夢ですよね!」

「きゃああぁ!」

 ローズちゃんを一言で崩した!流石ナホ。心理学を齧ってるだけある。

「さぁ3対1だ。行くぞ否流我」

「くっ……」



「今は事情により城内立ち入り禁止です」

「お引き取りください」

 門番にRPGのテンプレみたいなことを言われた。

「このマフラーが目に入らぬか!」

 カッ!と目を見開いて言い放つ。

「は、はは~。……とはいきません。何ですかそれは」

「通じたんですか!?」

「これはブランスタイガーの毛でできたマフラーだ」

 驚いてるナホを横目に話は進む。

「!」

「どうぞ」

「マフパス……」

「すげぇな」

「ローズちゃんもマフパスって言うようになったか」

「べ、別にあんたにつられた訳じゃないんだから」

「!俺もう死んでもいいかも……」

「ダメですよ?ツンデレ如きに負けては」

「ナホから黒いオーラが……」


「なんだこの忙しいときに!」

「ちゃーす」

「馬鹿じゃないですか!?」

「む!?ローズ!それに貴様は鍛冶屋の息子か!」

「ご、ご無沙汰しております」

「貴様らのせいで戦争になったのだ!」

「俺達のせいで?」

「婚約を断ったせいで大変なことになっている!だが、裏ギルドを倒してくれたことは感謝している。あれのお陰で戦争まで持ち込めたのだからな。貴様らが倒して無かったら一方的に叩かれていただろう」

「何か複雑な事情があるんだな。正直どうでもいい。それより王様。俺達地下に行きたいんですが」

「地下?何を……」

 王様の目が俺のマフラーを捉えたようだ。

「今じゃなくても良かったろうに。この面倒くさいタイミングで」

「悪いな」

「いいだろう。ローズは残ってくれないか?私とて親なのだ。謝りたいこともある」

「それは仕方無い気がするが……どうする?」

「いいわよ。後であたしが地下に行くわよ」

「分かった」

「そうか。案内してやれ」

「はっ!」


「本だらけだな」

 4メートル以上はある本棚が何10個も並んでる。それにパンパンに本が入っている。薄暗く少々不気味だ。机は綺麗に片付けられている。

「じゃあローズちゃん来るまで思い思いのことをしてて」

「分かった」

「了解です」

 俺は一冊の本を取り出した。題名は「モンスターへの魔法献上について」。薄いが文字が小さく読みにくいため図だけパラパラ見る。

「ん?」

 写真が挟まっていた。3人の人間-女性が1人と男性が2人。

「これはユーフォルビアの仲間か」

 気になるが読み進める。よく分かんなかったが実験は成功したらしい。良かったな。

 次の本を取る。「二つ目の魔法について」。当たりを引いたか?パラ読みする。

「ん~」

 ローズちゃんのような2つの魔法を使う人間の研究だったようだ。これの被検体はユーフォルビア本人だったようだ。確か雷音の話では雷と知恵だったか。知恵の魔法って何だろう。結果は書かれていない。遺伝するかどうかの実験のようだ。

「次だな」

 取る。表紙には「ブランスタイガーの生態日記ver.0」と書かれている。しかし開くと……。

「ワオ……」

 エッチな本だった。女の-説明など不要だろう。分かったことは金髪のグラマラスな女性が好みだったということだ。無言で棚に戻した。めげずに次の本を取る。「魔法の裏について」。

「裏?」

 よく分からない。とりあえず読む。

「スキルと名付けたそれについては前回のものを読んで欲しい」

 冒頭にこんな文章が。この本の隣にあった本をキープしておく。そして読み進めた。

 ……凄い内容だった。

 人間には「究極魔法」と呼ばれる魔法が使えるらしい。ただそれには相当の対価を払わなくてはならない様だ。これはもって帰ろう。駄目だろうか。

「これ持って帰っていいんですか?」

 監視役とでも言えばいいのか。そんな感じの兵士に聞く。

「構いません。その内容は我々では活用しきれませんから」

「ええ……」

 大丈夫なのか?とりあえず持ち帰ろう。

 遂にスキルについての本を読む。

「スキルについて

 稀に魔力を消費しない魔法を持つものがいる。これは2つの魔法を持つ-双魔法と何か関係があるのか確かめる。現に私の知恵の魔法はおよそ魔法を消費しない。


 前回はここまで書いて詰まったが色々な実験をして分かったことがある。魔法献上したモンスターを人間が食べるとそのモンスターの魔法を魔力消費0で使用できるのだ。しかし他のモンスターでは出来ない。これは何なのだ。


 前回からだいぶ時間が経った。1人になってから実験をしていたがどうやらSS級以上のモンスターを食すと魔力消費0の魔法を手に入れられるようだ。だがS級でも可能な時やSSS級だが出来ない時があり検証必要。……ラッシュには嘘をついてしまったな。


 ただのSS級では駄目なようだ。意思疎通が出来ており尚且つ相互理解がされていることが条件なようだ。階級によっては意思疎通と相互理解がなくても可能かもしれない。


 今更気がついたか俺は知恵魔法のモンスターを喰ったことがない。どういう事だろうか。もしかすると魔力消費0の魔法が人間の次の進化なのかもしれない」

 終わった。これに毎回図解付きで解説が載っている。……次の進化?

「一華」

「ローズちゃん。終わったの?今更だけど漢字で呼んでくれてるよね」

「なっ……!な、何の意味も無いわよ」

「ローズちゃんも好きな本探してみれば?結構面白いよ。これとか」

「何これ。ブランスタイガーの生態日記ver.0……?」

 開いてしまった。

「っ///!なんてもの渡すのよ!」

「いい反応だ」

「嬉しく無いわよ褒められても」

「まぁ探してみなよ」

「分かったわ」

 さて。他にはどんな本があるんだ?

終業式って嬉しいものですね。校長の話が終わり閉式の言葉と聞いた瞬間思わず「やっ!」と声が漏れました。

進級できるそうです。良かったです。

まだまだ続いてしまうのでよろしくおねがいします。

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