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スキルと結界と失敗と

結界魔法とは空中あるいは物体にそれぞれ決められた魔法陣を張りその円に相手を触れさせて発動させる移動魔法である。自分が構築した空間に相手を連れ込むことで戦いを有利に進めることが出来る。


 俺はどうしたらいい?

 その質問に答えてくれる人間はいなかった。自分で見つけるしかないのだから当たり前だった。しかし分からない。

 -いや、あった。少々情けないが一華とナホが合流するまで待てばいい。それまで時間を稼げればいい。

 やることが決まればもう動くだけ。

 アベイユを撃つ。勿論ガードされる。しかしその瞬間に俺は蜂の群れから抜け出す。蜂が本物ではないのなら追いかけて来ないと踏み、さらにガードの瞬間はこっちを見られないと考えた。それがどうやら当たりだったらしい。

 そして蜂の群れを撃つ。当たった蜂は霧散する。こうしていけば時間は稼げる。

「へぇ。頭がいいのね。そこまでして待つ仲間がいるのかしら?」

 流石はマスターだ。戦いを見極めている。

「でもそれが最善策かしら?」

「俺の脳みそでは最善だ」

「そう」

 静かにそういった。それには少し軽蔑が篭っている。

「例えばこうしたら?」

 そういうとリリスに大量の蜂を向かわせた。それを波状で送る。撃ち落とし切れない……!そして気付く。蜂が一回り小さくなっていることに。

「小さい……?」

「スズメバチとミツバチってどっちが強いのかしらね……」

 聞いたことしかないがスズメバチは戦闘能力が高いがミツバチは環境対応力が高いらしい。つまりミツバチは熱に強いと。

「リリス!」

「くっ……痛っ!」

 ミツバチは1度刺すと死んでしまうらしい。だから大量のミツバチを送っているのか。

 嫌なことを思い出した。ミツバチの攻撃方法は刺すだけではなく《温める》だと。スズメバチを大勢で囲みスズメバチを熱で殺すのだ。ただてさえ熱を帯びているリリスの周りにミツバチが大勢で群がっているこの状況。

 アベイユはリリスを殺しにかかっている。

 それを証明するかのようにサーモグラフィック映像はリリスの周りを赤白く映していた。

「リリス……!」

 まずリリスの周りの蜂を撃つ。少しは消したが少しだけだった。次にリリスに向かってくる蜂のルートにグレネードを投げる。下手をすればリリスに当たってしまうが死ぬよりマシだろう。一瞬途切れたがすぐに来る。これを繰り返す。

 すると俺の方にも来た。しかし無視して繰り返す。


 どれほどの時間が経っただろう。俺は魔力が切れかけている。リリスはまだ生きているようだ。

 そろそろやばいか。

「もう諦めたら?」

「もうちょい粘らせてもらう」

「でも……」

 そう言ったその瞬間だった。リリスが倒れた。

「リリス!」

 死んだ訳ではなさそうだ。だが熱がヤバイ!

「くっ……」

 助けようと思ったが膝をついてしまう。魔力がもうない。

 その時だった。

 目の前を銀色の何かともう1つ何かが横切った。それはアベイユのシールドを砕き当たった。

「ぐはぁ……」

 その勢いのまま壁にぶつかる。その銀色の棒-蜻蛉切に移動したその人は。


「幼女が倒れる音がした」


 そう言って小鳥一華は蜻蛉切を引っこ抜いた。


「かっこいいのに決めゼリフが……」

 そう言ってナホが来る。

 どうやら俺は目標を達成したようだ。

「大丈夫ですか?」

「リリスがやばいんだ」

「そんなこと言って否流我さんも倒れそうじゃないですか」

 そう言うとナホが俺を担ぐ。

「な、ナホ?」

「とりあえず私達は戻りましょう。リリスちゃんを助けるために」

「一華は……」

「死んでもらっても構わないのですがどうせ私が戻るまで生きてるでしょう」

「ごめんな」

「そんな。私たちこそすみません」

 リリスを担ぐ。

「少し動きますね」

 ナホは全力で走り出した。パワードスーツの走りはとてつもなく速かった。


「幼女が倒れる音がした」

 俺はそう言って蜻蛉切りを引っこ抜く。

「ぐっ……」

 アベイユは左肩に蜻蛉切、右肩にナホの銃弾を喰らっているが意識はあるようだ。

 すぐに追い討ちをかけるが六角形のシールドにガードされた。

「油断したわ。もう破れないんじゃない?」

「そうみたいだな」

 俺が知る由もないがこの時シールドは3重になっていたらしい。

 一旦距離を置く。するとアベイユの周りを何かが飛び始めた。

「虫?」

「蜂よ。貴方の相棒さんはとても洞察力に長けていたわ。その彼が期待してた割に貴方はこれすらも見抜けなかった」

「いいや、違うね」

「何が違うのかしら?」

「蜂だって虫じゃないか」

「そうね。でも彼はこの《虫》の種類まで分かっていたわよ」

「何が言いたいんだ?」

「貴方はさっきの彼より戦いに関して素人なのねと思って」

 1日に2回敵から弱い子宣言をされた。そう思ってればいいさ。実際《戦い》は素人だ。でも《闘い》はプロと言ってもいいはずだ。

 その虫が俺に飛んでくる。

「俺に飛行武器で勝とうなんて思うなよ」

 少し強めの風を起こすとその虫は風に乗りアベイユに戻っていく。その虫の集まった-虫玉と名づけた-ところに向かって蜻蛉切を投げた。それはシールドに弾かれるがその時にワープしアベイユの懐に入った。

「な……!」

 下から顎を突き上げる。しかし途中シールドを出されたので威力が少ない。

「ぐっ……」

 追い討ちを掛けようとすると目の前にシールドを出されてしまった。それに顔面から突っ込む。

「いでっ!」

 地面に倒れる。顔を上げると虫が俺を囲っていた。風を作り四散させる。

「気づかないのね」

「なんの話だ?」

「気づかないのならいいのよ」

 秘孔でも突かれたのだろうか。

「使いたくはないのよ。でも貴方が私の予想より強かった。だから本気で行かせてもらうわ」

「一種のフラグだな」

「固有結界・六角形の家レグザゴーヌ・メゾン!」

 固有結界!?あの虫はそれの副産物とでもいうのか。固有結界は扱いが難しく相当に訓練しなければ魔法陣すら張れないだろう。だからもし魔法を2つ使えても固有結界だけで自分が精一杯なのだ。俺のギルドにも1人か2人いたぐらいだ。流石に覚悟を決めた。


 1つ思い出したことがある。学校には学力向上の結界がはられている。本来その結界内では居眠りをしないはずなのだが俺は居眠りをしている。それを思い出したのだ。

 さっきまで蜂がいたところがオレンジ色に光出した。気づかないというのは魔法陣を張っていたことについてだったようだ。端の円が中心に向かってくる。これに触れるとワープするのだ。近づいてくる-!


 しかしそこで魔法陣が消えた。


「あれ?」

 強ばった体から力が抜けた。

 アベイユを見ると腰を抜かして化物でも見るかのような目で俺を見ていた。

 とりあえずまたとないチャンスだった。ナホ特製(入手したのがナホだっただけ)の手錠を手に持ちアベイユに近寄る。

「貴方……《スキル》だったの……!?」

「は?」

 良く分からない質問をされて思わず立ち止まる。

「私《も》殺すの……?やめて!殺さないで!」

「いや、意味が分からないんだが……」

 それからアベイユは俺になんでもするから殺さないでと何度も連呼。「じゃあ大人しくして。黙って」これで万事解決した。

 この手錠は魔力を吸収する能力があるらしい。

 それより《スキル》って何だ?良く分からないことだ。少なくとも教科書には1度も出て来ていない単語。

 考え事をしていたその時だった。

「一華さん大丈夫ですか!?」

 ナホが帰ってきた。足速いな……。

「手錠をかけた」

「なら良かったです。結局否流我さんも倒れちゃったんですよ」

「魔力が0だったからな」


 ビーハイブから出るともうギルドの運び屋が来ていた。その運び屋がトラバイユやアベイユをギルドまで運んでくれるのだ。


 街に戻り宿に帰る。

「おかえり」

「ローズちゃん!大丈夫?触診しようか!?」

「…今はそういうテンションじゃないわ」

「大丈夫ですか?」

「まぁ少し熱っぽいけど、こういう風に普通に話せるわ」

「なら少しは安心できますね。また寝ててください。完璧ではないのですから」

「分かったわ。ありがとね」

「当然の事です」

 俺のはスルーされたが最後ナホが小声で「仲間ですから」と言ったのは聞き取れた。

 あんなセクハラ紛いの事をしたが3つ俺の中では心配事があった。1つはローズちゃんの体調。これはある程度回復していた。2つ目は。

「否流我はどこに?」

「隣に寝かせてますよ」

 隣の部屋を開けると否流我は起きていた。2つ目は否流我の体調だ。

「大丈夫か?」

「初めて魔力が切れたぜ……あれ辛いんだな」

「そうだな」

「……ああいう遠隔武器のやつは一華の方が得意だな。俺はリリスを守れなかった」

「そうか?」

「実際死にかけただろう」

「でも生きてるぜ。後遺症もなさそうだしな」

 そう言ってドアを開けると、ローズちゃんとナホがまだ話していた。寝ろと言われていただろうに。

「な?それにあそこでお前俺達が来るまで持ち堪えるつもりだったんじゃないのか?」

「分かってたのか?」

「ああ。否流我ならそうするはずだと思うさ。それを見事成功させたじゃないか」

「……そうだな」

「そうさ」

「そうだな!という訳でまた寝るわ。魔力少ないと眠くなるんだな」

「分かるだろ?お休み」

「ああ」

 部屋を出る。落ち込んでいたが身体は正常なようだ。自分の部屋に戻る。さて最後-。

「《スキル》か……」

 一体何なんだろうか。そういえば俺は雪希の魔法の時も変だったな。雪希の魔法は「自分の記憶を維持し世界の時間を戻す」だった。しかし俺は記憶を引き継げたのだ。これが《スキル》のヒントかもしれない。考えられるのは-。

「無効化魔法か」

 それが《スキル》の正体かもしれない。確かに魔法無効はとても強い。が、あそこまで怖がる魔法でもない。それに。

「『も、殺すの……?』か……」

 まるで俺が他にも殺したみたいな言い方だ。

 いや、アベイユが「あの時」の関係者なら話は別だ。あいつも雪希を殺した1人なら-。

「……寝よう」

 俺の中て何かが爆発しそうになった。だから寝ることにした。時間も朝の3時だ。今日は1日中寝ていよう。

 とてもどうでもいい話だがイルカだったかシャチだったかは寝るとき片脳ずつ交互に眠るらしい。

 ちょっとやってみるか。










どうも。気づけば13話目です。

ここに来ていままでの誤字脱字が急に気になってきました。というのもとあるアンケートで自分の名前を書き間違えるという事件を起こしまして。

皆さんも気をつけてください。

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