使用魔法の差
魔法にはいくつか種類がある。
代表的なものは造形や結界、召喚や再生、纏着や放出。さらに特殊魔法がある。飼育魔法や時間を戻すものは特殊に入る。
ナホとリリスは纏着、一華は放出、否流我は造形に値する。
「ミッションスタート!」
俺の声と共にナホと俺が突っ込む。その勢いで門番っぽい奴を殴る。
「!?」「敵襲だ!」
鐘の音が鳴る。
「グアァァ!」「ガルルル……」
「こいつらか」
「どうしますか?奥にも2匹いますよ!」
「俺奥やるから!」
「了解です!」
蜻蛉切を右のモンスター(これからAと呼ぼうじゃないか)に突き刺し、左のモンスター(勿論Bと呼ぶ)をぶん殴る。
その一瞬に否流我とローズちゃんが走っていった。
「どけぇ!」
否流我が乱射しつつ爆弾を投げて突破していく。姿は見えないがリリスがその後ろをついて行っているのだろう。
「はあぁっ!」
ナホが入口付近でモンスターC、D(そう呼ぼうじゃないか)と戦っている。大振りな大剣を細かい軌跡で使いこなしている。
相手はモンスターだけではない。中から出てくる奴らもだ。そしてそれは俺が相手をしなければならない。
「やれ!」
「やられるか!」
自分を空気砲の弾にして群衆に向かって撃ち出す。そのタックルに当たり倒れる奴もいた。さらにモンスターA、Bは俺を追いかけてくる。群衆の中心にいる俺を。
「グオォアア!」
『ぐあぁ!』
飼い犬に手を噛まれる気分だろう。俺は蜻蛉切にワープしAの後ろに回り込む。そのまま後頭部を(そうとしか言えないんだ。モンスターにも頭があるんだ。)空気砲の要領で加速させた掌底-空気拳1とでも名付けよう-を捻じ込む。蜻蛉切を引っこ抜いて顎の横に出る。その顎にも空気拳1を喰らわせる。勿論脳震盪となり倒れる。それに気圧された奴等の動きが止まる。しかしBは止まらない。Bは犬型のモンスターだ。
「ガルルルル!」
噛み付いてきた。それを横にステップで回避。Bと対面する。しかし俺の目はBよりその奥にいるナホに釘付けだった。
彼女のレールガンはマイクロだが、モンスターDの頭を吹き飛ばしていたのだ。それは群衆も同じだったようで、
「退けー!」
退却していった。
「ヴァグ!」
その鳴き声で我に返る。と思いきやBは炎を吐いてきた。
「無駄!」
風で炎をBの口に戻す。
「ギャギャウ!?」
効きはしないだろうがびっくりしたようだ。その隙を突き、顔を壁に叩きつけ-。
られなかった。Bが頭突きをしてきたからだ。
「おおう……」
喰らってしまう。
絶対にイケると思った。何故だ?その疑問は1人の人間の登場で解決した。
「中々荒らしてくれたじゃないか」
「誰だ……?」
立ち上がりながら聞く。
「私がトラバイユだ。名前は知ってるんじゃないか?情報くらいは集めたのだろう」
「一華さん」
ナホが寄ってくる。CとDは倒したようだ。あれ、強くね?俺足手まといか?
「確か、飼育魔法とかいったか。生き物の限界値を超えさせる魔法だな。お前はA級モンスターまでを扱える訳だ」
「正しいな」
「じゃあ俺達の勝ちだ」
「ほう。大層な自信だな」
「俺達はこの前にもっとすげえ操り方をする奴と戦ったからな」
蜻蛉切を構える。こいつを倒せば相手戦力に大ダメージだ。
「威勢は良し、と」
そういうとトラバイユはモンスターを3体呼び寄せた。合計4体。情報より1体多い。トラバイユの戦闘力は分からないが相当と見て間違いはないだろう。
「どうするんですか」
「モンスター頼んでいい?俺がトラバイユと1体やるから残りを」
「えぇ……嫌です」
「何故に!?」
「ほら来ますよ」
「何!?」
「ヴァルルル!」
「はぁっ!」
ナホがBを叩き割った。叩き割ったのだ。その大剣で。
「「なっ!」」
トラバイユとハモった。そのくらい驚く力だった。
「べ、別に驚いてないんだからっ」
トラバイユがオネェみたいな話し方になった。
「覚悟してください」
その銃口-剣口-をトラバイユに向けてナホは言い放った。
「男の方が弱いのか」
イラっとくる。がしかしこの現状はそう見える。また別のモンスターEが来るがそれを撃ち上半身を吹き飛ばす。
「「……」」
モンスターFとGの動きが止まった。恐れているようだ。
「成程」
強がりではなさそうだ。トラバイユは何かを見つけたようだった。
「行けっ!」
FとGがナホ目掛けて突進する。しかしその2体は深くは踏み込まない。まるでエリートの戦い方だ。
「ふっ!んっ!」
ナホの剣は当たらない。
「足止めか……!」
「そういうことだ。お前は私が倒す。その女はその2人が嬲ってくれるだろう」
「舐めるなよ?副業で倒せる俺じゃないぜ」
「どちらも本職だかな!」
トラバイユは肉弾戦の間合いに入ってくる。蜻蛉切をナホの方に投げてこちらも応戦する。
トラバイユは蹴り主体の戦いをするようだ。とてもキレのいい蹴りを連続で放ってくる。無駄な動きが少なく手数が多い。見切るまで少しかかるだろう。肉弾戦は短時間で終わらせないと俺が持たない。
蹴りの1番の長所は威力だろう。少し精度に欠けるが連続で出せば気にならない。殴るよりはるかに強い。でも俺は使わない。なぜなら-。
トラバイユの足元に小さな丸い大気の塊を作る。これだけで結構疲れるのだ。それをトラバイユが踏む。
「なっ……」
転んだ。蹴りの弱点はバランスが悪い癖に自分の軸足付近が見られないことだ。そこに何かがあっても見られない。飛び蹴りをすると自分の身体を相手に差し出す事と同じ状態になるので相当上手くないと事故になる。
「専門職に専念するべきだったな」
鳩尾に拳を入れる。
「ぐ……はっ…!」
そしてトラバイユは動かなくなった。殺した訳じゃない。
ナホを見るとまだ苦戦していた。
蜻蛉切にワープする。目を開くとGの口が目の前に。
「うわっ!」
咄嗟に蜻蛉切を口めがけて投げる。大気の力を利用したその槍はGの体を貫通し後ろの壁に突き刺さる。
「一華さん!?」
「助けに来てみた。 あまり踏み込んでこない相手は無闇に追っても駄目だ。自分の間合いに入ってくるのを待つんだ」
「はい!」
とはいえナホは間合いがレールガンのお陰で格段に広い。狙えそうなら撃ってもいいと思うのだがナホが近接攻撃にこだわってるようなので言わないでおく。
「ふん!」
ナホが剣を振るった。
「ギャオウ!?」
それはFの眉間を切った。それに怯んだFの隙をつくナホは見逃さなかった。
「当たって!」
レールガンを撃つ。それはその傷口から背中に抜けていった。
「おお!」
Fは倒れる。正面門付近は制圧したようだ。
「一華さん。この人はどうするんですか?」
「トラバイユは……縄とか縛れる物持ってる?」
「ええ」
そう言って手錠を取り出す。
「嵌めといてください」
「どうして敬語なんですか?」
ポケットから手錠が出てくる女の子が怖いからです!
「色々怖かったんだ。さぁ否流我とローズちゃんに合流しようぜ」
「はい!」
「どけぇ!」
銃を乱射しながら一華とナホの間を抜ける。後ろには透明なリリスが一緒に走っていた。
ナホの強さならモンスターは大丈夫だろう。一華は少し心配だがA級モンスターごときに負ける奴ではない。
大広間にでる。4人。一華の方に9人行ったからこいつらを倒して残り12人。
「お前らには用はねぇ!」
銃を構え全員の両肩、両膝をそれぞれ撃つ。
しかしその中の1人が火の造形魔法使いだった。俺は動きは止めたが魔法を止める術を持たない。
しかし炎で造られた槍は俺に飛んでくる。
「これなら!」
爆弾を自分の前にばら撒く。それが相手の魔法で爆発する。ばら撒いた爆弾は片方にしか爆風が起こらないものでその爆風で火を消した。その間にリリスが4人の意識を奪った。
「行くぞ」
「ええ」
奥へと進む。次の部屋には8人いた。
相手の姿を確認すると俺はすぐにグレネードの形をした鉄の塊を投げる。
「伏せろ!」
相手が目を瞑った瞬間に1番左の奴が倒れた。リリスが気絶させているのだ。さらに1人また1人と倒していく。流石に異変に気づいたのか辺りを見回し始めた。しかし俺から注意を逸らすのは問題外だ。5人の両肩と両膝を狙い撃ち戦闘不能にした。
「行こうリリス」
「ええヒルガ」
扉を開ける。その瞬間に岩が飛んできた。
「マジか!」
1度退却し岩が通り過ぎてくのを見つめた。壁越しに鏡を使って敵の位置を把握する。反対側でリリスが同じ事をしていた。3人。かなりゴツイのと盾を持ったのが2人。
弾を麻酔弾に換える。鏡を見ながらブラインドショットを試みた。
それは成功しゴツイのが痙攣して倒れた。
「行くぞ」
リリスに合図して飛び出す。いかにも最後の門番みたいな奴。弾を戻しその盾を撃つ。しかし盾には当たらずその前で止まった。
「面倒な魔法だな」
グレネードを投げる。グレネードは止まらず足元に落ちた。しかし爆風と破片は止まった。
「ランクの低い停止魔法か?」
相手は答えない。
「だったら連射ならどうだ!」
何十発もの銃弾を撃つが全て止められた。
右の盾男が倒れた。止まっていた銃弾が音を立てて落ちた。
「!?」
左がだいぶ慌てる。その間にも俺は盾を狙い連射する。全ての弾を止めることに精一杯なようだがリリスはお前の後ろにいるんだぞ。
リリスが左のやつのアキレス腱を切った。
「ぐあぁ!」
倒れる。銃弾が落ちる。
「ナイス」
「ヒルガのお陰よ」
「最後か」
「よく覚えてるわね……」
「胸のサイズも覚えたぞ」
「次言ったら喉掻っ切るわよ」
「肝に命じます」
ドアを開けた。
そこには女性が1人いた。
「貴方が全員を倒してきたのですか?」
「どうでしょうか。もしかしたら仲間がいるかもしれませんよ」
「まぁ、人数なんていつでも分かりますからね。皆殺しですよ」
「貴女がクイン・アベイユですか?」
「その通りです」
「ならば捕まえさせてもらいます」
銃を向ける。
「捕まえてごらんなさい」
アベイユのケープから大量の飛行物体-いや蜂が出て来た。
「操るのか!?」
アベイユに撃つ。しかし六角形のシールドに阻まれた。ならばと蜂に向かって撃つ。すると当たった蜂は霧散した。
「本体はないのか」
「ええ。蜂の形をした《何か》です。行きなさい」
その蜂の群れは俺の方に-いや二手に分かれた。
(まさか!)
「もう1人いたのですか。この子達に蜃気楼なんて効きませんよ」
蜂の群れはリリスと俺を囲んでいる。
左腕に痛みが走った。刺されたのだ。そしてもう1つ症状が出ていた。
「魔力が減った……?」
「戦いに慣れていますね。相手の魔法を瞬時に判断する能力」
どうやら正解のようだ。蜂の形をした魔力吸収魔法の使い手。短期で決めなければ俺が持たない。
「余裕そうですね!」
正確に肩口を狙った。しかしやはり六角形のシールドに阻まれた。
「女王蜂か……」
やはり銃は効かない。
リリスは熱気のみを纏い蜂を近づけさせないようにしている。相性がいい魔法だ。
「防戦一方でいいのですか?」
良い訳が無い。爆破しようにも俺が、リリスが巻き込まれる。
試しにグレネードをアベイユに投げる。しかしなんと蜂をグレネードに纏わせ爆発しても害が無いようにしてきた。グレネードは爆発前に圧迫すると爆発しても被害がほぼ零になるのだ。
万事休すだ。この間にも俺は魔力を吸われている。リリスもなくなっていくだろう。
俺はどうしたらいい?
戦いを書くに当たって体術の本を読むのですがその度にアニメとは創作なのだと思い知らされます。
一本背負いを返せると思ったことないですか?投げられてから地面にうまく着地して相手を投げる、みたいな。どうにかしたら出来そうなものですけどね(笑)