鍋
薄暗い中を私は歩いていた。
遠くからファンのようなものが回転する音が聞こえる。
足元の地面は鉄板らしく、私の足が地に着くたびにカンカンという音が響いた。
私が歩いているその両脇には円筒状のタンクのようなものが並んでいる。
実物は全然違うのだが、私はここをパソコンの中だと認識した。
どこへ向かっているのか、何の目的があるのか、自分でもわからないまま、ただ歩いていく。
すると行く手に、黒と肌色をした何かが見えてきた。
そのまま歩いて近づくと、それは少女だった。
大きな黒い鍋を頭に被った全裸の少女が座り込んでいるのである。
私は立ち止まって彼女を見下ろした。
鍋と同じ真っ黒の長い髪が平らな胸にかかり、細長い胴体から、やはり細くしなやかな手足が伸びていた。
私に見られている彼女もまた私を見上げている。欲情を覚えた私は、この少女を欲しく思った。
「俺と一緒に来い」
「あたしは嫌だ。もう買われているから。あたしみたいなのが欲しければ、この先の自動販売機で買えるから行けばいい」
私は自動販売機を探してずっと歩いたが、どこまで行ってもそれらしいものは見つからない。
鍋少女に担がれたのだなと私は思った。
『パソコン』『鍋』『自動販売機』を使って短編を書けという課題を受けて、十分くらいで書いて某掲示板に投稿したものを、ちょっと直したものです。