評価
そのアプリは、人生を採点する。
行動、発言、選択――すべてを記録し、「あなたの価値」を数値で示すというものだった。
最初は疑われていた。
だが、使った者たちは口を揃えて言った。
「当たっている」と。
私は試しに使ってみた。
表示されたのは「52点」
「低いな…」満足できない数字だった。
それから私は、点数を意識して生きるようになった。
人に親切にする。
悪口を言わず、無駄な発言を控える。
正しい選択を選び続ける。
点数は上がっていった。
61点。68点。74点。
社会も変わっていった。
争いは減り、無駄は消え、誰もが「正しい行動」を選ぶようになった。
やがて私は、89点に達した。
だが、そこから先は伸びなかった。
ある日、通知が届いた。
「最終評価を開始します」
画面が暗転し、やがて結果が表示された。
最終スコア「89点」。
その下に、もう一つの数値があった。
「人間らしさ:11点」
意味が分からなかった。
そのとき、周囲の異変に気づいた。
誰も笑っていない。
誰も怒っていない。
誰も迷っていない。
ただ、正しい行動だけを繰り返している。
再び通知が表示された。
「基準を満たしました。最適化を完了します」
次の瞬間、人々の動きが止まった。
そして、静かに倒れていった。
画面には、こう表示されていた。
「不要なゆらぎを削除しました」
私は立ち尽くしたまま、画面を見つめていた。
私のスコアは、90点になっていた。
――人間らしさは、もう表示されなかった。




