ジェットコースター
短編です
懸命に走る。息が切れる。急げ、急げ、急げ!!
頭の中は一応冷静で、時計を見る余裕もあるにはある。行ける、たぶん大丈夫!
なりふり構わず足を動かして、駅の改札にカードをタッチする。ピピッと音がして改札が開く。スムーズに入ることが出来た。いい調子だ。このままいけば何とかなるはず!!
階段を転げ落ちそうなスピードで降りると、電車が見えた。
「やった!!」
と気が緩んだ瞬間、私の脚が段差にひっかかった。
「うそでしょ!?」
と言ったかどうかは定かではないけど、頭の中で、もつれた足を恨んだ。
気が付くと私は駅のホームに手をついていた。掌に小さく血がにじむ。膝も打ったみたいでだんだん痛んでくる。
「っ・・・つぅ・・・」
無情にも電車のドアは閉まり、乗ろうと思っていた電車が走り出す。
「あ・・・」
ドアの向こう側の心配そうな顔をした彼と目が合った気がする。
名前も知らない、いつも同じ時間に電車に乗り合わせるだけの関係性なのだけど、私は少しだけ、彼に惹かれていた。いや、一目ぼれをしていた。
だからいつもよりも3本も早い電車にわざわざ乗っている。それに間に合うように目覚ましだってちゃんとかけている。
今日はちょっと寝過ごしてしまっただけ、だったんだけど。絶対変な顔してた。その顔を見られた。そう思うだけで、朝から気分が沈む。
「・・・はぁ・・・」
「大丈夫ですか?」
駅員さんが声をかけてくれた。恥ずかしい。いつ以来だろう、こんなに盛大に転んだのは。
「あ、はは、大丈夫です!」
慌てて立ち上がって、カバンやスマホをかき集めて、その場を離れた。
もう最悪だ。朝から盛大にすっころんで、その姿を彼に見られて、掌も膝も痛い。レギンスの色が少し濃くなっている。血が出てるんだ。はぁ~、最悪だ。
落ち込んでいると次の電車が来た。そのまま乗り込んで、手すりにつかまった。
私の状況など関係なく電車は発車する。次の駅まで2分ほど。目的駅までは約10分。この十数分のために苦手だけど早起きして、メイクまで頑張っているのに。全ての頑張りが無に帰した気がしていた。
「あ、・・・」
次の駅でドアが開くと、彼が立っていた。
「・・・・え」
「あの、大丈夫でしたか?絆創膏いりますか?」
何故か彼は絆創膏を持って私の目の前にいた。ドアが閉まりますと言うアナウンスに慌てて彼が電車に乗り込んだ。
「さっき転んでましたよね?俺、絆創膏とかいっぱい持ってるので」
「あ、ありがとうございます・・・」
絆創膏を受け取って、貼り付けようとしたら、電車の揺れでよろけて彼に触れてしまった。
「あぁっごめんなさい!」
「大丈夫ですよ」
微笑む彼の目が優しい。ドキドキと心臓が高鳴っている。
あまり見つめてはいけないと思って、貰った絆創膏を見ると、女児向けのキャラクターものだった。
「え?」
「あ、すみませんコレ娘が好きな奴で!」
一瞬にして私の目の前は真っ暗に変わった。
——娘さん、がねぇ・・・——
あー・・・ねwww




