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私は本当に望まれているのですか?  作者: まるねこ


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26 オルガサラフィス公爵令息視点

 俺はジネット・ベルジエ侯爵令嬢という存在を意識し、日々鍛錬をしているうちにセレスティナ王女の目に留まり、彼女の護衛としていつもそばにいることになった。


 セレスティナ王女はまだ子供だが、恐ろしい性格だ。


 彼女は我儘で自分勝手で苦言を呈する者には容赦なく排除していく。


 淑女としても最低限のマナーしか出来ていない。王族と見た目の美しさで何とかなっているが、嫁いだ後は相当苦労するに違いない。


「オルガ、ベルジエ侯爵家から婚約の打診がきた。我が家としてはこのままセレスティナ王女の側近として過ごすのも、好きな者を娶るのも構わない。


 だがベルジエ領にお前を生かせれば長生きできないかもしれない。縁談を断ってもいい。私もヨーナもお前が幸せになるのを望んでいる」


 王宮舞踏会の翌日、父に呼び出されたと思ったら婚約の話だった。


 ベルジエ侯爵家と聞いてドキリとした。


 過去に何度か婚約は決まったがどの家も王女の横やりで破談になり、俺は生涯独身だろうと周囲から囁かれていたのだ。


 ジネット嬢と婚約か。

 俺は彼女にふさわしい男になれただろうか。浮足立つ気持ちを抑えながら答える。


「父上、心配していただきありがとうございます。けれど、俺はベルジエ家の婿入りで構いません。ジネット嬢は若いながらも美しく優秀だと聞いております。いつまでも公爵家子息では義母も義兄達も迷惑ですからお受けして下さい」


「お前は大事な私の息子だ。そんなお前を死地に行かせたくない」

「父上、俺は問題ありません」


「まあ、まだ打診だ。それに急遽明日王宮の中庭で顔合わせをすることになった。会ってから決めても遅くはないだろう」

「わかりました」


 王宮で顔合わせが行われるのか。


 陛下は俺をベルジエ侯爵家に婿入りさせたいのだろう。そろそろセレスティナ王女の婚約者を決める話も出ているためだ。




 俺は少し浮かれながら顔合わせに向かった。


「待たせてすまない。ジネット・ベルジエ侯爵令嬢、はじめまして。私の名はオルガ・サラフィスだ」


 久々に見た彼女は幼さが消え、とても美しい女性になっていた。


 一見、ふわりとした赤毛で優しい雰囲気を持った彼女はとてもベルジエ侯爵家の後継者とは思えない。


 だが、気づく者は気づいてしまう。彼女の佇まいや指先まで神経を研ぎ澄まし、突然の襲撃にも対処できるようにしている。


 彼女は根っからの武人なのだろう。


 ……彼女の夫になりたい。


 そんな考えが過る。いや、俺には過ぎた話だと思っている、が、諦めたくない。


 彼女のそばにいたい。少しでも彼女に近づきたい。もっと彼女のことを知りたい。


 なんとか次に繋げることができたと思った矢先、セレスティナ王女が邪魔をしにきた。


 王女はこうして俺以外にも気に入った護衛騎士の婚約者を潰しにかかる。中には暴漢に襲われ、その後、自殺してしまった令嬢もいる。


 ジネット嬢が危ない。


 俺は彼女に危害が加えられないように王女を連れて彼女との大事なお茶会を後にすることになった。


 ジネット嬢の方もセレスティナ王女の行動を知っているようで手紙に俺を気遣うような内容が書かれていた。


 ベルジエ侯爵家からは領地に来てみないかという打診を受けているのだが、王女のせいで実現できずにいる。




「オルガ、見て? このドレス素敵でしょう?」

「とても素敵ですね。セレスティナ様によくお似合いです」


 今度セレスティナ王女はお茶会を開くらしい。


 そのためにこうして毎回ドレスを試着して聞かれるのも面倒だ。


 仕事でなければすぐにでも帰っていただろう。


 王宮のサロンではお抱えのデザイナーがセレスティナ王女のためだけに作ったドレスを持ってきては試着を繰り返している。


 こんな寒い時期に中庭でするなんて気が知れないな。王宮魔法使いを呼び、中庭を温めるのだとか。魔法使いの無駄遣い。中庭には花もない王女だけを愛でろってことだろうか。相変わらず面倒だ。


 そういえば確かこのお茶会にジネット嬢が呼ばれていた。セレスティナ王女に何かされないといいが……。




 やはり彼女はジネット嬢を排除しようと事件を起こした。


 あまりの杜撰すぎる手口に呆れてしまうが、ベルジエ侯爵家を強引に排除するだけの権力がある。


 ……冤罪によって彼女が殺されてしまう。


 なんとかしなければ。


 俺は緊急招集が掛かり、セレスティナ王女の護衛を第二騎士団のやつと交代し部屋に戻った。




「陛下が視察から急遽戻ってくることになった。もちろんそれはお茶会の件で、だ。セレスティナ王女は現在王族医務室で静養されている」

「ベルジエ侯爵令嬢はどうなるんですか?」


「オルガ副官、君の婚約者だったな。彼女の取り調べにはセルディアス・エイルを就けている。あっちは大丈夫だろう。


 王女の方なんだが、あの場にいた騎士たちからの報告では毒を盛られたはずなのに対処が早すぎる。


 お茶を淹れた侍女の自供もこれからだが、王女が自ら『毒をこのカップに淹れなさい』と言われたと捕まった時に話していた。


 総合的に見ても自作自演の可能性が高い。が、もしもの可能性を考えて動かねばならん。後は王妃陛下の動き次第だ」


 フェール団長が渋い表情で騎士たちにこれからの動きを指示していく。王族を殺そうとしたということは犯人が捕まれば死刑は確実だ。


 セレスティナ王女の我儘を許してきた両陛下は無実のジネット嬢を死刑にするのだろうか?


 だが、うやむやにするには目撃者が多すぎた。


 次期辺境伯のジネット嬢を死刑にしたら魔獣騎士団の魔獣は辺境伯領に戻るだろう。


 あの場にいた一部の取り巻き以外は王女の行動を冷めた目でみていた。


 無実の令嬢を罰しようものなら貴族の王家に対する信頼は地に落ちる。


 王族は、果たしてどう動くのだろうか。


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