25 弟の心配
翌日からはマリリンと散歩したり、魔獣襲撃に備えた訓練をしたり、父の代理で執務をしたり、いつものような生活が再び始まろうとしていた。
父と母は今、忙しく動き回っている。セレスティナ王女のことで抗議をする名目で王都に出かけているのだ。
「ジネット姉さま、父様たちはいつ頃帰ってくるのですか?」
弟のファディが珍しく執務室へ来て心配そうに聞いてきた。
「そうね、セレスティナ王女殿下の今後が決まり次第だと思うわ。何か嫌な予感でもするの?」
ファディは母に似て勘が鋭いところがあるので私は少し心配になった。
「心配なんだ。誰かが怪我をするんじゃないかって。ただ心配なだけなんだけどね」
「そっか。分かった。私からお父様に知らせておくわ。大丈夫よ、きっと」
私がそう言うとファディはパッと明るい笑顔に戻っている。
「じゃあ、僕、また勉強してくる! 来年からは僕も王都に住むことになるからそれまでにいっぱい勉強していっぱい鍛錬もしないとね」
「無理しないのよ」
ファディはそう言って元気よく執務室を出て行った。
私が声を掛けても聞いていたのかいないのか。
ファディが怪我をすると言っていたわ。もしかして、襲撃があるのかもしれない。
……不安になる。
考えすぎかもしれない。
―チリンチリン
ちょうどそこに手紙を知らせる音が鳴り、一枚の手紙がふわりと私のところへ届いた。
彼からだわ! 嬉しい。
手紙に書かれた名前を見て心が小躍りしそうになる。
きっと私は、恋しているのだと思う。
手紙を読み、ギュッと手紙を握りしめる。
「お嬢様、お返事を書かれますか?」
「ケイティ、引き出しにある父のこの便箋でいいわ。父と邸にも連絡を取らないと」
私はすぐに手紙を書いて父たちに直接手紙を送った。




