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私は本当に望まれているのですか?  作者: まるねこ


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23 尋問

 犯人に仕立て上げられた上、王宮騎士団に囲まれて連れてこられたのはどうやら貴賓牢ではなく、客室に通されたようだ。


「お話を聞く準備をするのでしばらくお待ちください」


 私はソファに腰を下ろして騎士が来るのを待った。


 ケイティも後ろから付いてきていて外へ出ることは出来ないようだが、私の傍には付いていてもいいらしい。


 しばらく待てと言われて一時間以上は経っただろうか。待ちくたびれた頃に一人の騎士が入ってきた。


「お待たせしました」

「えっと、貴方のお名前をお聞きしても?」

「私、第一騎士団セルディアス・エイルと申します」


 私はソファに座り直し、騎士の一人に名を聞いた。第一騎士団か。


「さて、ベルジエ侯爵令嬢。貴方はセレスティナ王女に毒を盛りましたか?」

「なぜ毒だと言い切れるのですか?」

「それは魔法使いからの話とセレスティナ王女殿下の飲み残したお茶から毒物が出てきましたので」


「そうですか。なぜ私だと?」

「セレスティナ王女殿下はベルジエ侯爵令嬢が犯人だと言った。とりあえず、ですよ。まあ、どうせ王女の……おっとご内密に」


「ふふっ。分かっていただけて嬉しいです。陛下は今日のことをご存じですか?」

「残念ながら陛下は視察に出ており、お戻りになるまであと四日はかかるかと思います」


 陛下が居ない隙を狙ったのね。これは不味いわね。


「レイニード王太子殿下を呼べますか?」

「執務が多忙で難しいとは思いますが、王宮であったことですからすぐに報告があがるでしょう」

「そうですか」


「セレスティナ王女殿下はなぜベルジエ侯爵令嬢を犯人に仕立て上げたと思いますか?」

「王女の目的は私を陥れ、オルガ様との婚約を無くすこと、でしょうね」

「なるほど。……不味いですね」


 エイル様は一言そう呟きながら眉を顰め、今後の出方を考えているようだ。


「ベルジエ侯爵令嬢、貴方は領地でも魔獣狩りがお得意だと耳にしておりますが、剣は得意ですか?」

「私が使う武器は大斧ですが、剣でも問題ありません」


「分かりました。そこの付き人、その立ち姿、貴方も剣が使えるのでしょう?」

「はい」

「ここ王宮にいる限り暗殺者に狙われると言っても過言ではない。ベルジエ侯爵令嬢を守り切るのは可能か?」


「もちろんこの命に代えても守り切ります!」


 ケイティの言葉を聞いてエイル様は頷く。


 それにしても暗殺者とは穏やかではない。


 ベルジエ家が国の情報を担っているのを知っているのは陛下のみ。知らずに王妃陛下が動く可能性があるのか。食事からの毒混入か、暗殺者か。


 まさかそこまでする?


 娘の頼みでもそれは、いや、どうだろう。


 自問自答しながら考えを巡らせていく。


「私たちも可能な限りベルジエ侯爵令嬢をお守りしますが、残念ながら内部にも王妃派やオルガ副官を良くは思っていないやつもいるんで、これに乗じて、という可能性も否定できません」

「私はいつになったら家に帰れるのでしょうか?」


「一応、上からの命令でベルジエ侯爵令嬢を返すなと指示が出ているんですよね」


 エイル様は私とオルガ様の婚約を知らなかったようだ。


 とりあえず上の命令を聞いてここに来たようだが、自分たちの動きによっては大事になるかもしれないのだと気づいて頭を抱えているようだ。


 国の情報を担っていると知らずとも、私は次期辺境伯だ。


 冤罪にでもなれば王宮騎士団にいる全ての魔獣は引き上げるだろう。


 それくらいで済むならまだしも、現在王都に魔獣が大挙して押し寄せてこないのは辺境伯領で食い止めている。我々が隣国にでも移動しようものなら王都は魔獣で溢れかえるだろう。


 それを理解しているからこそエイル様は頭を抱えているのだ。


 残念なことにそれぞれの事情もあり、一つの命令でも複雑な考えが裏にはある。


 セレスティナ王女以外にも自分中心で生活している者はいて、王宮は常に足の引っ張り合いだ。


 オルガ副官が失脚すればいい、困らせてやればいい、そのために婚約者となった私を陥れる。そんな人たちも中にはいる。


 サラフィス公爵夫人なんかもそのうちの一人だ。


 ……さて、私はどう動くべきか。


「エイル様、最悪の場合、私たちの行動により内乱となり、国家存亡の危機となるか、王女の廃嫡だけで済むか。どう思いますか?」

「それはもちろん王女殿下の廃嫡で済むのならそれが一番でしょう」


「できるのであれば今すぐにでも無罪放免で帰してもらいたいのですが」

「それは……。私に上からの命令を無視しろということですか」

「ええ、そうなりますね」


「ですが、このままの状態で帰すわけには……」


 エイル様は困ったと言わんばかりの表情をしている。貴族であれば表情は隠すように教えられるのだが、この方は表情豊かで面白い。


 きっとそこが彼の良さなのでしょうね。

 私はフッと笑顔になる。


「であれば、今、ここで手紙を書いてもよろしいですか?」

「もちろんです」


 私は封筒を準備してもらい父と陛下へ手紙を書き始めた。

 もちろんエイル様のいる前で。


 部屋には護衛騎士も書記官もいるため不正や逃げることは一介の令嬢では不可能となっている。一応ね。


 書き終えた後、本来ならしないけれど、魔法で直接本人の元へ送る。


 魔法で手紙を送るのは距離によって魔力の消費が著しい。


 領地ではいつ魔獣がくるかわからないため、なるべく魔力は温存しておくように極力手紙などはドラゴン便にお願いしているのだ。


「さて、父か陛下のどちらが先にここへ来るのでしょうか。そしてそれまでの間、私たちは生き残らねばなりませんね」

「……嫌な予感しかしないのですが。その言い方では私は巻き込まれるということですね?」


「さあ? すぐに退室した方がよいのではないですか?」

「……では一旦、私たちも報告を行ってきます。何か必要なものはありますか?」


「いえ、特にありません」

「部屋の入り口には騎士がいますので何かあったらすぐに呼んでください」

「わかりました」


 そうしてエイル様たちは部屋を出て行った。


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