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私は本当に望まれているのですか?  作者: まるねこ


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17 マリリンとお散歩

「マリリン、一緒に湖に行かない?」


 グゥゥォォ。


 どうやらマリリンも退屈していたらしく喜んでいる。


 厩舎の係に声を掛け、厩舎を出た。


 マリリンは私を背に乗せて、ふわりと空高く飛び上がった。


 この感覚が好きなのよね。わずらわしいことも忘れて空の中を泳いでいく。


 領地と面している森の奥に私とマリリンがよく行く湖がある。ここは森の中にぽっかりと開いた穴のように湖がある。


 一部の研究者からはマリリンのような大型のドラゴンの咆哮で大穴が空き、そこから川が流れ込み、湖になったんじゃないかと言われている。


「この間の彼は私の婚約を解消したの。仕方がないよね。でも、ちょっと嬉しかったの。だってあんなに真剣にみんなの前で私が好きだって言ってくれたのは彼だけだったもの」


 私の独り言をマリリンは黙って聞いている。


「今度の人はどうなのかな。分かってるの。領地を守ってくれる人を婿に取るしかないのは。でも、少し、ほんの少しでも私のことを好きでいてくれる人だといいな」


 私は湖のほとりに座り、足を浸した。


 冷たくて気持ちいい。今の時期は繁殖期ではないため魔獣も比較的落ち着いている。それにマリリンが傍にいてくれるので大体は怖がって出てこない。


 しばらく水辺で遊んだ後、マリリンが警戒していることに気付いた。


 私はそっと置いていた斧の柄に手を掛け、戦闘準備に入る。


 ガサガサ、パキリッ。


 草むらから何かがこっちへ出てくる。マリリンの気配を恐れないのは自ら餌になりたい魔獣だけだろう。


 グルルルル。


 草むらから威嚇をしながら出てきたのは、ガルムと呼ばれる大型の犬だった。


 熊に近いかもしれない。相当お腹が空いているのだろうか、自分よりも何倍も大きなマリリンに標的を定め、走り出してきた。



 マリリンもそれを理解しているため、口から火の玉を吐きガルムを攻撃する。


 ガルムは素早く右に避けた。ガルムは飛びかかろうとしたけれど、マリリンは飛び上がりガルムの攻撃を避ける。


 マリリンが飛び上がったことで私という存在に気付いたガルムはこちらに攻撃をしようと唸り声と共に飛びかかってくる。


 チッ。


 斧でぶった切るには距離が近い。そう判断した私はガルムに向かって氷魔法を唱えた。


 ガルムの口先と前足が氷魔法によって攻撃の手を止めることができた。


 斧でそのまま叩き切ろうと考えた矢先、マリリンが上空から急降下し、ガルムを両足で掴み、また急浮上した後、地面に向かって叩きつけた。


 そして火の玉を吐いてガルムの動きを止めた。


 ピクピクと動いている様子を見ていると、どうやら失神しているみたい。マリリンはそんなことはお構いなく器用に片足でガルムを押さえ、バリバリと食べ始めている。


 マリリンも美味しく食事も摂れたし、多少運動もできて良かった。


 マリリンの食事を終えた後、優雅に空の散歩をしてから邸に戻ると、ケイティが王都へ行くための準備で慌ただしく動いていた。


「お嬢様! おかえりなさいませ」

「ケイティ、ただいま。変わったことはない?」

「特にありません。奥様から来週の話を聞きました。嫌な予感がするのでしっかりと下準備をしておかなければと思い忙しく動いていました」

「嫌な予感……。たしかにね」


 ケイティの言葉に溜息が出そうになった。



 一週間後。


 早朝からケイティと共にドラゴンに乗り王都に向かった。


 午後からオルガ様に会うには十分間に合う時間だ。


 タウンハウスでは準備していた侍女たちが待ち構えていたようで一斉にお茶会の準備をはじめた。


 王都で流行のドレスに着替え、大人の雰囲気を出すような化粧をされていく。


「さすがお嬢様。とても美しい。セレスティナ様など目ではありません!」


「ふふっ。いつもきれいに仕上げてくれてありがとう」


 私は侍女たちにお礼を言った後、王宮へと向かう。


 普通ならサラフィス公爵家や我が家の一室でお茶会をするのに王宮の中庭を借りてお茶会をするところが母らしい。


 絶対にセレスティナ様に分かるようにしているということでしょう?


 レオ様のことで母は相当怒っているようだ。


 名目上、オルガ副官は忙しくて時間が取れないため私が急遽王宮に出向くことになったということのようだ。


 はあ、気が重いわ。


 確かセレスティナ王女は今年で十六歳だったはず。私の三つ下よね。オルガ・サラフィス副官は二十三歳だったはず。サラフィス様からすればセレスティナ王女はまだ子供なのだと思う。


「お嬢様、準備が整いました」

「ケイティ、では行きましょうか」

「はい。お姫様が楽しみですね」

「どうかしらね」


 私はケイティの言葉にクスッと笑い、馬車に乗り込み王宮へと向かった。


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