第十一夜
ぼくは いつも こうえんにいる。
すなばのまんなかに ぽつんと 立って。
空はオレンジで 風はすこし ひんやりしていた。
「もういいかい」
だれもこたえない。
「まあだだよ」
そのこえが ともだちのこえだ。
でも ともだちは どこにも見えない。
だからぼくは はしりまわる。
木のかげをのぞき、ベンチのうしろを見て、ジャングルジムのいちばんうえまでのぼる。
それでも 見つけられたことは 一どもなかった。
ぼくは ずっと鬼のままだった。
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かあさんの顔を 長いあいだ見ていなかった気がする。
とうさんのこえも おぼえていない。
でも こうえんには ともだちがいた。
見えないともだち。
こえだけのともだち。
風みたいなともだち。
みんなで かくれんぼをした。
ぼくは いつも鬼だった。
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その日もあそびおわって、うちにかえると、かあさんが ないていた。
「目がさめたのよ」
かあさんは そう言った。
とうさんも おいしゃさんも ぼくのなまえを何ども呼んだ。
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あとで しった。
ぼくは じこにあって、ずっと ねむっていたんだって。
車が 赤しんごうをむししてきたんだって。
あのこうえんは ねむっている子たちが あつまる場所だったんだ。
すがたのない子。
わらいごえだけの子。
いちばんかくれるのが じょうずな鬼は、ぼくのいちばん奥にいた。
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さいごの日、ぼくはその鬼を見つけた。
おいかけて、だきしめた。
そのとき こうえんの色が すーっときえていった。
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目をさましたら、白い天じょうが見えた。
かあさんが ぼくの手をにぎって ないていた。
でも ぼくのみみには まだあの声がのこっていた。
「もういいよ」
ともだちの声みたいで、ぼくの声みたいで。
それはなんだか、そっと背中をおしてくれるみたいだった。




