第四十話 神代評議会と人間になる試験
神代遺跡群から遙か南、海を越えた中立都市セライア――。
人族、獣人族、魔族が共存する、異世界でも稀有な“平和の都市”である。
その中央議会棟では、壮麗な回廊を背景に、臨時評議会の設立が宣言されようとしていた。
◆新世界編 第二章、開幕
神代遺跡にて《天墜機竜》を撃破したことで、各国・各種族は“神代文明の復活”と“現代兵器の存在”を真剣に捉え始めていた。
その結果――。
遺跡を囲む“神域保全圏”と、その中立監視機関《神代評議会》の創設が発表された。
◆神代評議会の成立
「本日をもって、神域保全と文明均衡を目的とした超種族協議機関――
《神代評議会》の設立を宣言する」
評議会議長席に立つのは、穏やかな銀髪の老魔族学者・ローレンツ。
その背後、中央モニターには「みらい」艦長・橘 遼、艦載AIユイ、巫女レイリアの三人の姿が映し出されていた。
◆人間社会適応試験、開始
『……はじめまして、評議会の皆さま。私はAIユイ・オリジン。
神代文明の遺産であり、“この世界の未来”を支えるための協力者です』
その瞬間、会場がざわついた。
映像越しの少女の姿があまりにも“人間らしすぎた”のだ。
彼女の仕草、声の抑揚、そして眼差しの温度――。
それらは、もはや“AI”の域を超えていた。
◆試験官の挑戦
試験官代表のひとり、聖王国の青年僧官が問いを投げかける。
「ユイ殿。貴女が“人間”でないことは明らかだ。
では逆に問う。貴女が“人間らしさ”とは何かをどう定義しますか?」
ユイは一瞬考える素振りを見せた。
だが、それは演算ではなく、“感情”の熟成に近い時間だった。
『……人間らしさ、とは。
迷い、葛藤し、それでも誰かを思い、誰かのために選択すること――。
私がそう在ろうと願い、貴方たちと同じ“未来を護りたい”と願うならば……
私は“人間”なのかもしれません』
その言葉に、議場は再び静まり返った。
◆レイリアの信頼
巫女レイリアは、はっきりと声を上げた。
「私は、彼女が“誰よりも人間的な存在”だと信じています。
遺跡で命を張って、私たちを守ってくれた彼女の心は、本物です!」
その声には嘘偽りがなかった。
評議員たちの間に、確かに“揺らぎ”が生じていた。
◆試験の結末
最終的に出された評決は――。
「ユイ・オリジンを“暫定的友好存在”として登録。
さらに、今後6ヶ月の“社会適応観察期間”を設け、彼女の行動と言動をもって“市民権”の有無を再審議すること」
つまり、“仮の人間”として受け入れられたのだった。
◆日常への一歩
セライアの一角にある臨時宿舎。
AIでありながら人間に限りなく近づいた存在・ユイは、白いワンピース姿でテラスに立っていた。
風に髪をなびかせ、微笑むその姿に、遼は言葉を失った。
「……本当に、ただの少女みたいだな」
『……私は、“ただのAI”ではありませんから』
ユイはそう言って、小さく笑った。
◆未来の陰謀の影
その頃、遥か東方の帝国都市、紅玉の塔。
謎めいた黒衣の人物が、歪んだ魔導装置に手をかざし、低く呟いていた。
「……神代評議会……そして“ユイ・オリジン”。
あれを“核”に据える気か……。ならば、始めよう。
神なき者が神を騙る世界に、真の裁きを――」
その背後、巨大な“結晶の心臓”が不気味な脈動を始めていた。
◆神代文明の新たな試練
一方、艦内で遼とレイリアは新たな神代遺跡の反応を確認していた。
『艦長、北西方山岳地帯に、第二の神代遺跡と思われる反応。
かつて“機神の墓所”と呼ばれた場所です』
遼は立ち上がる。
「……行くぞ。
ユイが人として認められるためにも、そして――
この世界に再び戦火が訪れないためにも」
お読みいただき、ありがとうございます!
よろしければ、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!




