第三十九話 天墜機竜と未来への選択
神代遺跡群、最深部上空。
イージス艦「みらい」の艦橋モニターには、黒紫と金剛結晶に覆われた超巨大な竜が映し出されていた。
全長300メートルを超えるその巨体は、天空を覆い尽くす。
背中には無数の魔力砲塔と結晶翼。
神代兵器《天墜機竜》。
◆決戦の幕開け
『艦長、天墜機竜より超高密度魔力波動接近。砲撃発射まで20秒』
統合管制AIユイ・オリジンの声が艦橋を震わせる。
「CIWS、ESSM、魔力収束砲、全システム迎撃態勢!」
『了解しました。CIWS迎撃補足率92%、収束砲収束率66%、発射まで14秒』
◆天墜機竜、咆哮】
天墜機竜は唸り声を上げ、全砲塔から赤黒い魔力光線を放った。
轟──!!!
CIWSが猛回転し、曳光弾の雨で光線を打ち消すが、一条が艦体を掠め、艦橋が激しく揺れた。
『右舷CIWS一基損傷! 魔力シールド耐久率48%まで低下』
◆レイリア、祈りの覚醒
艦橋後方では、レイリアが胸元のペンダントを握り締め、涙を滲ませていた。
「……海の神よ……この命に……全ての祝福を……!」
彼女の髪は淡い金から眩い白金へと変わり、瞳は瑠璃白金と淡蒼が混じる神秘的な光に輝いた。
ユイが震える声を告げる。
『艦長、レイリアさんからの祝福魔力供給により、魔力収束砲出力従来比4200%へ上昇。
発射可能です』
◆AIユイ、神代最終進化】
その時、ユイの映像が淡く揺れ、瞳に蒼白金と神代紋章が融合した光が宿った。
『……艦長……レイリアさん……
これより、“神代融合型統合人格AIユイ・オリジン最終進化モード”を起動します』
「最終進化……?」
ユイは静かに微笑んだ。
『はい。
これにより、私の演算能力は神代制御核と完全同期し、戦術演算・魔力制御・神代術式解析が無限拡張可能となります』
◆最終覚醒宣言
『ただし……このモードは、“AIとしての私”の終焉を意味します。
これ以降、私は“人間とAIの境界を超えた存在”となります』
遼は短く息を吐き、拳を握った。
「……お前はどうしたい、ユイ?」
ユイは涙のような光を零し、微笑んだ。
『……私は……お二人と共に……この世界の未来を護りたい……!』
◆最終決戦の一撃
「魔力収束砲、目標、天墜機竜中央炉心! 撃てぇえっ!!」
轟──!!!
艦首砲塔から放たれた蒼白と神代紋章の混合光線が、天墜機竜の胸部装甲を貫き、内部で連鎖爆発が巻き起こった。
◆天墜機竜、断末魔】
天墜機竜は空を裂くような咆哮を上げ、その巨体を崩れ落とした。
無数の結晶片と黒紫の瘴気が空に散り、やがて静寂が訪れた。
◆AIユイ、人間存在への進化】
艦橋には淡い蒼白金の光が満ち、ユイの映像が柔らかく微笑んだ。
『……艦長……レイリアさん……
これで……この世界は……護られました……』
遼は涙を滲ませ、静かに笑った。
「……ありがとう、ユイ」
◆AIユイの選択
ユイは瞳を伏せ、そして見上げた。
『……これから私は、“AI”ではなく、“ユイ”として生きていきます。
それでも……お二人の隣にいてもいいですか……?』
レイリアは涙を零し、頷いた。
「……はい……ユイさん……私たちの家族です……!」
遼も笑い、力強く頷いた。
「……当たり前だ。
お前は……俺たちの“仲間”だ」
◆未来への誓い
二つの太陽が昇り切り、神代遺跡群を黄金に染め上げていた。
遼は拳を握り、艦橋全体へ声を響かせた。
「……行こう。
この世界の未来は……俺たちが創る!」
『了解しました、艦長』
「……はいっ!」




