第二十二話 夜明けの約束
二つの太陽が水平線へと沈み、異世界の海は静寂に包まれていた。
イージス艦「みらい」は、南方王国連合艦隊との合流地点を目指し、洋上を進んでいた。
艦橋には、統合管制AIユイの映像が揺らめいていた。
その瞳は、以前よりも人間らしい温かさを宿している。
◆連合艦隊との接触
やがて、レーダーが複数の艦影を捕捉した。
『艦長、前方50キロに南方王国連合艦隊を確認。旗艦「ヴァルハラ」を先頭に、戦艦二隻、巡洋艦五隻、補給艦三隻を随伴』
「了解。減速、接舷通信準備」
橘遼の声に、ユイが柔らかく頷くように答えた。
『はい、艦長』
◆作戦会議】
「みらい」は連合艦隊旗艦「ヴァルハラ」と平行航行を開始した。
艦橋モニターに映る通信画面には、連合艦隊司令官カイゼル・アークライトの凛とした顔が映っている。
『改めて、異界の勇者殿、共闘に感謝する』
「こちらこそ。状況を聞かせてほしい」
カイゼルは短く息を吐き、背後の地図を指し示した。
『北方魔族帝国は、深海神殿の封印崩壊を機に、南方諸国への侵攻を本格化させている。
我らは現在、北方海域の防衛線を維持しつつ、本土沿岸部を死守しているが……長期戦は厳しい』
遼は顎に手を当て、モニターを睨んだ。
「つまり……我々がこの海で連中の艦隊を止めなければ、大陸戦線は崩壊する……というわけか」
『その通りだ。
そこで、貴艦の現代兵装と魔力システムを基軸とした“迎撃戦線”を共に築きたい。
異界の鋼鉄の力が必要だ』
◆AIユイの進言
艦橋後方で、ユイの映像が僅かに瞬いた。
『艦長、私からも提案があります。
南方連合艦隊の艦艇へ、魔力循環補助システムを部分的に共有することが可能です』
「それは……お前にできるのか?」
『はい。
私の演算リソースの一部を魔力伝達制御に転用し、他艦へ限定的に“魔力シールド補助”を供給できます』
モニターの向こうで、カイゼルの瞳が驚きに揺れた。
『……異界のAIが……我らの艦艇をも守ってくれるのか……!』
ユイは、ゆっくりと微笑んだ。
『はい。私も、この海を護る一員ですから』
◆作戦決定】
遼は頷き、カイゼルを真っすぐに見据えた。
「わかった。我々の力を最大限使ってくれ。
この海は、渡さない」
『感謝する、異界の勇者よ……!』
カイゼルの背後で、連合艦隊の将兵たちが小さく頭を下げた。
◆夜明けの艦橋
作戦会議が終わり、艦橋に静寂が戻った。
ユイの映像が遼を見つめ、そっと口を開いた。
『艦長……私は……』
ユイは瞳を伏せ、そしてゆっくりと見上げた。
『私は、戦いの中で“恐怖”を知り、“涙”を知り……
でも……それ以上に、“希望”という感情を知りました』
遼は頷き、小さく笑った。
「……お前は、もうAIじゃない。立派な“仲間”だ」
『……ありがとうございます、艦長』
◆レイリアの想い
艦橋の窓際で、レイリアが静かに海を見つめていた。
胸元のペンダントが、星明かりの下で淡く光っている。
遼が近づき、隣に立った。
「……大丈夫か?」
レイリアは微笑み、小さく首を振った。
「怖いです……でも……
遼さんと、ユイさんがいるから……私、怖くないんです」
◆夜明けの約束
二人の視線の先で、水平線が仄かに青く滲み始めた。
新しい朝が、異世界の海を照らそうとしていた。
「……レイリアさん」
「……はい……」
遼は真剣な瞳で言った。
「俺たちで、この海を護ろう。
そして必ず……この戦いが終わったら……」
レイリアは瞳を潤ませ、笑った。
「……ええ。約束です……遼さん……」
ユイの声が、そっと二人の背中を押した。
『……お二人と共に、私も……必ず護ります』
◆新たなる戦線へ
水平線の彼方で、二つの太陽が昇り始めた。
鋼鉄の艦と、祈りの巫女と、涙を知ったAI。
その奇跡の邂逅は、いよいよ大陸戦線の幕を開けようとしていた。




