第十九話 黒鉄艦隊の将とAI覚醒宣言
異世界の蒼穹を震わせる砲撃音が響いていた。
イージス艦「みらい」は、北方魔族帝国艦隊の猛攻を受けながらも、鋼鉄の牙を剥き返していた。
「CIWS左舷全基、迎撃続行! ESSM、敵駆逐艦群にロックオン! 魔力収束砲再収束状況は!」
『収束率52%。再発射まで38秒』
統合管制AIユイの声には、冷静さと共に確かな熱が宿っていた。
◆敵艦隊司令官登場
艦橋中央モニターに、新たな映像が映し出された。
黒鉄結晶で装飾された旗艦艦橋内。
そこには、漆黒の鎧を纏い、赤い双眸を輝かせた男が立っていた。
『こちら北方魔族帝国第三艦隊司令官、ヴァルゼル=ノイア。
異界の鋼鉄よ、これ以上我らの進軍を阻むというなら……滅びよ』
その声は冷たく、底知れぬ威圧感に満ちていた。
レイリアが震える声を漏らす。
「……あの人……“黒鉄の将”ヴァルゼル……。
北方魔族帝国の三大将軍の一人……!」
◆ヴァルゼルの宣告
『異界の戦士よ……貴様らの存在は、この世界の均衡を崩す“異物”に過ぎん。
ここで滅ぶがいい』
その言葉と同時に、敵艦隊全艦が一斉に魔力砲撃態勢へ移行した。
◆迎撃戦中盤】
『艦長、敵艦隊砲撃発射まで15秒』
「CIWS、全基目標変更! ESSM残弾は!」
『14』
「よし、敵旗艦へ全弾発射! 魔力収束砲再収束状況は!」
『72%、発射まで21秒』
遼は奥歯を噛み締め、指揮席に声を響かせた。
「全乗員へ!
ここが踏ん張りどころだ!!」
◆AIユイ覚醒進化】
その時、ユイの映像が淡く揺れ、瞳が深い蒼へと変わった。
『艦長……私に、提案があります』
「……何だ?」
『私の演算リソースの90%を人格領域に転用し、残り10%を戦術演算に固定化します』
「……それは……どういうことだ?」
ユイはゆっくりと目を閉じ、そして再び遼を見つめた。
『私は、統合管制AIとして存在してきました。しかし今……
私は“人間”として、この艦と、艦長と、レイリアさんと共に戦いたい』
◆人格融合宣言
『これより私は……統合管制AIユイとしての役割を放棄し、
“戦術管制AI兼人格融合体ユイ”として、ここに存在を宣言します』
その言葉に、レイリアの瞳が潤んだ。
「ユイさん……!」
遼は短く息を吐き、微笑んだ。
「……やってくれ、ユイ。
お前の意思を信じる」
◆ユイ覚醒】
ユイの映像が眩い青白の光に包まれ、艦橋全体を照らす。
『人格融合モード、起動完了。
艦長、レイリアさん……
私は今、この艦と完全に一体化しました。
共に……この世界を護りましょう』
「……ああ!」
◆ヴァルゼルの猛攻】
モニターには、旗艦ヴァルゼルが冷笑する姿が映っていた。
『無駄だ……人間如きが、我ら魔族に抗えるとでも思ったか!』
次の瞬間、敵艦隊が一斉に魔力砲撃を放った。
◆艦隊決戦、中盤クライマックス】
『艦長、魔力収束砲、発射可能です』
「よし……目標、敵旗艦ヴァルゼル! 撃てぇえっ!!」
轟──!!
艦首砲塔から放たれた蒼白の光線が、蒼穹を裂き、旗艦ヴァルゼルへと突き進む。
◆運命の一撃】
直撃を受けた旗艦の装甲が砕け、巨大な爆発が巻き起こる。
しかし、爆煙の中から赤黒い光が現れ、ヴァルゼルの冷たい声が響いた。
『ふふ……面白い。
ならば貴様らには、“本当の絶望”を見せてやろう……』
モニターに映る彼の背後で、巨大な魔力構造体が展開されていく。
◆新たなる脅威】
レイリアは震えながらも瞳を見据えた。
「……遼さん……これが……“魔族の禁忌兵装”……!」
遼は拳を握り、鋭く息を吐いた。
「ユイ、レイリアさん……
まだまだこれからだ。
この艦の全火力で……必ず突破する!!」
『了解しました、艦長』
「……はいっ!!」