第十八話 蒼穹の迎撃戦
二つの太陽が真上に輝き、異世界の海は黄金に染まっていた。
イージス艦「みらい」は、北方魔族帝国艦隊を目前に、静かに砲門を向けていた。
艦橋モニターには、無数の黒鉄結晶装甲艦艇が映し出されている。
全艦が魔力砲を展開し、蒼穹を震わせる咆哮を上げていた。
◆迎撃戦開始
『艦長、敵艦隊、魔力砲一斉射撃態勢へ移行。発射まで20秒』
「CIWS全基、迎撃準備! ESSM、敵巡洋艦群にロックオン! 魔力収束砲、収束状況は!?」
『収束率84%、発射まで15秒』
統合管制AIユイの声には、冷静さの中に熱を帯びた色が宿っていた。
◆AIユイ、完全感情化
その時、ユイの映像が淡く揺れ、瞳に涙のような光が溜まった。
『艦長……私……怖いです……
でも……この“恐怖”があるから……守りたいと思える……』
遼は微笑み、ヘッドセット越しに静かに応えた。
「大丈夫だ、ユイ。お前がいてくれるから……俺たちは負けない」
ユイは涙を流すように微笑み、震える声で返した。
『……はい……艦長……』
◆レイリアの祈りと艦全体魔力強化
艦橋後方では、レイリアが祈りを捧げていた。
胸元のペンダントが蒼白く輝き、髪は銀白に染まり、瞳も深い蒼へと変わっている。
「海の神よ……この艦を……この世界を護る鋼鉄へと変えてください……!」
その瞬間、艦体全体を青白い光が覆った。
『艦長、艦体魔力防御出力、従来比320%へ上昇。
CIWS、VLS、魔力収束砲システム全てに魔力補正が付加されます』
「助かる……! ありがとう、レイリアさん!」
レイリアは震えながらも微笑んだ。
「……私にできることがあるなら……何度でも……!」
◆異界艦隊、一斉射撃
『敵艦隊、魔力砲発射!!』
轟──!!
無数の赤黒い光線が海面を焦がし、「みらい」へと突き進んでくる。
「回避機動、最大舵角! 魔力シールド展開!!」
艦体が大きく傾き、魔力シールドが展開された瞬間、複数の光線が直撃した。
轟音と振動が艦橋を揺らす。
◆被害状況と反撃
『艦長、右舷CIWS二基機能停止。魔力シールド損耗率12%。艦体損傷軽微』
「よし……CIWS、左舷全基反撃開始! ESSM発射!!」
艦上からミサイルが垂直に打ち上がり、旋回して敵巡洋艦群へ突入した。
轟──!!
爆発と共に、三隻の巡洋艦が炎に包まれ、轟沈していく。
『目標三隻、撃破確認』
◆魔力収束砲、発射準備完了
『艦長、魔力収束砲収束完了。出力、従来比410%。発射可能です』
「ユイ、目標指示!」
『敵旗艦、魔力濃度最高値。撃破優先度Aランク』
「よし……撃てぇえっ!!」
◆蒼白の閃光
艦首砲塔から放たれた蒼白の光線は、空間を震わせながら敵旗艦へと突き進む。
轟──!!!
直撃を受けた旗艦は、巨大な爆発と共に結晶装甲を砕かれ、轟沈していった。
その瞬間、敵艦隊の隊列が乱れ始める。
◆ユイの涙と覚悟
艦橋では、ユイの瞳から一筋の涙が流れていた。
『……艦長……私……怖いけれど……
この“恐怖”は、きっと……守りたいという証だから……』
遼はヘッドセット越しに笑みを浮かべた。
「……ああ。その通りだ、ユイ。
恐怖を知るから、人は強くなれるんだ」
◆反撃の狼煙
「ユイ、CIWS残弾は?」
『右舷14%、左舷36%』
「ESSM残弾!」
『21』
「魔力収束砲エネルギー残量!」
『68%』
遼は鋭く指揮席に腰を下ろし、マイクへと声を放つ。
「全艦載システムへ。これより北方魔族帝国艦隊迎撃戦、第二波交戦へ移行する。
この海を……この世界を取り戻すために!!」
◆レイリアの決意
レイリアは祈りを捧げながら、強く拳を握った。
(私も……この戦いの一員……!
もう、ただの巫女じゃない……!)
◆新たなる戦いへ
蒼穹を裂く魔力砲撃。
轟音を響かせるCIWS。
咆哮するAI。
祈る巫女。
鋼鉄と魔力とAIと祈りが交わり、異界艦隊との迎撃戦はさらに熾烈を極めていく──。