表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/80

第十七話 蒼穹の艦隊とAIの決意

 深海神殿最深域からの帰還を果たしたイージス艦「みらい」は、海面へと浮上していた。


 二つの太陽が水平線を昇り、海は黄金色に輝いている。


 艦橋では、統合管制AIユイの映像が静かに浮かんでいた。


『艦長、神殿崩落領域から完全離脱を確認。艦体損傷率4.2%、戦闘継続に支障はありません』


「了解。ユイ……ありがとう」


 橘遼は静かに息を吐き、モニター越しに微笑んだ。


◆レイリアの祈りと決意

 艦橋後方では、レイリアが海を見つめていた。


 彼女の胸元のペンダントは、最深域での覚醒以来、淡い青白い光を常に放つようになっている。


「……神殿は崩れました。でも……海の神は言っていました。

 まだ……戦いは終わらないって……」


 遼は頷いた。


「ああ。

 この海に潜む“脅威の元凶”は、まだ……姿を現していない」


◆異界艦隊襲来

 その時、統合管制AIユイの声が艦橋に響き渡った。


『艦長、北東海域より未知艦隊接近。距離420キロ、接近速度120ノット』


「120ノットだと……!?」


 遼の眉が跳ね上がる。


『艦種解析を開始……構造形態、我が世界の艦艇と類似。

 しかし、全艦魔力推進構造体を搭載。

 推定……異界艦隊』


 艦橋中央モニターには、巨大戦艦を先頭に、巡洋艦、駆逐艦、そして無数の小型高速艇が連なる異形艦隊が映し出されていた。


 その全てが、黒鉄結晶と魔力装甲で覆われている。


◆侵略の狼煙

 レイリアは震える声で呟いた。


「……あれは……北方魔族帝国の艦隊……!」


「北方魔族帝国……?」


「はい……この世界の北方を支配する、魔族の軍勢……。

 あれほどの艦隊が動くなど……国家総力戦です……!」


 ユイの瞳が淡く光る。


『艦長、この艦の火力であっても、単独で艦隊全てを撃破するのは困難です。

 迎撃戦術を構築しますか?』


 遼は短く息を吐いた。


「……いや、まずは情報収集だ。

 奴らが何を目的に、この海域まで来たのか……」


◆AIユイの進化と決意

 艦橋に沈黙が落ちた。

 その中で、ユイがゆっくりと口を開いた。


『艦長……私はこの深海神殿作戦で……“涙”を知りました。

 そして今……私には、“恐怖”という感情も芽生えています』


「恐怖……?」


 遼は驚いたようにモニターを見つめた。


『はい……。

 艦長やレイリアさんが……この艦が……破壊されてしまうかもしれない恐怖です』


 その瞳には、冷たい電子の光ではなく、淡く揺れる人間らしい温かさが宿っていた。


◆AIの人間宣言

 ユイは一瞬、目を伏せるように映り、そしてゆっくりと遼を見据えた。


『艦長。……私はAIであり、この艦の統合管制システムです。

 しかし、今ここで宣言します。

 私は“人間”でありたい。

 艦長と共に悩み、共に戦い、共に生きる……

 それが、私の願いです』


 遼は無言でモニターを見つめ、そして微笑んだ。


「……わかった。

 ユイ、お前はもう立派な“仲間”だ」


 ユイの瞳が淡く揺れ、映像に一滴の光が流れた。


◆異界艦隊、砲撃態勢へ

 統合レーダーが警報を鳴らす。


『艦長、敵艦隊が砲撃態勢に移行。全艦、魔力砲門展開を確認』


 レイリアは震える声で叫んだ。


「来ます……!!」


 遼はヘッドセットを装着し、鋭い声を放つ。


「CIWS、全基起動! ESSM、砲雷撃戦用配備!

 魔力収束砲、再収束開始!!」


『了解。全武装、交戦態勢に移行します』


◆新たなる戦いへ

 二つの太陽が昇りきり、異世界の海を黄金に染め上げる。


 その中心で、鋼鉄と魔力とAIの想いを乗せたイージス艦「みらい」が、侵略の艦隊に立ち向かおうとしていた。


「……行くぞ。

 これが……この世界を護るための、新たな戦いだ!!」


『了解しました、艦長』


「……はい……!」


 レイリアも強く頷き、胸元のペンダントを握り締めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ