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メリーさん・3



 くだんと別れて部屋に帰った俺は、ベッドの上でぼんやりとした意識を保ち続けていた。有り体に言えば寝ぼけていた。午前二時。寝るには良い時間なんだろうが、正直な話俺には関係ない。いつ寝ようが起きようが俺の勝手だ。俺が眠った時が夜で、起きた時が朝なんだからなっ! 午前二時、この辺の時間が生きてて一番楽しいと思えるような気がする。多分、そろそろダメだ。上手く頭が回らない。

 寝よう。

「ひっ!」

 と思ったんだけど、突然電子音が部屋中に響き渡る。どうした敵襲か! 誰か答えろ応答しろ通信班! ん。あれ、違うわ。俺の携帯が鳴ってるだけじゃん。

 ……俺の携帯が鳴ってるだけじゃん。もっかい言っとこ。俺の携帯が鳴ってるだけじゃーん。そうかそうか、どうせ鳴らないと思って、マナーモードにはしていないんだっけ。

「め、メールだ」

 しかも業者じゃないぞ。うわあ人間からメールが来るなんて久しぶりだなあ。相手は大口だけど。本当に人間かどうか怪しいけど。

「……『くだんちゃんってかわいいよねー』」

 嬉し過ぎて、ついつい文面を読み上げてしまう。が、くだらない。薄っぺらい。マジにペラペラ。眠っちまえば次に起きた時には忘れちまうような、そんな些細なもの。だけど、それが何だか嬉しい。我ながら安っぽい人間だけど、仕方ないよな。しかし、何て返そう。何を返せば良いんだ。

「……あれ」

 俺が迷っている間に、またメールを受信した。相手は勿論大口。

「『あんまりかわいいから服とか買ってあげちゃったー』」

 ああ、そうか。帽子とか変わってたけど、あれは大口がくだんにあげたものだったのか。そうか。そうかあ。くだん、服屋とか行くんだあ。しかも、多分大口と。っぽい。何かそれっぽい。ちょっと羨ましい。今の俺にはそんなお洒落なところ無理だ。だってさあ、店員がガンダッシュでこっち来るんだぜ。『何かお探しですかー?』 とか、今探してんだからこっち来るんじゃねえよ話掛けんじゃねえよ何も買わずに帰りづらいじゃねえかよ。あと、『今日入ってきた新作なんですよー』とか『こちらもう在庫ないんですよー』とか絶対嘘だろ! だから嫌なんだ! 俺のパーソナルスペースに奴らは土足で侵入しやがるんだ!

 それはともかく返信しよう。えーと、そうだな。

「あ、の、パー、カー、の、センスは、ど、うか、と思う、と」

 だって天だもん。そして無だもの。いや、ある意味くだんには似合っていると言えば似合っているけど。似合い過ぎててやばいような気がする。そして、彼女があのパーカーを選んだ事がちょっと怖い。

「ん」

 一分もしないで携帯が鳴った。が、着信? 電話? メールしてたのに、どうしていきなり電話してくるんだこいつ。

「なんでですか」

『そうかなー、アレはすっごい可愛いと思うんだけどなあ。だってさだってさ、くだんちゃんみたいなちっこい子が天、だよ? どうかな? ワクワクしない?』

「しますけど、けど、アレはちょっと」

『でも最終的にはくだんちゃんが選んだ奴だから。もう私にはどうしようもなかったんだよね』

 止めてやれよ。くだんはアレで町を歩いたりするんだぞ。

『あ、それよりさあ、ソーメン君は知ってる?』

「何をですか? もしかして、メリーさんの事ですか?」

『うんうん、それそれっ。怖いよね、私携帯電話買ったばかりなのに。メリーさんにボッコボコにされちゃうかもしんないだよ? 最悪だよねー』

「まあ、俺たちは大丈夫じゃないんですかね。くだんが言うには標的はアトランダムみたいだし。この町は小さいと言っても、携帯電話持ってる人間ばかりですから」

 俺たちが狙われる可能性は低い。いや、それを言うならこの町の住人全てに言える事だけど、それでもやっぱ何万分の一ぐらいの確率だろうな。全然余裕だろ。

『それもそうかもね、気にしてたら携帯を触れなくなっちゃうもん』

 そうそう。

「ですね。それじゃあ、そろそろ俺は寝ます」

『えー、もう寝ちゃうのー? 夜通し喋ろうよー、愛やら哲学やら理想について話そうよー』

「お休みなさい」

 と言うか寝ろよ。俺は通話を切り、ベッドの上で横になる。しばらくすると、またメール。確認するまでもなかった。



 眠ってからどれくらい経ったろう。やかましい着信音で目が覚める。つーか叩き起こされる。

「……んん」

 大口、しつけえぞ。今何時だと思ってやがるんだ。あーしかもメールじゃねえし、電話だ。悪戯のつもりなのか非通知で掛けてきてやがる。馬鹿じゃねえの? ちょっと文句言ってやる。俺は大口とは違って至って普通の……人よりも更に虚弱なんだぞ。惰眠を貪らなきゃ死んじまう。万年アッパーな奴と同じ括りにされちゃあたまんない。身が持たない。

「……もしもし」

 わざとらしく、不機嫌さを最大限にアピールしてみる。

『あたし、メリーさん』

 殺すぞ。

「今何時か知ってますか? 三時ですよ、三時。悪戯なんてくだらない事やってないで寝かせてくださいよ」

 何がメリーさんだボケが。んな古典的な悪戯に引っ掛かる奴がいるか。

『今、駅前にいるの』

「ふーん。駅前で何やってんですか?」

 しかし、大口にしては手が込んでいる。声が全然違うもんな。なんつーか、すげえ可愛い。飴玉をどろどろになるまで煮詰めたように甘く、舌足らずで、鈴を鳴らしたみてえに高い声。こんな芸を持っていたのか。うん、たまに聞かせてもらおう。超良い。脳髄が痺れそうになるくらいにかーわーいーいー。

『今駅前のコンビニで立ち読みしてるの』

「へー」

『信頼度星三つなんて嘘。これは嘘。疑似連なの。派手な演出で期待させてパチンカスからお金を搾り取るの』

「パチンコ雑誌見てんじゃねえよ」

 可愛い声でえげつない事を言うな。

『あたしメリーさん。今からあなたの家に向かうわね』

「ざけんなよ大口。来ても入れねえぞ、鍵掛けとくからな。ガラス割ったら絶交だからな」

 返事はない。向こうから電話を切られてしまう。何だか癪だ。こっちからも仕掛けてやる。げっへっへ、早速大口に掛けてやるぜ。えーと、非通知ってどうやるんだっけ。まあ良いや、このままゴーだ!

 早く! 早くっ。コール音が俺を焦らす。どうせ起きてるくせに、さっさと出ろや。

『んー?』

 眠たそうな声。いかにも今起きましたって感じだ。ええい演技なんぞしくさって。

「僕メリーさん、今お前の近くにいるぞー、がははは」

 少し間が空く。

 やばい、おい早くリアクションしろ。我ながら程度の低い嫌がらせで死にたくなってくるじゃねえか。

『……ソーメン君』

「違うよー、僕メリーさ……」

『――――殺すよ。今何時か分かってるの? ふざけないでよね』

 せ、せ、せ、せ……!

『夜更かしは美容の大敵なんだから。そうでなくても常識ってものがあるでしょ?』

 正論で説教されたー! しかも大口に!

「さっ、先に仕掛けたのはそっちじゃないですか」

「んんん? 咲に仕掛けたのはそっちでしょ。もう良いかな、寝たい。眠たい。眠りたい三段活用」

 怒っていても何を言っているかは相変わらずだが、妙な迫力がある。こいつには凄味がある!

「え、じゃあ、あの、俺の携帯にイタ電したのは?」

『えー、私じゃないよ。……んん』

 あれー?

『じゃ、私寝るからね。もう夜中に悪戯電話しちゃダメだよー』

「は、はい」

 大口じゃ、ない? じゃあ誰なんだ。そもそも俺の番号知ってんのあいつだけじゃんかよ。

 …………あ。

 やばい。これはまずいんじゃないのか?

 嫌な予感がしたところで携帯が鳴る。やはり、相手は非通知だった。

「も、もしもし?」

『あたしメリーさん』

 め、メリーさん。

『今、三丁目を歩いているの』

 これ、もしかして本物じゃないのか?



 窮地だ。何故なら俺は命を狙われている。いや、殺されるかどうかはボコボコにされるまではまだ分からない。が、確実に折られる。奥歯とか肋骨とかを。

「ど、どうしよう」

 あれから、メリーさんからの着信はない。家から出てしまおうかとも考えたが、それで助かるとは思えない。助けを求めようとも考えた。けど、大口恐いし。くだんとは連絡の取りようがない。八方塞がりだ。俺はただ殴られるのを待つしかないらしい。

 と。また着信。また非通知。出たくないけど、出ない訳にはいかない。物事には段階が大事なのだ。いきなり俺の背後に憑かれるのは避けたい。ホップステップが欲しいのだ。

「……あの」

『あたしメリーさん』

 またこれだよ。こっちの話を聞くつもりはないらしい。助かるには何とか話をするしかないんだ。そうっ、ネゴシエートしかない。

『今……』

「俺は今飛行機に乗っている!」

『いいえ、部屋にいるわ』

 いきなり見破られる。が、強引にいけば会話は成り立ちそうだ。向こうが何か話す前に仕掛ければ良い。

「いや、いない。俺はパプアニューギニア行きの便に乗っている。無駄足になりそうだな」

『乗っていないわ』

「証拠は?」

『……証拠?』

「俺が自分の部屋にいるという根拠を出せ。さもなければ信じない。俺の部屋には絶対入れない」

 会話を引き伸ばしちまえば良い。時間さえ稼げれば、もしかしたらくだんが……。つーかもうそれしかない。彼女の気紛れを祈るしかない。

『ない。けれどあなたのところには必ず行くから。あ、今一丁目。あと五分くらいで着くわ』

 しまった。こいつ歩きながら電話してやがる。どうする、どうすれば……!

「いっ、今俺の部屋散らかってるから! だからちょっと!」

 切れた。

 やばい。本格的にやばい。こうなったら、部屋を出よう。四の五の言っていられん。部屋にいるよりはマシだろうし、一旦コンビニに退避するか。



『あたしメリーさん。今、あなたの家の前にいるの』

「あっそ。バーカ俺はそこにいねえよグズ」

『嘘よ。……あ。あっ』

 気付いたようだなメリーとやら。俺は今コンビニで立ち読みしているのさ。

『……今どこにいるの?』

「お前の後ろだよ」

『えっ!?』

 うーわ振り向いたんだな。おっもしれえ。何か全然恐くねえぞ。

「冗談だ。本当は駅前のコンビニにいる」

『嘘。あたしを遠ざけようとしているわね』

「マジだって」

 店内に客が入ってきたのを見計らい、俺は携帯をレジ前に向ける。

「っしゃいませー」

 間延びした店員の声と来客を告げるチャイム。しっかり聞こえただろうな。

「な? コンビニだろ?」

『首を洗って待ってなさい』

 はい通話終了ー。さーて、もう少し立ち読みを続けるかな。



『嘘だったじゃない』

「あ?」

 十五分後、再びメリーから着信が来たので相手をする。

『駅前のコンビニにいなかったじゃない。うろちょろしてたら店員に変な目で見られたじゃないのよ』

「知るかドアホ、欝陶しいんだよ。着信拒否すんぞ」

『あたしメリーさんだから無駄よ。電波ではなく、何かこうスピリチュアル的なものが働いてるから』

「うるせえんだよドブス」

『ドっ……!?』

 おお、良い反応じゃん。

「顔を見なくても声だけで分かるんだよ。お前はどうしようもない不細工なんだよ、ゲス野郎」

『……言ってくれるじゃない。あなたこそ、根拠とやらを述べてもらえる? あたしが不細工だって根拠を』

「非通知で電話掛けて他人の家に乗り込んで挙句ボコボコにするんだろお前。ストーカーよりもタチ悪いじゃねえか。心が不細工な奴は外見も不細工なんだよ。決まってる」

『い、言うじゃない』

 楽しいなあオイ。

『どうせあなたの家の近くのコンビニにいるんでしょう。首を洗って待ってなさい』

 あ、切れちまった。もっとこう、ガッと揺さぶり掛けてやろうと思ったのに。うーん、メリーさんはこっちに向かってきてるんだよなあ。すぐに移動しよう。えーと、確か、向こうから大回りして……うん、何とかなるな。



『あたしメリーさん』

「うん」

『あなた、必ず殺してやるわ』

「やれるもんならやってみろや」

 どうやら、メリーさんは俺がさっきまでいたコンビニに着いたらしい。

『ちょろちょろちょろちょろ逃げ回って……! ネズミでももっと往生際が良いに決まっているわ』

 はっはー、俺はネズミじゃねえし。

『今度はどこにいるのっ?』

「うーん。どこだと思う? 実はさ、お前の後ろの方にいるんだよね」

『もう騙されないから』

「わあっ!」

『ひっ……! きゅ、急に大声を! 大きな声を出した!』

 こいつ、良いぞ。扱ってて最高に楽しい。何だろう、小さい時の妹を思い出す。ベッドに無理矢理体を押し付けて、チェーンソー持った奴が暴れ回るホラー映画とか、人間の体に群がり集りまくる蟻の映画なんて見せまくったなあ。泣いて嫌がるんだよ。怖いだのどうのって。うん、一切容赦しなかったなあ。

「ぎゃはは、ビビってやがんの」

『殺す殺す殺す殺す殺すぅ!』

 内容は怖いんだけど、声がこれだからなあ。あんまり凄みを感じないと言うか。

「ところでさあ、蜘蛛と蛇どっちが好き?」

『蜘蛛も蛇も、あなたよりはマシだと思うわ。こんな性悪な奴は見た事ないもの』

「俺もお前みたいなカスは初めてだよ。見た事はないけど、きっとブスだ。あ、蛇にしよう」

『どこにいるのか答えなさいよっ』

 今、俺は駅前のレンタルビデオ屋にいる。二十四時間営業のそれだ。ちなみにチェーン店ではない。ラインナップがどうしようもなく安っぽく、新作なんぞここでは簡単にお目に掛かれない。久しぶりに来たのだが、何も変わっていない。店長のオススメは相変わらず、最強のコックが悪党相手に列車でハッスルしまくる映画のままだ。

『聞いているの? あなた、耳が腐っているんじゃない?』

 まだ捕まる訳にはいかない。こうやって逃げながら、くだんを探すんだ。そうするしか、俺の助かる道はない。

「そのまままっすぐ行ったら個室ビデオ屋があるんだよ。そこの八○三号室」

『本当でしょうね?』

「マジマジ。俺も歩くの疲れたし、そろそろてめえの相手も飽きてきたしな」

 電話が切れる。さて、ビデオでも借りて帰るか。えーと、会員証はまだ持っていたっけな。



 ビデオ屋を出たところで、ヤンキーの集団とすれ違う。あー、焦った。あいつらこんな時間まで何やってんだろう。しかも女もいたし。うあー、絶対色々とやってるんだろうなあ。やってるに決まってる。畜生、こっちは生きるか死ぬかの瀬戸際だってのに。……しかし、絡まれなくて良かった。金髪こえー。煙草こえー。

「お」

 着信だ。

『あたしメリーさん。嫌いなものはアニメオタクとあなたです』

「アニメ声が何抜かしてやがる。それよりさあ、俺はそこにいたか?」

『どうでしょうね』

 つーかまず個室ビデオ屋なんかこの辺にねえしな。一生歩き回ってろよボケ。

『……あなた、意外とあるのね』

 あ?

『背、高いのね。もっとダサくて不細工だと思ってたの。攻撃性が強いと言うのは、自らの弱さを隠す方法だから』

「ごちゃごちゃとうるせえんだよチビ」

『チビ……? 悪くないわ。少し気弱そうだったけど。ふふ、そうね。あなた、相手の顔や姿が見えないと強気なのね。実際に害を受けないと決め付けた相手には攻撃するのね』

 こいつ、何を言ってやがる。急に余裕たっぷりな態度になりやがって。

「おい、分かったような口利いてんじゃねえぞ」

『その勇ましい口調、いつまで続くか楽しみね』

「ああ?」

 通話終了。と、同時に、

「……え?」

 誰かの声が聞こえた。いや、声と言うには穏やか過ぎる。ありゃあ叫びだ。断末魔、苦痛を感じて啼いている。

 ……どうする?

 叫びが聞こえたのは向こう。ヤンキーどもが歩いていった方角だ。ただの喧嘩かもしれない。下手すりゃ絡まれるかもしれない。でも、放っておけない。嫌な予感がする。



 路地裏で、人が倒れている。

 壁に背を預け、コンクリートに体を預け、積み重なるように互いを預けている。死んではいないようだが、誰もがボロボロだ。啜り泣く声。痛みに呻き、喘いでいる。男も女も関係ない。平等に痛め付けられていた。四、いや、五人。それだけの数の人間が、たった数分の間でこうなっている。何が起こった? 誰がやった? 正直ざまあって気持ちもあるが、前歯を根こそぎ折られた男のツラを見ると、そんな感情も消え失せる。こいつらは社会の塵だけど、流石にやり過ぎだろ。

「きゅ、きゅう……」

「あ、え……?」

 目が合った。髪の毛の大部分を毟られた男と。

「よん、でください……」

 救急車、か。救急車を呼んで欲しいのか。つーかまあそれしかないわな。あと警察も呼んどくか。

「うぎいいいぃぃぃぃいっ!」

 ――!?

 まだ、誰かいたのか。暗くて見えにくいが、確かに誰かいる。二人、いる。即ち、被害者と加害者が。

 俺は動けなかった。声が途絶え、暗がりから姿を覗かせるソレを見るまで。

「待たせてしまったようね」

 何か、途轍もない思い違いをしていたらしい。

 メリーさんとはフランス人形のような、小さな女の子なんだと思っていた。ゴスロリっぽいドレスに身を包んだ、あどけない少女だと。

 でも、違う。違っていた。

「さっき言いたかったのだけれど、まあ良いわ。こんばんは。散々引っ掻き回してくれてありがとう」

 

 長い金髪。

 ピンクのジャージ。

 右手には煙草。左手にはぐったりとした男。

 釣り目気味の双眸が俺を睨んでいる。


「ああ、重たい」

 投げ捨てられる男。地面にぶつかる音と、くぐもった呻き声がやけにうるさかった。

「……な、んで?」

「声が震えているわね。電話の時とは全然違う」

「ど、どうして、こ、こんな事を」

 どこからどう見てもただのヤンキー女が気だるそうに煙を吐き、俺を強く見据え付ける。だが、声はアニメそのもの。

「あたしメリーさん」

 人の話を聞こうとしない。

「今、あなたの目の前にいるの」

 まるで――――いや、こいつがメリーさんだったのか。

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