第8話:訪問者と創造主の責任
災厄の蛇を退けて数日が経過した。村は再び平穏を取り戻しつつあったが、デミウルゴスの胸中には消えない不安が残っていた。
「災厄の蛇を片付けたからって、次がないわけじゃないよな……」
肩に止まったノクスが軽く羽ばたきながら言う。
「その可能性は十分にあります。何せ、この世界にはあなたが放置した問題がまだ数多く存在しているのですから」
「言うなよ……俺だって反省してんだからさ」
デミウルゴスはため息をつき、村の広場を歩いていく。その時、見慣れない姿の人物が村に入ってきた。
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知られざる訪問者
訪問者は、黒いローブをまとった中年の男だった。白髪混じりの髪と鋭い眼差しが印象的で、どこか品のある佇まいをしている。
村人たちはその男を警戒しながら遠巻きに見つめていたが、男はゆっくりとデミウルゴスの方へと歩み寄った。
「久しいな、デミウルゴス」
その声を聞いた瞬間、デミウルゴスの表情が一変した。
「……お前か。ヘルメディオス。まだ生きてたのかよ」
名前を呼ばれた男は、口元にわずかな微笑みを浮かべる。
「生きているも何も、私は君の『創造』から生まれた存在だ。この世界が続く限り、私は存在し続けるだろう」
「……ああ、そうだったな」
デミウルゴスは眉をひそめながら答えた。
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ヘルメディオスの目的
「で、何の用だ?俺の世界に遊びに来るなんて、暇を持て余してるわけじゃないだろ?」
ヘルメディオスはローブの内側から一本の杖を取り出し、地面に突き刺した。すると、その場に小さな魔法陣が浮かび上がる。
「君に警告しに来たのさ。この世界で君が怠け続ければ、いずれすべてが崩壊する」
「崩壊ねえ……具体的には?」
デミウルゴスは興味なさそうに聞き返すが、ヘルメディオスは真剣な表情で続けた。
「君が放置した未完成の存在や、封じたつもりの危険な存在。それらが徐々に力を取り戻し、この世界に混乱をもたらしている。災厄の蛇はその一例だ」
「聞き飽きた話だな。そんなの分かってるさ」
ヘルメディオスは眉をひそめ、さらに畳みかける。
「分かっているなら、なぜ行動しない?君は創造主だ。この世界の責任はすべて君にある!」
デミウルゴスはその言葉に軽く笑った。
「俺はもう創造主じゃない。ただの『墜ちた奴』だ。責任なんて、もう関係ないだろ?」
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村人たちの反応
そのやり取りを遠くから見ていた村人たちは、不安げな表情を浮かべていた。
「一体何の話をしているんだろう……」
アリシアがリックに尋ねると、彼は険しい顔で首を振った。
「分からないが、あの訪問者がデミウルゴスの過去を知っていることは確かだ。そして、その過去がこの村にも影響を及ぼす可能性がある……」
リックの言葉に、村人たちの間にささやきが広がる。
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揺れるデミウルゴス
「責任、責任ってうるせえな。俺に何をしろって言うんだ?」
デミウルゴスは苛立ちを隠さずに問いかけた。
「簡単なことだ。この世界を見捨てず、自分の力を使って守ることだよ。それが君に課された創造主としての宿命だ」
「宿命なんて、知ったことか」
その言葉に、ヘルメディオスはしばらく沈黙した後、静かに問いかけた。
「それなら聞こう。君がこの村を助け続けているのはなぜだ?」
デミウルゴスは言葉を詰まらせた。
「……別に理由なんてない。ただ面倒だから放置しないだけだ」
「それが理由のすべてか?」
ヘルメディオスの問いかけに、デミウルゴスは答えられなかった。
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村への脅威
その時、遠くの山の方角から大きな轟音が響いた。地面が揺れ、村人たちが慌てて騒ぎ始める。
「今の音は何だ!?」
リックが叫び、デミウルゴスもそちらに目を向けた。
ヘルメディオスは静かに言う。
「次の問題が来たようだな。君の放置した存在が目を覚まし始めている」
デミウルゴスは面倒くさそうに頭を掻きながら、肩にいるノクスに話しかけた。
「おい、調べてこい。どんな奴が出てきたか確認するぞ」
「了解です」
ノクスが飛び立ち、山の方へと向かっていった。
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新たな決意
ヘルメディオスは立ち去る前に一言だけ告げた。
「君の選択が、この村だけでなく世界全体を左右することを忘れるな」
デミウルゴスはヘルメディオスの背中を見送りながら、肩をすくめた。
「選択って……俺が選んでるんじゃなくて、勝手に巻き込まれてるだけなんだよな」
だが、その目はどこかいつもより鋭さを帯びていた。
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