第7話:災厄の蛇と予兆の夜
ノクスの警告から一夜明けた朝、デミウルゴスは村を見下ろす丘の上で深いため息をついていた。
「災厄の蛇、ねえ……あいつが動き出すのか。封じたはずなんだけどなぁ」
肩に止まったノクスが鋭い声で応える。
「あなたが封印した時点で、その力は完全には封じられていませんでした。時間の経過とともに、再び力を取り戻したのです」
「俺の適当さが災いしてるだけじゃん……」
自嘲気味に笑うデミウルゴスだが、ノクスはさらに事態を悪化させる事実を告げる。
「さらに厄介なことに、天界の干渉も止まっているため、あなたが行動を起こさなければ、誰もこの災厄を止められません」
「……じゃあ行くしかないな。あんまり乗り気じゃないけど」
彼はゆっくりと立ち上がり、災厄の蛇が封じられたという場所に向かう準備を始めた。
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村で広がる不穏な空気
デミウルゴスが村へ戻ると、広場に異様な空気が漂っていた。村人たちの顔はみな不安と緊張で曇り、一部の人々は怯えた表情で空を見上げている。
「どうしたんだ?」
デミウルゴスが尋ねると、リックが険しい顔で答えた。
「朝から奇妙なことが起きているんだ。動物たちが村を避けるようになったり、井戸の水が濁り始めたり……何かが近づいている気配がする」
(やっぱり蛇の影響か……)
デミウルゴスは心の中で確信しながら、軽くため息をつく。
「まあ、俺に任せておけ。その原因、すぐに取り除いてやるよ」
だが、その言葉にリックは鋭い目を向けた。
「またお前が原因なんじゃないだろうな?」
「さあな。ただ、俺が片付けないとお前らどうにもできないだろ?」
挑発するような口調で返すデミウルゴスに、リックは何も言い返さなかった。
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封印の場所へ
災厄の蛇が封じられているのは、村の外れにある深い森の中だ。デミウルゴスはノクスを肩に乗せ、その森へと足を踏み入れた。
「この辺りだったよな。確か適当に封印した記憶があるけど……」
ノクスが翼を広げ、森の奥を指し示す。
「封印の魔力が弱まり、蛇の気配が漏れ出しています。このまま放置すれば完全に覚醒します」
やがて、デミウルゴスは大きな岩で塞がれた洞窟の前に辿り着いた。その岩には古い魔法陣が描かれており、光を失ったかのようにぼんやりとした痕跡だけが残っている。
「いやあ、こんな状態でよく持った方だよな……俺の手抜き封印が」
デミウルゴスが近づくと、突然、岩が震え始めた。そして洞窟の奥から、低く不気味な声が響く。
「……デミウルゴス……ついに戻ってきたか……」
洞窟内から巨大な蛇の影がゆっくりと現れた。体長は数十メートルにも及び、その目は赤く燃え上がるように光っている。
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災厄の蛇との対峙
「やあ、久しぶりだな。まだ怒ってるか?」
デミウルゴスは軽い口調で話しかけたが、蛇は低い唸り声を上げ、毒々しい声で応じた。
「我を封じた報いを、今ここで受けるがよい!」
蛇が口を開くと、毒の霧が森全体に広がっていく。デミウルゴスは咄嗟に魔力で結界を張り、その毒を防いだ。
「やれやれ、力を取り戻したお前には少し本気を出さないといけなさそうだな」
デミウルゴスは両手を広げ、空気中の魔力を集め始めた。その動きを見たノクスが警告を発する。
「注意してください。この蛇はあなたの魔力を吸収し、自身の力に変える性質があります!」
「……それ、もっと早く言えよ」
彼はため息をつきながら、戦術を変えることを決めた。
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計略と罠
デミウルゴスは洞窟の地面に新たな魔法陣を描き始めた。これは、蛇の力を逆に封じ込めるための罠だ。
「おい蛇、こっちに来いよ。遊んでやるからさ」
挑発に乗った蛇は巨大な体をうねらせながら突進してくる。その動きで森の木々がなぎ倒され、地面が揺れる。
「あとちょっと……よし!」
蛇が魔法陣の中心に来た瞬間、デミウルゴスは魔力を解放した。魔法陣が光を放ち、蛇の体を拘束するような鎖が現れる。
「貴様、また我を封じる気か!」
蛇が暴れようとするが、魔法陣の力でその動きを止められた。
「二度目はないぞ。今度はお前の力を完全に消してやる」
デミウルゴスは最後の一撃として魔力を集中させ、蛇の存在そのものを消し去る術を発動した。眩い光が洞窟内を満たし、蛇の姿はゆっくりと消え去った。
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村へ戻るデミウルゴス
村に戻ったデミウルゴスを待っていたのは、心配そうに見つめる村人たちだった。
「どうだったんだ?」
リックが尋ねると、デミウルゴスは肩をすくめながら答えた。
「問題ない。災厄はもう片付けたよ」
それを聞いた村人たちは安堵の表情を浮かべたが、デミウルゴスは内心でまた新たな問題が起きる予感を感じていた。
(これで終わりなわけがない。天界の連中が黙ってるとは思えないしな……)
彼はノクスの言葉を思い出しながら、静かに夜空を見上げた。
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