第30話:創造主の本気
試練の空間での戦いが終わり、デミウルゴスたちは再び静寂に包まれた異空間に立っていた。消えた影たちの名残はなく、ただ不気味な闇が広がっている。
「……終わったのか?」
リックが息を整えながら周囲を見回す。
「いや……まだ何か感じる」
ゼルクスが剣を構えたまま慎重に辺りを見渡す。
「確かに、試練が終わったって感じがしません……まだ、何かが……」
アリシアが魔力を研ぎ澄ませながら呟いた。
すると、空間全体が低く振動し、再びあの“声”が響いた。
「ふふ……さすがですね」
「おいおい、まだ続くのかよ」
デミウルゴスは面倒くさそうにため息をついた。
「影を退けたからといって、試練を乗り越えたわけではありません。これはあくまで“序章”……本番は、これからですよ」
その言葉と同時に、空間が歪み始めた。
「っ……これは……!」
ノクスが目を細める。
闇の奥から、巨大な何かが姿を現した。
それは――デミウルゴスの姿をした“巨人”だった。
「へぇ……今度はでっかい俺か」
デミウルゴスが苦笑する。
「さっきの影とは違う……こいつ、ただのコピーじゃないぞ」
ゼルクスが警戒を強める。
「まるで、この空間そのものが実体を持ったみたいな気配です」
アリシアが怯えながら呟く。
「さて、創造主よ。今度こそ、お前の力を見せてもらいましょう」
巨人のデミウルゴスが口を開いた瞬間、巨大な魔力の波動が放たれた。
「っ……!!」
リックたちは思わず後退する。
「おいおい、いきなり全力か?」
デミウルゴスは冷静に一歩踏み出した。
「どうする、デミウルゴス?」
ゼルクスが問いかける。
「んー……まあ、適当にやるか」
そう言うと、デミウルゴスはゆっくりと手を上げた。
「――お前の本気を見せろ」
巨人のデミウルゴスが叫ぶと同時に、闇が渦巻き、無数の魔法陣が出現した。
「っ……こいつ、いくぞ!」
リックが構える。
「ええ……全力でいきましょう!」
アリシアが魔力を込める。
「……仕方ない、やるか」
ゼルクスも剣を握りしめた。
だが、デミウルゴスは相変わらず気だるそうに立っているだけだった。
「ねぇ、お前さ」
彼は軽く指を鳴らした。
「……?」
次の瞬間、巨人のデミウルゴスの動きが止まった。
「な、なんだ?」
リックが驚きの声を上げる。
「お前、強すぎるって言われたことないか?」
デミウルゴスの指先から放たれた微かな光が、巨人の体を蝕み始める。
「これは……?」
ゼルクスが目を細める。
「ただの“修正”さ」
デミウルゴスは淡々と答えた。
「……なに?」
「俺が作った世界で、俺と同じ存在が勝手に動いてるんだ。それって、ちょっと不具合だろ?」
「……っ!!」
巨人のデミウルゴスの体が次第に崩れ始める。
「お前……まさか……!」
「悪いけどさ、俺の世界では、俺以外の“創造主”は存在しないんだわ」
デミウルゴスが再び指を鳴らすと、巨人は完全に光となって消え去った。
「……終わった?」
アリシアが呆然とつぶやく。
「お、おい……今の、なんだったんだよ……?」
リックがデミウルゴスを見つめる。
「ただのシステムエラーの修正だよ」
デミウルゴスは肩をすくめた。
「……はぁ……お前、やっぱりすげぇな」
リックが苦笑する。
「まあな。でも、面倒くさいから、できるだけ戦いたくないんだよなぁ」
「そう言いつつ、一瞬で終わらせたのはお前だろうが」
ゼルクスがため息をついた。
「これで試練は終わったんでしょうか?」
アリシアが慎重に周囲を見渡す。
すると、空間が再び揺れた。
「ふふ……なるほど。確かに、お前は“創造主”にふさわしい」
あの声が、満足そうに響いた。
「……試練は、これにて終了です」
次の瞬間、空間が光に包まれ――デミウルゴスたちは、元の世界へと戻った。
試練の果てに
気がつくと、彼らは町の広場に立っていた。
「……戻った?」
リックが辺りを見回す。
「ええ、試練は本当に終わったみたいですね」
アリシアが安堵の表情を浮かべる。
「ふぅ……やれやれ、疲れたぜ」
ゼルクスが剣を収めた。
デミウルゴスは大きく伸びをして、あくびを噛み殺す。
「さーて、試練も終わったことだし――のんびり暮らしますかね」
「お前……ホントにやる気ねぇな!」
リックが思わず叫ぶ。
「まぁまぁ、いいじゃないですか」
アリシアが苦笑する。
デミウルゴスは軽く笑いながら、青空を見上げた。
彼の旅はまだ続く――。




