第27話:奇妙な町
デミウルゴスたちは塔を後にし、近くの町へと向かっていた。ノクスが感じた「奇妙な魔力」が何なのか気になったが、ひとまず休息が最優先だった。
町の門が見えてくると、リックが腕を組みながら言う。
「なんだか普通の町に見えるけどな。本当に変な魔力なんてあるのか?」
「見た目は普通でも、何かが隠されている可能性がある。警戒は怠るな」
ゼルクスが鋭い目つきで周囲を見渡す。
アリシアが少し不安そうに言った。
「でも、普通に人も歩いていますし、何も問題なさそうに見えますね」
「それが一番怖いんだよな。見た目に騙されるなよ」
ノクスが低い声で忠告する。
デミウルゴスは軽く伸びをしながら言う。
「まあ、何かあったらそのとき考えようぜ。とりあえず、飯と宿を探そう。俺は腹が減った」
「お前、本当に緊張感ねえな……」
リックが呆れたようにため息をついた。
町の門をくぐると、そこには活気ある市場が広がっていた。人々が行き交い、屋台からは美味しそうな匂いが漂ってくる。
「おお、これはいいな!肉の串焼きもあるし、果物も新鮮そうだ!」
リックが目を輝かせながら屋台を見回る。
「わあ……!すごく美味しそう……」
アリシアも嬉しそうに屋台の果物を見つめていた。
デミウルゴスはニヤリと笑って言う。
「いいねえ。せっかくだし、何か食うか?」
「俺は肉串をもらう!」
リックが早速屋台の親父に注文をした。
「私はフルーツジュースを……!」
アリシアも嬉しそうに飲み物を頼む。
ゼルクスとノクスは辺りを警戒しながら立っていたが、デミウルゴスが二人を見て言う。
「お前らも少しは気を抜けよ。こういうときに休んどかないと、疲れるぞ?」
ゼルクスは少し考えた後、頷いた。
「……では、軽く何かいただくとしよう」
「私も、何か飲みましょうか」
ノクスも渋々ながら飲み物を手に取る。
一行が食事を楽しんでいると、突然、周囲の空気が変わった。市場にいた人々が一斉に静かになり、こちらをじっと見つめている。
「……なんだ?」
リックが串焼きを口に運ぼうとした手を止める。
アリシアも不安そうに辺りを見回し、小声で言った。
「みんな、何か様子がおかしいです……」
ゼルクスが低い声で言う。
「ノクスが感じた“奇妙な魔力”と関係があるかもしれないな」
ノクスが静かに頷いた。
「この町全体に魔力の膜のようなものが張られている……まるで、結界の中にいるような感覚です」
デミウルゴスは飲みかけのジュースを置きながら呟いた。
「なるほどな……そういうことか」
「そういうことって、どういうことだよ?」
リックが戸惑いながら尋ねる。
デミウルゴスは周囲を見渡しながら言った。
「この町、何者かに支配されてるな」
「支配……?」
アリシアが息を呑む。
「たぶん、ここの住民たちは“見張られてる”んだろう。何かしらの力でな」
デミウルゴスは周囲の人々の表情をじっくりと観察する。
すると、突然、一人の男が慌てた様子でこちらに駆け寄ってきた。
「お、お客さん……!早く、ここから出てください……!」
「……どういうことだ?」
ゼルクスが鋭い視線を向ける。
「ここは……“目”に見られているんです……!あなたたちがここにいることがバレたら、大変なことになる……!」
男は恐怖に満ちた目でそう告げた。
「“目”……?」
ノクスが小さく反芻する。
「おいおい、ますます怪しくなってきたな」
リックが剣を腰に手を当てながら言った。
デミウルゴスは少し考え込んだ後、男に尋ねた。
「“目”ってのは何なんだ?具体的に説明してくれ」
男は一瞬躊躇したが、やがて震える声で答えた。
「……“監視者”です。この町のすべてを見ている存在……逆らった者は、誰も戻ってこない……」
「へぇ……面白いじゃねえか」
デミウルゴスは不敵に笑った。
「おいおい、なんでそんな余裕なんだよ!?」
リックが焦ったように言うが、デミウルゴスは肩をすくめて言った。
「だってさ、そんな奴がいるなら、ちょっと挨拶してみたくなるだろ?」
ゼルクスが腕を組みながら言った。
「案の定、ただの町ではなかったというわけか。ここに留まるのは危険かもしれないが……情報を得るには良い機会でもあるな」
「そうだな。せっかくの“歓迎”だ、楽しまないと損だろ?」
デミウルゴスはニヤリと笑い、町の奥へと歩き出した。
「お、おい!ちょっと待てって!」
リックが慌てて後を追う。
「もう……!本当に無茶ばかりするんだから!」
アリシアもため息をつきながらついていく。
ノクスが静かに呟いた。
「“目”……これは、ただの旅では済まなそうですね」
こうして、一行は町の奥へと進み、不可解な謎へと足を踏み入れていった。




