第18話:山岳地帯の試練
北の山岳地帯に足を踏み入れたデミウルゴスたち一行は、吹きつける冷たい風の中で険しい岩道を登っていた。
「この寒さ、本当にたまらんね……俺のような神格にはちょっと厳しすぎる環境だよ」デミウルゴスは震えながら愚痴を漏らした。
「神様なのに寒さがダメなんですか?」
アリシアが驚いて尋ねると、デミウルゴスは苦笑した。「いや、天界はぬくぬくしてるからな。こういう極端な環境は慣れてないんだよ」
リックがため息をつきながら前を進む。
「それにしても、この山のどこにローブの男たちの痕跡があるんだ?こんな場所に何か隠れてるようには見えないけどな」
ゼルクスが冷静に答える。
「この山の頂上付近に古代の遺跡がある。その場所に彼らの魔力の痕跡が残っているのを確認している」
「遺跡か……なんでまたそんな高いところに隠すんだよ」
デミウルゴスは頭を掻きながらぼやいた。
「下に置いとけばいいのにな。上るのが面倒だろうに」
ノクスが肩に止まり、鋭い声で指摘した。
「主様、それが彼らの意図でしょう。このような場所ならば、侵入者を寄せ付けにくいですから」
「確かに。それにしても、あいつらも面倒くさい性格だな」
道中、突然岩肌が揺れ、足元の地面が崩れ始めた。リックが叫ぶ。
「おい!なんだこの揺れは!」
「待て、これは自然現象じゃない……」
デミウルゴスが辺りを見回すと、岩の裂け目から何かが蠢き始めた。それは巨大な岩の塊でできたゴーレムだった。
アリシアが弓を構えて驚く。
「あんな大きなゴーレム、どうやって倒せばいいんですか!」
ゼルクスが冷静に状況を分析する。
「あのゴーレムは山のエネルギーで動いている。つまり、周囲の岩肌そのものが力の源だ。直接攻撃では倒せない」
「じゃあ、どうする?」
リックが剣を構えながら聞くと、デミウルゴスが軽く笑った。
「簡単だ。エネルギーの供給を断てばいいだけだろ」
「簡単って……どうするんですか!」
アリシアが焦る中、デミウルゴスは地面に手を当て、魔法陣を描き始めた。
「お前らはゴーレムの注意を引け。俺が周囲の魔力を遮断する」
リックは剣を振りかざしながら叫ぶ。
「分かった!アリシア、援護しろ!」
アリシアは矢を放ち、ゴーレムの目のような部分を狙った。それが効いたのか、ゴーレムは視線を二人に向け、巨体を揺らしながら追いかけてきた。
「よし、そのまま引きつけてろ!」
デミウルゴスが魔力を集中させ、地面全体に輝く光が広がった。
「これで周囲の魔力供給を止める!」
光がゴーレムの体を包み込むと、動きが次第に鈍くなり、やがて完全に停止した。その巨体は崩れ落ち、ただの岩の塊に戻った。
「やったか?」
リックが剣を下ろして息をつくと、デミウルゴスは肩を回しながら言った。
「まあな。意外と簡単だったな」
ゼルクスが静かに言った。
「これで終わりではないだろう。山頂の遺跡には、もっと厄介な仕掛けが待っているはずだ」
「そりゃそうだろうな。面倒な奴らは最後まで面倒なことを仕掛けてくるもんだ」
デミウルゴスはため息をつきながら先を指さした。
「さっさと終わらせようぜ。この山を降りたら、俺は休みたいんだからな」
ノクスが上空を飛びながら報告する。
「主様、この先に強力な魔力の反応があります。遺跡の入り口はもうすぐのようです」
「分かった。じゃあ、次はどんな罠が待ってるのか見に行こうじゃないか」
デミウルゴスは笑みを浮かべながら先へ進んだ。