第15話:荒野の咆哮
新たな脅威の気配
森での戦いを終えたデミウルゴスたちは、次の目的地である東の荒野を目指していた。そこは、かつてデミウルゴスが「制御不能」と判断して封印した巨大な魔物が眠る場所だ。
「荒野の魔物……確か、『ベリオス』だったよな」
デミウルゴスが記憶を辿りながら呟く。
「ベリオスって何ですか?」
アリシアが不安そうに尋ねると、デミウルゴスは少し考えてから答えた。
「簡単に言えば、暴走する破壊神みたいなもんだ。元々は自然の守護者として作ったんだけど、力が強すぎて手が付けられなくなったんだよな」
「……それを封印したまま放置してたのかよ」
リックが呆れた声を漏らすが、デミウルゴスは肩をすくめる。
「仕方ないだろ。当時は他にも問題が山積みだったんだからさ」
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荒野への到着
一行が荒野に足を踏み入れると、そこは不気味なほど静かで、草一本生えていなかった。赤黒い大地が広がり、遠くには岩山が連なっている。
「ここ、本当に生き物がいるのか?」
リックが周囲を見回しながら尋ねると、ノクスが鋭い声で答えた。
「魔物の気配が濃厚です。かなり近い場所に封印があるようです」
デミウルゴスは目を細めて大地を見つめる。
「封印が……弱まってるな。あと少しで完全に解けるぞ」
その瞬間、大地が震え始めた。地面が裂け、巨大な魔物が姿を現す。
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ベリオスの目覚め
ベリオスは、岩と炎でできたような巨大な獣だった。その目は赤く輝き、口からは溶岩のような炎が滴り落ちている。
「これが……ベリオス?」
アリシアが怯えた声で呟く中、ベリオスが咆哮を上げた。その音だけで地面が割れ、周囲の空気が歪むほどの衝撃が広がる。
「さすがにでかいな。手加減して封印したのが間違いだったかもな」
デミウルゴスは軽口を叩きながら、魔法陣を展開する準備を始めた。
「手加減って、どうする気だよ!?」
リックが叫ぶと、デミウルゴスは平然と答えた。
「まあ、もう一回封印するか、暴れさせない程度に大人しくさせるだけだよ」
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戦闘開始
ベリオスが火炎を吐き出し、一行に向けて攻撃を仕掛けてきた。リックは盾を構えて火炎を防ぎ、アリシアが弓矢でベリオスの目を狙う。
「狙いがいいな、アリシア。でも、あいつには効かないぞ」
デミウルゴスが魔法で火炎をかき消しながら、淡々と言った。
「じゃあ、どうすればいいんだ!?」
リックが怒鳴ると、デミウルゴスは小さく笑った。
「ベリオスは大地のエネルギーを吸収して動いてる。つまり、大地との接続を断てば力を失うんだよ」
デミウルゴスは地面に巨大な魔法陣を描き始めた。
「お前ら、あいつの注意を引いてくれ。少しだけ時間が必要だ」
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ベリオスを足止め
リックとアリシアは協力してベリオスの動きを封じるために奔走した。リックが巨体の足元を狙い、アリシアが炎を避けながら矢を放つ。
「全然効いてる感じがしない!」
アリシアが焦る中、ノクスが上空から指示を飛ばす。
「ベリオスの足元を攻撃して転倒させるのです!」
リックが渾身の力で剣を振り下ろし、ベリオスの足に一撃を与える。その瞬間、巨体がぐらつき、大地が揺れた。
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封印の発動
その隙に、デミウルゴスが完成させた魔法陣を起動させた。大地全体に青白い光が広がり、ベリオスの動きが次第に鈍くなる。
「よし、これで大地との繋がりを断った。あとは封印するだけだ」
デミウルゴスはさらに力を注ぎ込み、魔法陣を完全に起動させた。ベリオスの体が光に包まれ、その巨体が徐々に地面へと吸い込まれていく。
「これで終わりだ。大人しく眠ってろよ、ベリオス」
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予期せぬ同盟者
ベリオスの封印が完了した瞬間、遠くから拍手が聞こえてきた。一行が振り返ると、そこには見知らぬ人物が立っていた。
その人物は、黒いローブではなく銀色の鎧を身にまとい、鋭い目でデミウルゴスたちを見つめていた。
「見事だな、創造主よ」
「……誰だお前?」
デミウルゴスが警戒しながら尋ねると、人物はゆっくりと頭を下げた。
「私の名はゼルクス。この世界の秩序を守るために動いている者だ。君たちと目的は同じだと思っていい」
「秩序ねえ……どうしてそんな奴がここにいるんだ?」
ゼルクスは静かに答えた。
「ローブの男――この世界を混乱に陥れようとしている者を追っている。もしよければ力を貸そう」