第二話 詐欺師(勇者)、魔王討伐の旅へ
職業『詐欺師』の俺が、まさか本当に勇者として魔王討伐の旅に出ることになるとは誰が予想しただろうか。というか俺自体、こんなことになるとは思っていなかった。たくさんの彼女と地位を得るために、偽勇者になった俺が本当に勇者として旅をするなんて。
故郷の街を後にし、俺は次の目的地へと向かっていた。街へ出るとき、いろいろな住民から金や食べ物などの生活必需品を貰った。何より位の高い、貴族の人間が俺のために防具を一式買ってくれたのだ。今の服装からしたら、本当に勇者っぽく見える。あくまで外見だけだけどな。
俺の目指すところは、この先にある『黒森の洞窟』というダンジョンだ。住民から聞くには、初級者から上級者が挑む、簡単なダンジョンらしい。最下層は段違いに難しいらしく、上級者はそこに挑みに来るらしい。別に挑まなければならないということではないが、ある理由でそのダンジョンに行かなければならないのだ。
住民からもらった地図を頼りにして『黒森の洞窟』を目指して、山道を歩いていると、小さな村にたどり着いた。
「こんなところに村があるのか。かなり小さいから地図にも乗ってないな」
そこは、人が十五人、住めるか住めないかぐらい、小さな村だった。
「ここに寄ったら、何か情報がもらえるかもしれないし、食べ物もできればほしいな」
そう考えて村へ入ると、住民はいなかった。いや、いなかったというよりかは皆、外へ出ていなかった。家の中にひきこもっていたのだ。俺は不思議に思い、近くの家へ行き、話しかけた。
「こんな時にどうかされましたか? あまり見ない顔ですが.... 」
「ちょっと聞きたいことがあってな。昼なのに全然人が外へ出てこない。一体この村に何が起きているんだ?」
「実は最近、村の近くの森に魔物が出現し、村人たちを襲っているのです。私たちには対抗する術がなく、助けを求めることもできずに困っておるのですよ」
なるほど、だからみんな家にこもっているのか。こういう時に俺の職業が活躍するってわけか。普通に、助けたいが、本業詐欺師である俺が魔物を討伐できるかわからない。だが、本物の勇者になると覚悟した俺は、この村を見捨てるわけにはいかない。
「わかった。なら、この俺がこの村を救って見せよう」
「それはありがたいのですが、お一人では危険なのでは?」
「大丈夫だ。この勇者の名に懸けて、魔物を退治しよう!!」
俺はわざとらしく、勇者の剣を見せる。すると長老は今にも叫びそうな顔をしてこう言った。
「ま、まさか!? 本当に勇者様が復活したのですね!! 噂では聞いていたのですが」
噂だと!?もうこんなところまで広まっているのか.... 恐ろしいものだ。
俺は、内心の動揺を隠しつつ、勇者の振る舞いを続けた。長老は歓喜のあまり、号泣していた。そんなに感動することかね......
どうやら魔物は夜になると、作物などを荒らしに来るらしい。たまに、昼にも行動するらしいから、住民はずっと家の中にいるとのことだ。
俺は長老の部屋で泊まらせてもらい、夜が来るのを待った。
◆◇◆
辺りはもう、闇に包まれ、いつ魔物が出てもおかしくない状況になった。
「あ! あれです!! あれが魔物です!!!!」
長老がそう言って指を指した先を見る。すると、そこには狼のような魔物が三体いた。
「あの~。勇者に向かって大変失礼なのですが、、、、勝てますかね?」
「心配ありがとう。大丈夫だ」
こんなこと言ってるけど、勝てるのかどうかわからない。でも実際この前の魔物は簡単に斬られていた
から、自信はある。
俺は剣を握りしめ、魔物へ近寄っていく。狼のような魔物は、荒々しい咆哮を上げ、俺に向かって突進してきた。
「くそっ!」
俺は瞬時に身を翻し、狼の攻撃をかわした。その巨体が地面に衝突し、土埃が舞い上がる。狼は再び立ち上がり、俺に向かってくる。
「これで終わりだ!!」
俺はオーガの懐に飛び込み、剣を振り下ろした。剣はオーガの肉体を切り裂き、悲鳴を上げながら倒れ
込んだ。
「まずは、一体目完了」
続く二体も、先ほどの一匹目と同じように、相手の突進を避けながら、懐へ入り剣を振り下ろした。
俺は息を整えながら、倒れたオーガを見下ろした。
「ほ、本当に倒してくれたのですね!! ありがとうございます勇者様!!」
いや~。照れるなぁ~。と思っていると....
「「勇者レベルが4アップしました。スキル 溜め斬りを獲得しました。消費魔力は5です」」
頭の中で謎の声が聞こえる。
「ん? なんだ? レベルアップって?? 魔力?」
「レベルアップとは、職業を持った場合、功績が上がるにつれ、レベルアップをしていくのですよ。冒
険者の職業なら5レベルアップごとにスキルか、身体強化が得られます。魔力とは、技を発動するときに使う力です。これが0になってしまったら、技が使えなくなります。勇者様のことだから知っているとは思いますが」
「あ、ああ。もちろん知っていたぞ」
へぇ~。そうなのか。じゃあ俺はレベルアップしたから、さらに強くなったってことか。ってことは、この前の村で倒した敵は弱すぎてレベルアップすらしなかったのか。これ以上強くなるって、本当に俺、魔王討伐できるんじゃね??
◆◇◆
朝になると、村人たちが歓声を上げて迎えてくれた。長老は俺の手を握り、感謝の言葉を述べた。
「勇者様、本当にありがとうございました。これで村は再び平和を取り戻すことができます。」
俺は微笑んで答えた。
「大したことじゃない。これからも困ったことがあれば、いつでも呼んでくれ。」
村人たちは俺を歓待し、宴を開いてくれた。俺はその夜、久しぶりに安心して眠りについた。自分が詐欺師であることを忘れ、少しだけ本物の勇者になったような気がした。
次回、ダンジョン攻略です!!
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