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第一話 嘘から始まる冒険

 これで俺も下人卒業。この街では、俺は勇者として拝められ、俺の生活は一変した。だが、何もかもが上手く行くわけではなかった。勇者としての期待が、俺の肩に重くのしかかってくるのだ。


 「魔王が復活と聞きました、勇者様の力で退治してください!」


 「この剣を使って早く魔王を倒してください!」


 街の人々が次々と俺に依頼を持ちかけてくる。俺は笑顔で応じるふりをしていたが、内心では焦っていた。


 こんなに依頼を貰ってもさ、俺、詐欺師だよ? 多分、一番嫌われてる職業ランキング一位だよ? そんな俺が魔物を討伐? 一般人にも負ける気しかしない俺が魔王討伐? このまま旅へ出て魔王どころか、そこらにいるスライムに速攻ヤラれてしまったら、嘘の勇者とバレてしまう。っていうか多分死ぬ。まずは、どうやってこの状況を切り抜けるのか、俺は考え続けていた。


 考え続けること三日間....


 俺は、考えた。別に俺が魔物を倒さなくてもいいのだ。というか一人で旅に出ることがおかしい。まずは仲間を集めて、魔物退治は仲間たちにやらせる。完全にクズキャラが考える答えだな。まあ、これが俺にとってのベストアンサーだがな。これで状況を切り抜けることができだが、もう一つ面倒くさいことがある。


 今日は一ヶ月に一回、街の中心部にある広場で宴会をする日だ。え? なぜ面倒くさいかって? それは今日、俺がスピーチをするからだ。勇者として、魔王討伐の意気込みをスピーチをしなければならないらしい。


 できるだけ、詐欺師とバレないようにしないとな。俺が演台へ向かうと、俺に向かって人々が期待と歓声を送ってくれていた。俺はその中心に立ち、勇者らしい態度を取ることに努めた。


 「皆さん、心配しないでください! このカイ・ワイアットが必ずや魔物を退治し、この街を守ります!」


  歓声が一段と大きくなる。だが、俺は心の中で冷や汗をかいていた。本当に魔物を倒せるのか? そもそも、強い仲間が見つかるのか? 考えれば考える程、問題が出てくる。俺はとにかく、問題は頭の隅に置いて、その後も俺はスピーチを続けた。そろそろ終わらせようとしたその時、俺の前に一人の少女が現れた。


 「勇者様、私の村が魔物に襲われています!どうか助けてください!」


 彼女は、泥だらけで、手足には痛々しい傷跡が残っていた。そして、顔を流れる大量の涙。俺は胸が痛んだ。彼女を無視することはできない。だがどうすればいいのか、全く分からなかった。それでも今は行動をしなければ....!!


 「もちろん助けます。すぐに行きましょう。」


 あぁぁぁ~!!!! 言ってしまったぁぁぁ!! これはもう後戻りできないないぞ。これでもし、やられてしまったらどうしよう。下人生活に後戻りどころか、この世界にいれるかどうかも分からない。しかし、少女の顔を見ると、とても期待に満ちた顔をしていた。もうこれは戦うしかないな......


 俺は勇者の剣を握りしめ、少女の案内で彼女の村へ向かうことにした。


 村へ向かう道中、少女は魔物の恐怖について話し続けた。俺はその話を聞きながら思った。もう帰りたい.... 怖すぎるだろさすがに。痛めつけた人間の四肢をちぎって食い殺すだと? そんなこと聞いてないぞ? そんなことを思いながら歩いていると村についてしまった。


 村に着くと、そこはまさに地獄のような光景だった。家々は破壊され、人々は恐怖に怯えていた。村人たちは俺を見つけると、すがるように声をかけてきた。


 「おぉぉ!! どうか私の娘だけでも助けてやってください!!」


 その声の後ろには魔物がいた。俺、こんなバケモンと戦うん??


 「何が勇者だ!! これでお前も終わりだぁぁ!!」


 「ヤ、ヤベぇ!!」


  俺はとっさに、勇者の剣を振りかざし、魔物に向かって突進した。剣が光を放ち、魔物に向かって一直線に突き進んだ。魔物は鋭い爪を振りかざして俺に向かってきたが、その瞬間、剣の光が一層強く輝き、魔物を包み込んだ。


 「ギャアァアア!」


 魔物は痛みと怒りの声を上げ灰となり、消えていった。しかし、消えていったのはそれだけではない。 斬った方向へ地面が割れていた。


 さすがにチートじゃね? 勇者の剣ってこんなすごいのか。これなら、仲間もいらない説が浮上してきたぞ。こんなに強くてカッコいい(自称)なら、何人でも彼女を作れる気がするわ。


 これなら本当に魔王を討伐できるのでは?? と思っていると、


 「勇者様!本当に魔物を倒してくださったんですね!」


 「これで村は救われました!ありがとうございます!」


  村人たちは俺にお礼を言ってくれた。いや~、照れるな~~。人生で初めて、まともなお礼を言われた気がする。


 村を救ったことで、俺の名声はますます高まった。人々は俺を本物の勇者として崇めるようになり、街の中でも特別な扱いを受けるようになった。だが、その裏では、俺自身の不安と疑念がますます大きくなっていた。


 俺は、考えた。旅をしないで、この街で魔物討伐をして静かに裕福な暮らしをすれば良いのでは? これも完全にクズキャラ発言だが、勇者になって魔物に殺されるのも嫌だしな。俺は街へ戻り、ふらふらと、何もすることがなく、道を歩いていると、


 「勇者様はこれからどうするおつもりですか?」


 えっと、コイツは確かこの前、俺に剣を見せてくれとか言って俺が勇者の事を広めた奴か。


 「まだ決まってはないな」


 「勇者様は世界でたった一人。魔王を討てるのは勇者様ただ一人です。どうか、私たちをこの世界から救ってください!!」


 いやいや、俺に頼まなくても他の人に頼めば......いや、待てよ。勇者は世界で一人だろ? ってことは、俺以外、勇者はいないじゃねえか!! つまり、魔王を倒すことができる人物は俺だけということになる。もう選択肢は一つしかない.....


 本物の勇者となって、絶対に平和な世の中にする。


 はっきり言って本当の勇者にはなりたくない。いつ死ぬかも分からない職業になんか就きたくはなかった。だが、こんなところで俺は旅なんかせずにこの街へ残ります!! なんて言ったら批判の嵐だ。俺は、心の中で決心した。


 およそ1か月後、俺は宴会で再び人々に向かって話した。


 「皆さん、私は魔王を討伐するためにこの街から出ることを決意します。仲間を集め、魔王の情報を得るためにも、私はこの街を離れて世界を巡ります」


 人々は一瞬驚いたが、すぐに賛同の声が上がった。


 「勇者様、どうかお気をつけて!」


 「私たちはあなたを信じています!」


 「必ず帰ってきてください!」


 俺は人々の声援を受けながら、旅立つ準備を始めた。はっきり言って不安だらけだ。良い仲間が集まるのか、ましてや仲間すら集められない可能性だってある。でも、街の人の信頼を裏切りたくはないしな。俺は、明日の出発の日に向けて早めに就寝した。


 出発の日、俺は街の門の前に立ち、背中に勇者の剣を背負いながら深呼吸をした。これからの旅がどのようなものになるのか分からないが、俺は覚悟を決めた。

 

               

           魔王を討伐して、平和な世の中にすると......


第一話、楽しめていただけたでしょうか? 次回は『スキル』初登場回です!!

もしこの作品をもっと読みたい!! と思った方は、ブックマークと下にある☆☆☆☆☆をお願いします。モチベーションがアップして、執筆も早くなるのでお願いします。


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