序章 詐欺師の俺が世界を救う!?
勇者、それはこの世界なら誰もが憧れる職業だ。
戦士、魔法使い、盗賊、僧侶、商人、鍛冶屋、洗濯屋、宣教師など、数え切れないほどの職業が存在する中で、勇者はとてつもない人気を誇っていた。
勇者という職業は、特別な資格を持つ者だけが就くことができた。その資格とは、伝説の勇者の剣を持つこと。
この剣を手にすることができるのは、たった一人だけ。選ばれし者だけが、その栄光を手にすることができるのだ。
こんなこと誰が予想していたか....
こんな俺が、、平凡以下の生活を送っていた俺が、、、、
勇者の剣を掴み取り、勇者になるなんて......
◆◇◆
『下人』として生きる俺、名前はカイ。カイ ワイアット。学歴も彼女もない俺の唯一の誇りは、自分で言うのもなんだけど、イケメンということ。
職業は詐欺師、金持ちそうな高齢者たちを騙し、金目の物を盗んで、金に換える。これが俺の職業だ。
下人とは、それは社会の底辺に生きる者たちの総称だ。簡単に言えば奴隷って感じだ。一般人に会えばボコボコにされることだって珍しくない。だから、俺たちはいわゆるスラムという場所で生活してきた。
そうやって、俺はひそひそと生きていた。そして、19歳の誕生日の2週間前、俺の人生を変える天機が訪れた。それは夜中に老人がうろついていたことがはじまりだった。
「ん? なんだ?? こんな夜に裏通りをうろつくなんて、自分から金を奪ってくださいと言ってるようなものじゃないか」
これはチャンス。俺は老人に近づき、声をかけた。
「どうかされましたか?」
「実はな、この手紙をこの場所に届けたいのだが、わからなくてな。困っているのじゃよ」
なんだ、手紙か。老人は手紙に書いてある住所を見せてくれた。どうやら、老人はこの家までの行き方が分からなかったらしく、近くの人に声をかけようとしていたらしい。ここで断ると色々と面倒くさいから......
「ここから近いですね。それなら、私が届けてあげますよ」
「良いのか!? それなら是非とも宜しく頼む。それと、お礼といってもなんだが」
「お礼?」
オォォ!! その言葉を発するのを待っていたぞ。
すると、老人は古びた剣を取り出して俺に与えてくれた。いやいや、手紙送るだけで、剣授かるってどういうこと??
っていうか、 金をくれるんじゃないんですか?? まあこの剣も金になりそうだからいっか。
試しに、俺は剣を鞘から抜き刀身を見る。その剣は一見普通の剣に見えたが、よく見ると不思議な光を放っていた。どこかで聞いたことがある。不思議な光を放つ、魔力がこもった剣のことを魔剣と良い、とても高価なものだと。
俺はその剣を受け取った。しかし、心の中では疑念が渦巻いていた。なぜ老人はこんな貴重なものを俺に譲るのか? まあこれで儲かるのなら良いだろう。とりあえず、いい子ぶって剣をもらうとするか。
「実はな、若いころに冒険者として生きていてな。この剣を心優しい人に譲りたいと思っていたのじゃよ。そんな時に君と出会った。君は知らない人の手紙を届けてくれると言った。儂は、そういう心優しい人に貰ってほしかったのじゃよ」
「私にこんな剣を....ありがとうございます」
「この手紙を渡してくることに感謝する。ではさらばじゃ」
そう言って老人は去っていった。老人には悪いが、俺はこの剣を売るといくら儲かるのか? という気持ちでいっぱいだった。
俺はさっそく、剣を背中に背負い買取屋へ向かった。できれば一ヶ月暮らせるぐらいの金が欲しいな。
俺が、ワクワクしながら買取屋へ向かっていると、周辺の人がザワつきはじめる。きっと下人が夜中の街中を歩いているからザワついているのだろう。それとも、やっぱり俺がイケメンだからか!?
しかし、彼らの視線は俺の背中に背負った剣に集中しているようだった。やっぱりこの剣ってかなり価値があるものなのだろう。やがて、一人の若者が近づいてきて、驚いた表情で言った。
「その剣、もしかして勇者の剣じゃないか?」
「は? 勇者の剣!?」
は? コイツ何言ってんの?? 俺は驚いて聞き返した。これが勇者の剣!? いやいや、見間違いにも程があるだろ。
「少し刃を見せてもらえないか?」
「あ、あぁ」
俺は刃を若者へ見せた。すると、
「間違いない! その剣は伝説の勇者が使っていたと言われる剣だ!! これでこの世界も平和になる!!!!」
街の人々が次々と集まり、口々に勇者の剣について話し始めた。どうやら、この剣はただの古びたとても高価剣ではなく、勇者の剣だったらしい。こんなことある??
いやいや、ちょっと待て。話が急すぎる。
は? どういうことだよ?
勇者の剣?
なんでそんなもんあの老人が持ってたんだ? でも確かに若い頃は冒険者だったみたいな事話してたしな。ってことはあの老人が勇者!? 俺はそんな凄い人から金目の物を奪おうとしていたのか......
っていうか、こんな古臭い剣が勇者の剣? もし、これが勇者の剣だとしたら、そんな貴重なものを俺が持っていていいのか? さすがにこの俺でも、勇者の剣は売れないぞ? いや、待て。もしここで、俺は勇者と言えば、俺の人生は下人を歩む人生じゃなくなるのでは....? 勇者人生として、優雅な人生を送れるのでは....?
「ということは、あなた様は......」
ここは、嘘をついてでも、自分が勇者ということを証明しなければ....!!
「そうだ。この俺こそが勇者の生まれ変わり。カイ ワイアットだ!!」
人々は歓声を上げ、俺を取り囲んだ。彼らの目には希望の光が宿り、まるで救世主が現れたかのようだった。俺はその視線に少し戸惑いながらも、自分の人生のために、下人から変わるために、彼女をたくさん作るために、ある一言を発した。
「この俺が、邪悪の魂、魔王を倒し平和な世の中にすることを誓おう!!」
この一言(嘘)が、俺が勇者(詐欺師)としての新たな人生の始まりだった。
序章、いかがでしたでしょうか?
そして、この小説を読んでくれた人へお願いです。
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