【第九話】異世界の常識
「……どうしたものか」
迷う、非常に迷う。
ギフトを一つ選べるとか急に言われてもな。
【・天賦の才・大賢者の卵・艶福家・性豪・統率者・限界突破・無限魔力・合成魔法・状態異常完全耐性・武具錬成・完全鑑定・完全解錠・超集中・異空間収納・ステータス完全隠蔽】
いや、ここはシンプルに【天賦の才】か。ダンジョンがどうとか言ってたし、恐らく敵と戦う事を共にする事になるのだろう。死なれると寝覚めが悪いしな。
それに出来るなら、生きたまま家族に会わせてやりたい。そうなると、必然的にこれだな。
━━━━━━━━━━━━━━
【ルクレティア・ウルフェンヌ】
レベル : 1
HP:12
MP:3
筋力:2
敏捷:2
耐久:2
精神:3
魔力:3
属性魔法
【白魔法 : G】
スキル
【天賦の才】
━━━━━━━━━━━━━━
これで良いか。正直良く分からないと言うのが実情ではあるが、ここで変に時間を使うのも、チャレンジが過ぎるのもどうかと思う。……待てよ。
「いや、拙いか」
「え!? そ、そんな……」
ギフトって事は俺のスキルが譲渡されたって話なのだろうか。念の為自身のスキルを確認するに、どうやら俺のスキルは失われていなかった。ふぅ焦らせるなよな。要するにコピーしてペーストって訳か。凄いな統率者。
「あ、あの……私……」
「悪い、今丁度契約が終わったよ」
「え!? あ、そうなのですね」
何を驚いているのか良く分からないが、ひとまずこれからの方策を練らなければ近日中に餓死だ。それだけはマズい。
「相談したいんだけど、良いか?」
「もも勿論です! 何をすれば良いでしょうか!」
「いやだから相談だって……、何脱ごうとしてるの?」
「え、あ、いや、勘違いでした」
何だ? 妙に前のめりだな。迫力が凄くて気圧されてしまう。というかイチイチ衣服に手を掛けないで欲しい。ただでさえさっきの下着姿が印象付いてるってのに。
「何のご相談でしょうか? 私に出来る事であれば良いのですが……」
この人は何がしたいんだ?
話を聞いて欲しいだけだっての。
「まず金が必要だ。それさえあれば寝床や装備、食料等全ての問題を解決する」
「はい、仰る通りでございます」
「金はどうやって手に入れれば良い?」
「大きく三通りあります。一つ目は労働ですが、即効性はありません。現状不向きでしょう」
「だな、二つ目を頼む」
「二つ目はクエストです、冒険者として登録し、クエストをクリアする事でその難易度に見合った報酬を受け取れます」
「成る程、三つ目は?」
「ダンジョン等の魔物出現率の高い場所でドロップ品を狙った狩りになります」
「ドロップ品ってのは魔石か?」
「はい、他にも稀に様々なアイテムがドロップするとの話です」
成る程。今手持ちにある魔石で考えてみるか。
「これだけあるんだが、どうだ?」
「魔石は色によってその価値が変わります。これはEとFの魔石にあたりますが、Fは沢山ありますね。統一してもよろしいですか?」
「任せるよ」
統一、と言うのが何か分からなかったが、ルクレティアの発言から察するに、どうやら魔石はそれぞれを持たず、一つに纏めて運ぶ物らしい。勉強になるな。
「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫で、紫に始まり赤に帰結します。それぞれの段階で輝きが変わり、紫の無発光から輝く紫まで、そうなるとやがて藍の姿へと変化します」
「これは藍の無発光だから低レベルの魔石だな」
「しかし、数がありますので」
「おぉ、こうなる訳か」
藍と藍を合わせると片方が只の石となり片方は僅かに発光する藍の魔石となった。これを9回繰り返す事で発光は増していき、やがて10回目を迎えた時、魔石は青色へと姿を変貌させる。面白いなこれ。
「青色の魔石の6段階目くらいか、これだとどれくらいの価値なんだ?」
「今売却すると、銀貨六枚程となります」
「宿の相場は?」
「一晩で安くとも銀貨十枚は必要かと」
「因みに銅貨は何枚あると銀貨に?」
「百枚です」
「なら銀貨百枚で金貨って事か?」
「仰る通りでございます」
ざっくり、銅貨一枚が一円くらいか?
銀貨十枚なら千円って所か。
で金貨一枚が一万円。
この魔石はまだ六百円そこそこ。
宿に泊まるには心許ないな。
「冒険者登録ってすぐ出来るのか?」
「今であれば問題無いかと」
「でクエストに成功して、報酬はすぐに貰える?」
「時間内であれば。日没と共にギルドは閉まりますので」
「成る程な」
という事は、最善を尽くすならー
「まず冒険者ギルドに登録、クエストを受注、そしてそれをこなしつつ魔石を集め、合計した金で何とかする。そんな所か?」
「かしこまりました、その様に致しましょう」
先立つ物が無いってのは中々に困ったものだ。この辺りも初期設定に含めて貰えば良かったなと今更になって小さく後悔した。