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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
五章 灼熱慟哭のダンジョン浅層と壊された女戦士
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【最終話】これからの生活

 件の一件が片付いた翌日、覚束無い足取りでフィオが彼らの家を後にする事から一日が始まった。


 未だ灼熱慟哭のダンジョンでの消耗が癒えない一行は、失った非常食や医療品、また破損した装備の修理等に追われる一日を過ごしていた。


 役割分担等はせず、彼らはルクレティア、リーシャン、ローメイ、そしてライリスを含めた五人全員で行動しており、その様子はちょっとした風格を見せ始めていた。ダンジョンへの試行回数を重ね、其々が個々に冒険者としての風格を纏い始めている彼らが全員で往来を歩く時、その外観上はベテラン冒険者の一団の様な雰囲気を醸し出しつつあった。


「装備の修理も無事になんとかなりそうで何よりだよ。私のせいで思い入れのある君たちの装備が損失してしまっていたのであれば、私はきっとそれを深く気にしていただろうからね」

「俺としては想像以上の消耗で、修理費どうこうよりも皆に被害が出る前に決着が着いてくれた事が何よりたよ。なんだこの激しい消耗具合は。今頃になって冷や汗が出る思いだ」

「それについては本当に申し訳ない。全て私の責任だ」

「悪かった、そういうつもりで言った訳じゃないんだ。それに関しては済んだ事さ」

「いいや良くない。君が望むならば今すぐに四つん這いとなり君の足として大地を駆ける所存だ。さぁ命じてくれ!!」

「命じるか馬鹿野郎。頭の中まで壊れたのか?」

「ふ、自慢ではないが半壊だそうだ」

「それは身体の話だっつってんだろ」

「身体という表現に頭だけが含まれない道理など無い訳だが?」

「ぐっ、それはそうだが」

「ならば今すぐ我が背に跨るが良い! さぁ口に繋ぐ手綱を買いに行こうではないか!」

「一人で行ってこい」

「ならば一人で行ってこよう」

「待て冗談だ。一人でも行くな、ヤメロ」

「すまない耳が半分壊れていてな。聞こえ辛いから一先ず手綱を買ってくるよ」

「都合が良いな半壊設定!!」


 一行のベテランの風格は、主に場を牽引する一人の女戦士の存在に大きな影響を受けていると言わざるを得ないだろう。だが、それが故にー


「とは言え冷静に考えて、ライリスさんが目立つのは良くない事ですよね?」

「良い指摘だルクレティア。むしろ拙いとさえ言えるだろうな。何で堂々と歩いてんだよお前」

「おっと、そうだったね」

「でしたら、手綱では無くマントの様な姿を隠せる物を買いに行きませんか?」

「そうしよう。手綱は当面見送りだ」

「うむ、ならば個人的に調達しておくよ」

「お前は当面外出禁止だ」

「ふ、どうやら君は私を縛りたい様だね。縄なら既に家に配備していた事を確認している。あれを使おうじゃないか」

「どうしてそうなる」


 凛として風を受けるその立ち姿だけで、通り過ぎる人が振り返ってしまう。彼女、ライリスの姿は少々目立ちが過ぎるのだ。そこを起因とした事象の連鎖から奴隷として強姦の果てに殺されそうになっていたライリスは、この地に於いて既に死んだ身である。寧ろ本来ならば最優先にそうするべきだっただろう。


 だがそれを忘れさせる程に、ライリスの存在が主人たる男の思考を阻害してくるのだ。彼女もまた、自由となった反動からくる極端に奉仕的な思考に泳がされているに過ぎないが、操縦に不慣れな主人の順応が追い付かず、間接的にルクレティアが状況をコントロールしていた。


 主従揃って混乱状態の二人である。


「……こんな物かな」

「ふむ、君はこういうのが好みなのかい?」

「魔力遮断効果、認識阻害効果、見た目も白でシンプル。むしろこれしかないだろう」

「だがこれだと認識は阻害できても、折角の私の弾ける身体のラインまで隠してしまっている様だが」

「自分で言うな自分で。存在がバレなければ問題あるまい」

「君だけの身体という訳か」

「表現の悪意が凄まじいな」


 男はライリスに白のマントを買い与えると、早速それの着用を促した。着慣れないブカブカのマントに居心地悪そうにするライリスだが、リーシャンやローメイに「ダメ、ちゃんと着て」「そうです危険ですよ! ちゃんとしないとダメです!」と詰め寄られ、タジタジしながらもそれを受け入れていた。


 本件のマントは家の購入に次ぐかなり高価な商品購入となったが、状況が状況だけに仕方がないという判断となっており、全員合意の元に購入が決定されていた為、その点に関しては申し訳ない中で若干の嬉しさも感じるライリスであった。他者から身を案じられる事自体が久しい経験であるライリスにとって、庇護対象となる事は中々にむず痒い立ち位置だろう。


「一先ず、今日はこんなものか」

「装備が完全に揃うにはあと二、三日掛かりそうですね」

「消耗、甚大」

「スタンピードが本当に起こるなんて聞いてませんでしたからね。僕らの防具もボロボロになっちゃいました」


 非常食や医療品などのアイテム補充、装備の修理交換等々を終え、彼らは先日獲得した新居へと帰宅していた。未だ新居の匂いのする我が家は、慣れこそしてきたものの、ふとした瞬間に彼ら全員に安心感や喜びを与えていた。


 そうこうしている内に全員で夕食を済ませ、後片付けをしている最中に。


「皆、聞いてくれて。聞いて欲しい話があるんだ」


 ライリスが神妙な面持ちで語り始める。


「話ですか?」

「どうしたんですか?」

「急に、驚く」


 三者三様に答えると、それぞれがライリスの次の発言を待っていた。


「今夜は私に譲ってくれないか?」

「!!!?!?」

「!?」

「!?」


 ガシャーンと、持っていた食器を手元から落としてしまったルクレティアを筆頭に、皆が虚を突かれた形で呆気に取られてしまう。だがライリスはそれを想定済みの反応とし、語るべき内容をそのまま続けた。そう、それは彼女の身の内に潜む病巣であり、忌むべき過去を象徴する弊害でもあった。


「私は呪いを脱した身ではあるものの、実の所かなりのフラストレーションを溜め込んでいる」

「え?」

「どう言う事ですか?」

「端的に言うと、性的な刺激を身体が欲してならないんだ。今もほら」


 ライリスがゆっくりと差し出したその掌は小刻みに震えており、身体が何かしらのエラーを起こしている事を物語っていた。


「身体に染み渡った薬物は消えたものの、どうやら私の身体が全て元通りと言うわけでは無いみたいなんだ。このままであればやがて破滅的な行動を始めるだろう」

「ライリスさん……」


 多少、予想はしていた。

 だが気丈な彼女の計らいが裏目に出る形で、巧妙に隠匿されたその衝動は俺ですら忘れかけている程。やはりと言うべきではあるが、それ以上に申し訳がない……か。


「なぁライリス」

「何かな我が主人(あるじ)君」

「その手の症状の治療法という物に心当たりがある上で、それはとても単純な道程だ」

「ほう、ご教授願えるのかな?」


 ま、多少は良いだろう。


「禁断症状を緩和できる行動、その封印だ」

「……成る程、単純だね」

「だろ?」


 先程までの気丈な態度が僅かに揺らぎ、表情が青くなっているのが伺える。流石にやりすぎたか?

 この辺りにしておくか。


「なら、私は……」

「だがそれは飽くまでもその依存性を完治させ、自立する為の方法に過ぎない」

「……ん?」

「お前は、俺の奴隷だ。違うか?」

「!? ……いや、違わないね」

「ならば、いつまでも依存しているが良いさ。それこそそんな地獄的な治療など、俺の死後に行えば良い」

「……そうだね。ドルイドの寿命は人のそれよりも長い。やれやれもしかすると私は揶揄われたのかな?」

「そういう事だ」

「やられたね、お陰で君に更に惚れ込んでしまったよ」

「好きにしろ。少なくとも、俺はお前のその体質に責任も持つつもりでこの状況に干渉した。途中で投げ出すつもりはないさ。遠慮なく過ごせ」

「そうさせて貰おうかな。但し、飽くまでも節度は守るつもりさ。上位奴隷たる御三方の迷惑は極力避ける様に努めるよ」

「身体の問題もありますので、あまり遠慮し過ぎない様にして下さいね。でもその……私も……ご主人様の寵愛に賜りたく思っておりますので……」

「分かっているさ。ありがとうルクレティア。君が私の上役である事を心から嬉しく思うよ」

「僕らもその……」

「もう、仲間」

「ありがとう」


 三人が三人共、彼女の存在を肯定してくれている。

 それにライリス自身もここを壊す事は望まないだろう。ただ抗えぬ欲求だけが問題な訳であって、関係性をどうこうしたい目的は無いのだから。


「ご主人様、私はいつまでもご主人様の奴隷であり、いつでも何でも、どんな要求でもお申し付け下さい」

「ルクレティア」


 可愛らしい奴め。

 少し涙目で、それでも私も、私をと言いたいであろうらその言葉を飲み込んで、そんな風に言ってくれている。


「ぼ、僕はその……、別にダンジョンの中とかでもいつでも……」

「無理するな、でもありがとな」

「あぅ」


 ローメイは本当、こういう奴だよな。

 くしゃくしゃと頭を撫でてやると、居心地悪そうな悪そうな態度をしつつ口角を上げている。奴隷として、無理をさせられてきたが故に、無理を自身に強いてしまう傾向にあるのが何とも痛ましい。だがそれを遠慮し過ぎても、やはり彼女の心を傷付け兼ねない、のであれば。


 そのうち泊まり込みでダンジョンに行くタイミングで、ローメイに頼んでみるかな。


「動きたくない日は、私が動く」

「分かったから、そう無理するな」

「口だけでも、どう使ってもー、あぅ……」

「分かったってば。ありがとな」


 立場を失いそうで少し怯えた顔を見せるリーシャン。

 こいつはこいつで、しっかりして強そうな雰囲気を見せる反面で、捨てられる恐怖からは逃れきれないとでも言うべき様子を時々見せてくる。


 そこまでしなくたって、今更お前と離れられる筈も無いというのに。


「皆、すまない。だが今日はー」

「勿論です、納得の上なので遠慮しないで下さい」

「僕もその、また別の日に……」

「何なら、二人一緒でも」

「僕らは双子だもんね」

「……ありがとう。皆にそう言って貰えると、私も気が楽になるよ」


 話はついた様だな。

 元々こういう落とし所は見えていたんだ。動揺する事もなければ、拒む理由など更に無い。


 とは言え、これからの生活。

 遠い先々までもを考えた時に。


「さ、それでは早速付き合って貰おうかな。我が主人君?」

「無論、構わんさ」


 果たして保つのかね。

 俺の身体は。


 いやダメだな、無理だ。

 よし、ある程度の頻度でダンジョンへ行こう。

 それならきっと大丈夫だ。


 奴隷少女達とダンジョンを突破するのなら、ダメじゃないかもしれない。


 ー完ー

いつもお読み頂いていた貴方様。

本当にありがとうございます。


こちらの作品はここまでとなりますが、実の所、同名の作品をノクターンにも投稿しておりまして、不自然に話数が飛ばされていた回はそちらに収録されております。またこちらではここで完結ですが、向こうにはもう数話残されておりますので、更新は少し先になるやもしれませんが、是非そちらもよろしくお願いします。ここまで来てライリスに何もしないまま終われる筈もなく……(ォィ


生くっぱ

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