【第七十八話】スキルギフトを得たライリスの本領
「何だ……身体から倦怠感が消えた? それどころかこれは……身の内から力が溢れてくる」
「傷が癒えた訳でもなければ体力が戻った訳でも無い。依然としてライリス・ドルイディアの身体は満身創痍だ。だがその上で、体内に於ける全ては俺が奪還した。簡単に回復魔法をかけるからじっとしてろ」
「体内を……奪還だと?」
「よし、俺が今してやれる応急処置はこれで全てだ。後は、ここを無事に脱してからだな」
俺たちのライリス奪還計画はかなり上手く事を運び、ここに形を成した。だが、その一方で上手く事を運べていない領域も存在しており、ここからそれが重たくのし掛かってくる事だろう。
「ブギィイイイイイイイ!!!」
その上で、先程からガンガンと蒼海朧月が攻撃を受けており、解除した後の戦闘が不可避である事を主張している。眼前の問題でも十分厄介である事は勿論そうなのだが……
「裏の抑え、もう効かない」
「これ以上は無理です!」
「良く保たせてくれた、十分だ」
リーシャンとローメイがダンジョン内部の更に奥側から顔を出すと、滑り込む様に蒼海朧月の内側へと侵入する。だがそこには安全地帯に入ったという安心感など微塵もなく、ただ深刻な表情を見せながら状況の悪さを報告してくれる。
そう、問題というのは俺たちがやろうとした人為的なスタンピードに【本物のスタンピードが誘発された】事に在った。
ライリス本人への対応が俺一人に託される程に、ダンジョン奥側の抑制が厳しく、殆どのメンバーがそちらに割かれている現状。このままではほどなくして全員が飲み込まれ、やがて全滅の目に遭うだろう。
こう言う時は、何体か状況の要となる魔物が存在しており、そこを上手く刈り取る事が出来れば状況を遅延させる事が出来る。だが、その要となる魔物が想定を遥かに超えた魔物で構成されていたのだ。
本来ならば遊撃のポジションを頼む筈だったヤマナ、フィオ、そして俺のサポート役となる筈だったルクレティアまでもがそちらにかかりきりという現状。
いよいよ山場だな。
「ライリス、状況を簡潔に説明する。一度で飲み込め」
「頼む」
切り替えも早い上に頼りになるステータスを誇るライリス。こいつの協力があるならば、まだ芽は十分に残されている筈だ。
「スタンピードが予想よりも激しい。眼前のブラッディオークを即殺の後、協力者を集結させここを脱する。ライリスはオークの撃破後、殿を頼む」
「望む所だ。敵もまた手練れではあるが、今の私なら問題ないだろう。直ぐにでも始めてくれ」
「よし、リーシャン、ローメイ」
「いける」
「いけます!」
ここからだ。
俺は異空間から一本の剣を取り出すと、それをライリスへと手渡した。
「助かるよ、これでもう憂いは無い」
「いくぞ」
さて始めるか。
遂に、展開していた蒼海朧月を解除する。
「ブギィイイイイイイイイイイ!!!」
「散々追い詰めてくれた事、纏めて礼をさせて貰うよ?」
イィィンとブラッディオークの斧とライリスの剣が撃ち合うと、その衝撃が周囲へと迸り、その威力の凄まじさを物語る圧を巻き起こす。だがライリスはー
「ラァァァァアアアアアア!!!」
そのまま身体を捻る様に回転させつつオークの片足を払い飛ばし、体制を崩したオークの首目掛けて回転斬りの如く刃を走らせる。
対応がワンテンポ遅れたオークは体制を崩されつつも腕を回し急所である首をガードすべく片腕を盾として差し出したのだがー
「ハァァァ!!」
その腕ごと一太刀、ブラッディオークの首を跳ね飛ばしてしまう。
「す、凄い……」
「何で、斬れるの」
オークの腕には手甲の様な防御品が携えられており、まさか鉄壁を誇るブラッディ種のガードごと全てを跳ね飛ばすとは思いもしなかった一同は、信じられない物を目撃してしまったという顔でライリスの剣撃を凝視。
ただ一体、その瞳から光を失おうとしているオークだけが何が起こったのか理解出来ていない様で。斬り飛ばされた顔面を他所に、オークの身体は轟音と共に大地に膝を着くと、その場に重々しい音を鳴らしながら地面へと沈んだ。
折角だ、斧だけでも回収しておくか。




