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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
五章 灼熱慟哭のダンジョン浅層と壊された女戦士
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【第七十六話】壊された女戦士act6

 助けて欲しい、か。

 この期に及んで私は誰に助けを乞うたのだろう。


「ぐっ」


 身体は既にオークの手に堕ちた。凶悪な彼奴等に蹂躙された我が身だが、不思議とそこに痛みは伴わなかった。いや不思議な事など何も無い。私の身体は既に在りと凡ゆる事象を経た結果の出涸らしの様な身体なのだ。何処に何をされようとも全てが今更。例えそれがブラッディ種のオークだろうと例外ではない。たかが人外一匹に驚いたりなどしない。


 だが、私に降り注いだ問題の本質はそこでは無かった。


「スタンピードだ!」


 口々に、皆がそう言葉を叫んで回っていた。スタンピードだと? 上級ダンジョンで稀にあるという魔物の大量発生、その大襲撃の事だろうか。私とて冒険者歴は長いが、そう何度も経験がある訳ではない。まさかこんなタイミングで?


 朧げな頭でダンジョンの奥に感覚を向けると、確かにそこには夥しい数の気配がこちらに接近してきている様だった。紛れもなく、これはスタンピード。だとしたら、万に一つ残されていた私の可能性が潰えたとも言えるだろう。


 私にとっては正に泣きっ面に蜂。弱り目に祟り目であり、その上で多勢に無勢、そして一貫の終わり。


 はは、どうでも良い事ばかりが頭に過ぎる。限界のその先の世界で、どうやら私は身体だけでなく頭までイカれてしまったらしい。助かる筈もないこの窮地で、何かを考える様な雰囲気を見せるブラッディオークに目をやりながら、尚も動きを止めない眼前のオークのソレを受け止めていた。


「ブギッ!?」

「……え?」


 突如として、目の前のオークの首が刎ねられる。刎ねたのはブラッディオーク。何故……などというのは彼のソレを見やるに、考えるまでもないだろう。どうやらいきり勃ったソレを我慢出来なかったらしい。


 どうやらブラッディ種を甘く見ていた様だ。幾ら今の私とて、アレで貫かれては一度で壊れてしまうだろう。身体が麻痺しているだとか、姦通に耐性があるだとかの問題ではない。そも、デカ過ぎる。確実に臓器までイカれるだろう。


 いつの間にかギャラリーの声は消え、ただ荒れ狂う魔物の群れのけたたましい叫び声がこだまするのみで。世界でただ一人、魔物の世界に取り残されてしまったかの様に惨めな状況で。


 ブラッディオークのソレに壊される瞬間を間近に迎えていた。あぁ、間も無く貫かれる。そして、人としての時間とのお別れだ。


 腕が掴まれ、60キロほどもある私の身体を軽々と持ち上げるブラッディオーク。そして、まるでモノを扱うかの様に、ソレに当てがわれる。


 無理だ、確実に胃の辺りまで貫かれる。


 怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。この一瞬が一生続くかの様な錯覚。ゆっくりと接近するそれを見ながら、走馬灯の様な物をぼんやりと見ていた。


 里で生まれ育った時間。


 厳しい鍛錬に身を投じた時間。


 里の外で得た仲間たちと過ごした時間。


 願わくば、彼らとまた……。


 無力な私は、ただ為されるがままに、絶望を受け入れ、


 ブラッディオークに貫かれーー


「ー!?」

「間に合っ……たのか? いや間に合っては無いな、良く耐えた」

「……は?」

「護れ、蒼海朧月(ネーレウス)


 突然、身体を抱きしめられ、そしてブラッディオークから引き剥がす様に私を持ち去ると、次の瞬間には謎の空間を展開する眼前の男。


 この一瞬で私とブラッディオークの間に入り、その上で防御壁を展開?


 それに、これは……何だ。分厚い水の壁か? 魔力の量から考えるに、見た目に反してかなりの密度を有しているに違いない。


「説明している暇はない、悪いな。先に謝っておく」


 はは、誰かと思えば。あの日最後に言葉を交わした闇夜の剣士くんじゃないか。何故彼がここにいるのかは分からない。何を謝っているのかも分からない。


 何が何やら。


 でもまぁ。


 最後を看取ってくれるのが彼だと言うのなら。


「……良いさ、君になら、何をされたって」


 ブラッディオークに貫かれ、奴の慰みモノとなりながら絶命する未来と比べるなら、数百倍も幸せだろうよ。


 彼の目が言っている。

 助けるつもりのそれではないと。


 幾千という戦場を越えた私は、その目を理解する。

 彼は()るつもりだ。

 これは、そういう事なのだろう。


「……助かるよ」

「気にしないでくれ。むしろ、君の様な色男に幕を引いて貰えるなら本望だ」

「言ってろ」


 私は僅かに保っていた全ての魔力防御を解除した。


 そして。




 彼に、心臓を貫かれた。

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