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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
五章 灼熱慟哭のダンジョン浅層と壊された女戦士
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【第七十三話】壊された女戦士act3

【灼熱慟哭のダンジョン 5F】


「ヒャッヒャッヒャッ!! 居おる居おる、餌に群がる豚畜生共が大量に居おるわ!」

「心が躍りますなぁ」

「実に楽しみだ」


 螺旋の傾斜を下り、彼ら一行は灼熱慟哭のダンジョンの五階層へと辿り着いていた。ここに来るまでの損害はゼロであり、物資や状況にはかなり余裕が見られていた。これらは闇蜘蛛の経験と努力の賜物に他ならず、例え五階層であってもこれ程までにスムーズに辿り着けた事は紛う事無く賞賛に値するだろう。


 だが、この任務自体は悪事の片棒を担いでいるに過ぎない。また彼ら自身も、それが自分達に合っている事を理解していた。故に各々がライリスに欲望に塗れた視線を送っては下卑た表情を浮かべていた。


 それこそ、闇蜘蛛のメンバーの中にはこのイベント自体を楽しみにしていた者すらいるだろう。本来ならば大金を払ってこの場に居合わせる事しか出来ない筈の催し事に、護衛と言う名目の元、報酬を貰いながら特等席でこれを観覧出来るのだから役得と言わざるを得ない。


「おい! 双狼共! テメーらの役目だぞ、ちったぁ働きやがれ!!」

「怒鳴らずとも理解している。下がっていろ」

「ッスね。そっちにヘイトがいっても知らないッスよ」


 ここで双狼の二人にベサイルから声が掛かった。彼らは最後尾を離れ、観覧用の車の横をすり抜けて最前の位置へと移動を始める。そして闇蜘蛛のメンバーは彼らの抜けた穴をフォローする形で僅かにフォーメーションを変え、また一名がライリスの入れられた檻の側へと待機し始めた。


 いよいよその時が近付いて来たのだ。


「必要なのはオークキングだ、それ以外は極力斬り捨てろ。可能ならゴブリン種は残しても良いが、アレは直ぐに湧き直すだろう。オークキングを斬りやがったらただじゃおかねぇからな」

「そのつもりだ。味方に背中を斬られるのは勘弁だからな」

「分かってるなら構わねぇ。一蓮托生なんだ、ミスるなよ」

「無論だ」


 ベサイルとロウガが僅かに言葉を交わし、そしてロウガとゲンマは最前線にて剣を抜いた。眼前に居たのはフレイムリザード。これは炎熱系のダンジョンの固有種であり、今作戦に於いては無用の対象でもあった。故にー


「ひゅーぅ、やっぱアイツらやりやすねぇ」

「味方だって言うなら精々利用してやるさ」


 そんなフレイムリザードはほんの二振りの剣閃にて斬り伏せられ、事態の異変を悟ったダンジョンが彼らに向けてその牙を剥き始める。


「やれやれ、流石Sランクダンジョンッスね」

「だな、低層階でこのクラスの魔物が湧いてくるのだから始末におえない」


 言葉の上では気怠げではあっても、その動きは流麗かつ洗練されており、近付く魔物はその尽くが消滅させられる末路を辿っていた。


「ランダム出現ッスよね?」

「今の所、規則性は解明されていないな。最悪数時間という事も想定しておけよ」

「そこが一番ダルいッス」

「そう言うな」


 斬って斬って斬って。

 彼らは敵の出現と共にそれらを斬り伏せ続けており、多種多様に渡る魔物達が群がるも、一向にライリスを解き放とうとはしなかった。そこには勿論理由があり、それは目的であるオークキングに他ならない。そしてそれらを斬り続ける事数十分。


「来たッス! ……来たんスよね?」

「だな、どうやら俺たちは逆にツイていたらしい。まさかオークキングがオマケになるとはな。これで俺たちもお役御免だ」


 ダンジョン内にて彼ら一行とは逆側の六階層の方面より、大きな足音が響き始めた。


「聞き慣れねぇ分、相も変わらず嫌な音ッスねぇ」

「今回は戦う目的でもこの先へ進みたい訳でも無いから良いものの、これを偶然引き当てた日には夢に出る様な光景だ」

「違いねぇッス」


 ダンジョン内に響き渡るその巨大な何かの発する地響きの様な足音は、周囲の岩々を振動させ、小さな瓦礫を天井から降らせる程に存在感を示していた。


「来たぞ! 檻を前に!」

「へ、へい!」


 ライリスを閉じ込めていた檻付きの馬車が一人のメンバーによって双狼の居る地点へと運ばれる。


「だ、だれか……」

「貴様の相手は俺たちでは無く、奴らに任せる」

「やつら……え?」


 薬の投与を止められた事により、僅かに取り返されたライリスの理性。それによってライリスは己の欲求とは別の部分でほんの少しの思考の余地を獲得していた。


 だが、それさえもマッケンの思惑通りの状況であり、


「万に一つあった脱出の可能性が潰えたな、運の無い野郎だ。お情けだ、檻の中に剣を一本だけ残してやる。精々足掻くと良い」

「うそ……ま、まって、おねがいしましゅ、まってくらさい……」

「待てる訳が無かろう。俺たちの仕事はここまでだ。下がるぞゲンマ」

「ッス。いやー出現が早くて助かったッス」


 ロウガ、マッケン、そしてライリスをそこまで運んだ闇蜘蛛のメンバー。彼ら三人は足早に後退し、彼らもまた観覧用の車の護衛へとポジションを移した。


「ブィィイイイイイイ!!!!!!!!!」


 ダンジョン内に響き渡る大いなる咆哮。それは日頃聞き慣れた小型の魔物のそれとはまるで違う、腹の底から震えが来る様な身の毛もよだつ叫び声で、


「お頭。アレ、本来ならどうなんですか?」

「ん? アレって何だよ」


 豚の様な見た目に強固な鎧を身に纏い、その全身を真っ赤に浮き上がった血管を用いた異質な紋様で彩った、


「ライリスの野郎が本調子だったとして、どうなんですか?」


 子供と同サイズ程の大きな手に握られた禍々しい斧を所持した、形相鼻息凄まじい大型の魔物。


 ダンジョン内にてランダムにレア出現する冒険者たちの脅威、ブラッディ種。今この場に出現したオークの姿したその魔物の名は【ブラッディオーク】。


「両脇に控えているオークキングくらいなら、平生の奴であれば容易く屠っていたろうな。俺たちもオークキングを狙って待っていた訳だが……まさかこうなるとは」

「アレは狙ってなかったんですか?」

「あんなもん狙って出せる訳ねーだろうが」


 闇蜘蛛の面々にも額から汗が流れ落ちる。


「素晴らしい!! まさかブラッディ種をこの目で拝める上に、こんな催し事を主催できるとは!! ワシはツイておる!!」


 そんな護衛メンバーとは対照的に、歓喜のあまり興奮するマッケンが見つめるのは、美しいドレスで着飾った純白のライリス、そしてそこに詰め寄る大いなる魔物、巨大な斧を携えた赤黒き血管塗れのブラッディオーク。


 赤と白の対比が観客側は一層沸き立っており、ブラッディオークの下腹部に携えられた聳り立つ巨大な男根が、間も無くおこなわれるであろう蹂躙の惨劇を匂わせていた。

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