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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
五章 灼熱慟哭のダンジョン浅層と壊された女戦士
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【第七十話】作戦前日

 ブラックファルコンのメンバー総勢十名、そしてフィオと副隊長のヤマナ、そこに俺たち四人を加えて合計で十六人。その全員を俺たちの家へと招き、最後の作戦会議を始めた。


「まず、情報の獲得に感謝する。これが間に合わなければ話そもそもが何一つ成立しなかった」

「そんなの当たり前でしょ、私たちの隊長なんだから!」

「そうだな、確かに今のは出過ぎた発言だった」

「フィオ、今はそんな事よりもだ」

「わ、分かってるわよ!」


 何かと突っ掛かってくるフィオをヤマナが制し、話を進行する。


「まず連中の狙いから考えて、恐らく【余興】が決行されるのはその五、六階層となるだろう」

「根拠は?」

「五階層以降にしかオークキングが出現しないからだ。灼熱のダンジョンに出現するオークはその一種類しか確認出来ていない。ゴブリンだけで行う余興にわざわざ灼熱のダンジョンを選ぶ理由が無いからな」

「成る程、確かにそれならばその確率は高そうですね」

「そしたら私たちはそこで隊長を取り返せば良いのね!」

「いや、少し違う」

「え?」


 取り返すだけならこんな下準備も必要あるまいて。一階層で金持ち連中を襲撃して護衛共々全滅させれば終わりだ。だがそれをしたらば隊長までもが死んでしまう。故に一工夫必要なのだ。


「奴らには隊長を【諦めて貰う】必要がある」

「……成る程。でなければ隊長は取り返せないと」

「それってつまり……」

「暫くは様子見というか、放置する形になるな」

「ダメに決まってるじゃないの!!」


 ガンと、机を叩いた大きな音を部屋に響かせるフィオ。何人かのメンバーもそれに同調している。やれやれ。


「それってつまり、ゴブリンやオークに隊長が襲われているのを、許容するって言葉なんでしょ?」

「そうだ」

「無理よ!! そんなの我慢出来ない!!」


 気持ちは理解出来るが、それでは話が進まない。何度かのやり取りをすれば気が済むのかといういつもの流れを踏襲するしかないのだろう。それで少しでも溜飲が下がるのなら仕方あるまい。


「今この瞬間も、催淫状態に身も心も堕とされた隊長が誰かに犯されているだろう」

「ーーっ!?」

「で、我慢出来ないから全てを無に返して突っ込んでくるか?」

「……くっ、そんな事言ったって、隊長をオークなんかに……そんなのってあまりにもあんまりじゃない……」

「だから、助けるんだろ?」

「ーーっ!?」

「今回のこれは手順を間違えればここにいる全員が死ぬか、若しくは逃亡生活確定かのどちらかになりかねない作戦だ」

「……」

「引いては、隊長の命の有無もそこに関わってくる。聞き分けろ」

「……分かったわよ。でももしこれで隊長が取り返せなかったら、アンタを絶対許さないから。覚えておきなさいよ」

「ならば、取り返せたのなら、その時は覚えておけよ?」

「ーーっ!? と、当然ね」


 言質は取ったからな。


「話を戻すぞ。奴らに隊長を諦めて貰う為に、俺たちは擬似的なモンスタースタンピードを発生させる」

「と、言いますと?」

「五、六階層、恐らくは五階層で決行であろうその催し事に、こちらで意図的に集めた魔物の群れをぶつける」

「な!?」


 言っていて酷いなと我ながら発言に呆れてしまう。何故ならこれはー


「そんな事をしたら隊長が!」

「そうですよ、連中を追い払うだけであればそこまでしなくても!」

「違う」

「え?」


 彼らの発言を否定する俺の言葉によって、場がシンと静まり返ってしまう。


「必要なのは連中を追い払う事では無い。隊長を【諦めて貰う】事だ」

「……でもそれだと」

「懸念は分かる。その間、隊長は魔物の群れの中に沈む事となるだろう。時間にして、凡そ五分と言った所か」

「そ、それは作戦と呼ぶには余りにも……」

「改めて言う、これは隊長を救う為の作戦ではあるが、その前提として一度隊長を諦めて貰う作戦を挟む必要がある。そしてその為には、彼らを満足させつつ、危機感を覚えさせる必要があるのだ」

「あんな奴らを満足!?」

「何を馬鹿な事を!!」


 わーわーと言葉が鬩ぎ合い、只管に俺を否定する言葉が飛び交う。いやほんと、我ながらどうかと思うよ、俺も。


「二つある、聞いて欲しい」

「な、何よ!!」

「一つ、一発勝負にて隊長を心身共に取り返す今作戦に於いて、この期限迫る中代案を示せる者はいるか?」

「……」


 キツい物言いをするしか無いとは言え、本当に申し訳ない限りだ。そもそも俺は部外者だ。だからこそ、今もこうして第三者として無慈悲な作戦を考えられる。


 この短時間で他に手段を示せる者がいるのなら、勿論俺もそれに従うさ。だが今の彼らに、冷静に隊長を救う作戦を考えさせるってのは余りにも(こく)過ぎる。


「二つ、お前らは、お前らの隊長がSランクダンジョンに五分も耐えられないと信じている、という事か?」

「なっ!?」

「そんな訳……、そうだ、隊長ならきっと大丈夫な筈だ」

「だな、あの人がその程度で死ぬとは思えない」

「そう……ね。ここまでの状況に陥った隊長を助けるには、それくらい大掛かりな事をしなきゃ、なのね」

「隊長を、救うんだ!」


 先程までの険悪な空気が嘘の様に、前向きな空気が空間に満たされ、皆のやる気は十分。そして、全員で同じ方角を向けている。


 後は本当に、隊長が死ぬ前にその間に割って入れるかどうか、という所だろうな。


 催淫状態の隊長さんが、果たして何処まで耐えられるか……。

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