【第六話】奴隷少女へ贈るスキルギフト
「まずは幾つか質問させて欲しい。俺はとある魔法に巻き込まれてこの地に転移してきたばかりで何一つ分からない状況なんだ」
「転移……移動の魔法、魔力災害ですか?」
「そんな感じだな」
「それだとお金も、食べる物も、寝る場所も?」
「どうして良いか今以て不明だ。金も無い」
肩をすくめて冗談の様に重い話をする俺。というか冷静に考えると結構拙い状態だよな。大丈夫か?
「では、基礎的な話からさせて頂いても?」
「その方が助かるよ」
犬耳の少女曰く、ここはフォーカントと言う地域の中でもやや自然に寄った地域であるラプリンセという場所で、主にダンジョン産物を流通させる事で栄えているそうだ。
その上で、ダンジョン目当てに冒険者なる人達が集まりやすく、奴隷の売買も盛んに行われているらしい。
彼女もダンジョンサポーターとして連れてこられたそうなのだが、どうにも戦いに向いて居そうな雰囲気は無い。その辺りを聞いてみるとー
「少しだけ、回復魔法が使えるんです。それで価値を認められて、商品となりました」
との事。自身が売れる事によって家族が助かったらしく、後は買われた先での奉仕活動のみの人生だと思っていたらしい。
そこにきて先程の騒ぎの最中、彼女はゴブリンを引き留める囮として商人に捨てられたと、そういう訳か。
「なので、私にはもうなんの価値もありません。ここでー」
「価値ならあるだろ?」
「え?」
「俺の知らない事を沢山知っている。もう少し詳しく教えて貰いたいんだが、一緒に来ないか?」
「私の……主人になって頂けるのですか?」
え、あ、そうか。深く考えていなかったがそうなるのか。コイツの身分は【奴隷】で、主人なしの奴隷は街を安全に歩く事すら叶わない。それこそ、死んだ方がマシな程に。
「奴隷の身分は消えたりしないのか?」
「一度堕ちたなら刻印が施され、市販されている魔道具で簡単に判別出来てしまいます。身分を伏せて街に入ろうとしても、検問ですぐに見破られる事となります。その後はー」
「いや、すまない。十分だ」
……嫌な風習だな。とは言え、俺が元居た世界にも同じ様な環境は存在していただろう。可視化しただけに過ぎない訳だが、目の当たりにするとどうにも腹の虫が騒いで仕方ない。
俺に、出来る事があるのならー
「俺みたいな余所者が主人で苦労しないのか?」
「そんな! 私はこのまま朽ちるのみの身、それこそ身に余る光栄です」
「そう……なのか」
それもまた、一興か。
「どうすれば良い?」
「え?」
「どうすればお前の主人になれる?」
「あ、えっと。確か私はまだ商品段階の奴隷ですので、奴隷紋が第一段階までしか定着しておりません。故に所有者の確定である第二段階を定着させるには、紋に直接触れながら【我が所有物と認める】と言い、魔力を流し込めば良かった筈です」
「奴隷紋とは?」
「これです」
すると、犬耳の少女はボロの様なワンピースを恥ずかしげも無く脱ぎ、下着姿となった。微妙に動揺するが、ここは我慢所だ。
「見えますか?」
「これか」
彼女の胸の上、恐らく心臓の位置に当たる場所に不可思議な紋様が刻まれており、それを指差して【奴隷紋】であると告げられる。やる事は分かった、覚悟も決まった。後は奴隷紋へと手を重ね、そしてー
「我が所有物と認める」
「……んっ」
赤い光を僅かに零した奴隷紋は、そのまま少し形を変え、新たな紋として少女の身に定着した。
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・奴隷を所有しました
【ルクレティア・ウルフェンヌ】
統率者スキルの効果により、
ギフトを一つ選べます。
【・天賦の才・大賢者の卵・艶福家・性豪・統率者・限界突破・無限魔力・合成魔法・状態異常完全耐性・武具錬成・完全鑑定・完全解錠・超集中・異空間収納・ステータス完全隠蔽】
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……は?