【第六十二話】念願のマイホーム、獲得
「ではこれが鍵と証明書となります。無くさない様にして下さい」
「分かった。……何だ? 妙な顔をして」
「いえ、まさか買って頂けるとは思わず驚いてしまいまして」
「……商売の上手い事で」
「何の事でしょうか? ふふ」
俺たちは報償金を受け取ると、一にも二にもなく直様不動産屋を訪れていた。そして店主の驚いた表情を見て俺は先日のやり取りに多くのブラフが混じっていた事を理解する。
人気があった訳でも売れそうだった訳でもなかったのだろう、上手く乗せられてしまった。
「また御用の際はなんでもお申し付け下さい」
「家に関する質問等々もか?」
「勿論です! アフターケアもさせて頂きます!」
「それは助かる。良い買い物をした」
「そう言って頂けると幸いです」
鍵と証明書を受け取り、店を出た俺を待ち受けていた三人の少女たち。
「ご、ご主人様! 買えましたか!?」
「買えたよ」
「行こう、すぐに行こう」
「引っ張るなって、行くから」
「でも家が逃げちゃうかもしれないですよ!!」
「もはや逆に見てみたいよその光景を」
俺を囃し立てる少女らは待ち切れない様子でそわそわしており、今にも小躍りを始めそうな勢いのルクレティアたち。彼女らを宥め、一度宿を経由した上で荷物を引き払い、チェックアウトを済ませた。
「早く行きましょう!」
「家が、燃えちゃう」
「それは困るな」
「僕もう我慢出来なくてさっきから心臓が痛いんです」
「そんなにか!?」
そうしていつもより早いペースで歩かされ、まもなく我が家となった建物の前へと辿り着いた。改めて見ても立派な上に大きい。ガチャリと、鍵を開けー
「家だー僕らの家だー!!」
「憧れの、家」
「はぅーもうここから離れたくありません……」
俺を入り口前に残したまま三人が勢いよく家の中へと駆け入ってしまった。まぁ予想出来た事ではあるのだが。さて、少ない荷物を簡単に整理するか。
*
家の中は先日見た時から何も変わっておらず、部屋の多さや全体的な広さ、余裕が非常に好印象な我が家。今はまだ部屋を持て余しているが、足りないよりも余程良いだろう。
一部屋当たりも俺がかつて過ごしていた孤児院の相部屋よりも広く解放感が心地よく、また木の香りが漂う木造ならではの空気感が安らかな眠りを提供してくれそうだ。
俺も自分の部屋を持つのは初めてだ、少し感慨深いものがあるが、彼女らはずっとこんな感覚だったのだろうか。
「これで自炊が出来ますね」
「この中で料理が出来るやつは?」
「質素な家庭料理でよろしければ私が出来ます」
「私は、無理」
「僕も料理は出来ません……よ、夜のお相手くらいしか……」
「いや飯の話だぞ飯の」
少し自身なさげなルクレティアに我関せずなリーシャン。そして何故か泣きそうなローメイ。料理が出来なくて悔しいのか?
「あの、お掃除頑張るので、僕も住ませて下さい……」
違った、ヤバい追い出されるって顔だったのか。やれやれ。
「当たり前だ。お前が居なくてどうするローメイ。ちゃんと一緒に居てくれ」
「はぅ……ご主人様……」
頭を撫でてご機嫌を取りにいくも、何やら他の二名から熱い視線を感じている。いや、気のせいだろう。
「さて、俺は必要な物を買いに行……なんだ?」
突然、俺を背後から抱きしめてきたルクレティア。何故このタイミングで?
「いえ、その、何だか寂しくて……」
拙い、この流れは断じて受け入れてはならない。
「ご主人様、私も」
り、リーシャン!?
こいつこの流れを回避不能の物とするべくわざわざ寄ってきやがった。ローメイは……?
ローメイはさっき撫でられた感触を噛み締める様にぽわぽわしたまま帰ってきていなかった。……好機!
「よし、ならば俺とルクレティアとリーシャンで買い物だ」
「……へ?」
「……え?」
「そして新生活に必要な様々な物を買いに行く。ローメイ、お前はお留守番だ」
「え!? ぼ、僕だけお留守番……ですか?」
「そうだ」
な、何故!? という顔のルクレティア。それは許さないといった雰囲気のリーシャン。そして地獄から天国から地獄へジェットコースターを乗り回すローメイ。
「家の中を掃除しておいてくれ。因みに奥の部屋が俺の部屋だ。各自、己の部屋を決めておく様に。今日の夜はお前が俺の部屋に来い、ローメイ」
「……へぇぁ!!? ぼぼぼ僕だけでふか!?」
「お前だけだローメイ、覚悟しておけ」
「ぁ……ぇぅ……ゎ、わかりました」
「なっ!!? ご主人様!!?」
「そういう事だ、聞き分けろ」
「見事に、嵌められた」
少ししょんぼりして見せたルクレティアだったが、彼女はその後の買い物で信じられない程の高揚を見せており、それはそれで楽しめた様だ。
リーシャンもまた自身の部屋に置きたい物を買い、それぞれ色違いで2個ずつ買っている姿が印象的だった。荷物が多くなりそうだが、収納スキルがある故に問題はない。何気に大活躍のスキルだ。
漸く、全員に攻められる環境から解放されたな。
一息つけそうだ。




