【第六十一話】取得物の分配
「何で誰も僕を心配して見に来てくれない訳!? 吹っ飛ばされたんだよ!? 弱点を見つけた功労者だよ!? もっと労ってよぉぉぉ!!」
「あの、助かりました。私がやらねばならなかった役目、それを代わって頂き、確かな成果まで。貴方様がこの場に居てくれて本当に助かりました」
「る、ルクレティアちゃん……、え、夢? 本当に労ってくれるの?」
「ありがとう、凄かった」
「リーシャンちゃん!?」
「僕が足手纏いになっていたタイミングを攻撃の起点にしてくれるなんて、感謝しかありません。僕は貴方の勇気に救われました」
「ローメイちゃんまで!? え!? 僕死ぬの!?」
「アイツ塩対応が続き過ぎて優しくされる事を死の暗示だと捉え始めているぞ。もっと優しくしてやれよ」
「嫌に決まってるじゃない」
「お荷物は喋ンな」
「僕そっちのパーティに移籍したいってぇぇぇぇ」
「だが断る」
「何でこうなるのぉぉぉぉ」
ライオネルドラゴンが消失した空間には幾つかのドロップアイテムが残されていた。一つは龍の宝玉。武器に龍族への特攻が付けれるそうだ。もう一つはドラゴンテイルという龍皮で出来た鞭の様だ。
「うちはコアだけで十分だ。寧ろこの感じで報償金まで総取りして良いのか?」
「最初からその契約だろォが。蒸し返ッしてンじゃねェ」
「ならせめてドロップは持って行ってくれ。あと諸々の取得物もだ。その代わり俺たちはコアと報償金まで貰うからな」
「ならドロップは遠慮なく貰ッていく。それに俺ァこの程度のコアには要はねェ。欲しいのは【ランクS】の中でもより高位のコアだけだ。今回の事に関して後からゴチャゴチャ言いやがッたらぶッ殺す」
「えー! じゃあ私この鞭ほしいー! これ多分相当レアな武器だよ?」
「好きにしろ、俺たちはコア獲得の時点で既に目的を達している」
これ以上の入手物も特に無く、俺たちは炎熱のダンジョンのコアを獲得し、ダンジョン外へと脱出した。取得物の価値の高そうな物を中心に奴らに渡しておいたが、果たしてこれは公平な取り引きとなっていただろうか。……これもまたやや【借り】に当たるか。どうも借りが増えている気がするな。増え過ぎる前に機会があれば返していこう。
*
「俺たちはこのまま次のダンジョンを目指す、契約は此処に完結した」
「だな、助かった。また何かあれば頼むよ」
「てめェは話が早ェ。理と利が在るならばそれもまた一興。精々その腕を磨いておくこッたな」
「そりゃそうだ」
腕が鈍っていたり磨いて居なければ手を組む余地は無いってか。だがそれがあるならば良しと。何というかサッパリした奴だ。
「またねータスクくん! ルクレティアちゃんもリーシャンちゃんもローメイちゃんも! 偶には遊ぼうねー!」
「今回は本当にお世話になりました」
「閃光、轟かせておくから任せてよ!」
「え、あ、それはその、お手柔らかに……」
向こうは向こうで挨拶も済んだ様だ。初めての共闘、悪くない経験だったと言えるだろう。得られた物は多く、何一つとして失わずに済んだ。奴らとまた戦場を共にする機会があったとして、俺はきっと純粋に頼もしく思う事だろう。
「うぅ、僕も帰りたいよぉ」
「熊鍋にされたくなけれりゃゴタゴタ言わずにとッとと来やがれ!」
「ヒィッ! 行くから怒鳴らないでよぉ!」
中々に、有意義な時間だったな。
*
「すまないが手続きを頼みたい」
「依頼の達成ですか?」
「いや、ダンジョンの踏破なんだが」
「……え?」
「ダンジョンの踏破だ」
「あ、タスク様のパーティでしたか。今回はどちらのダンジョンの踏破でしょうか?」
「炎熱のダンジョン、これがコアだ」
「確かに受け取ぅぅえええ!? 炎熱!? 【A】ランクですよ!?」
「ギーファのチームと共闘した。奴らの協力ありきだ。実力では無い」
「あー、共闘だったのですぅええええ!? ギーファくんのチームと共闘!? あのギーファくん!?」
「ん?」
騒がしい受け付けだと少し笑いつつ、受け取って貰えたコアの査定を待ちながら冒険者ギルドで少し待ち時間を過ごして居た。
そういえば依頼の達成といつも聞かれる割にはまるで興味を持たなかったが、任務サイドからもある程度稼げるのだろうか。
俺であればダンジョンでの取得物も無限に拾えてしまうからついダンジョンを選択しがちなのだが……まぁいいだろう。
「お待たせしましたタスク様。報償金の用意ができましたので受け取り下さい」
「ん、確かに」
「あの、ギーファくんとは喧嘩にならなかったのですか?」
「……え? あ、ギーファ?」
「プライベートな質問ですみません! どうしても気になってしまいまして……」
受け付けのお姉さんはやや年上のイメージだがおばさんという年でも無さそうな20代後半の雰囲気。ベルモンド支部長の子故に姉心でも持っているのだろうか。
「奴は短絡的なルールに基づいて動く馬鹿だが頭が悪い訳では無い」
「な、なるほど」
「理と利を重んじる話の芯を共有し易い存在に思うのだが、そんなに心配なのか?」
「そうですね、彼が小さい頃が見てますので。方々で悪い噂ばかりを聞きますので、共闘と聞いてとても驚きました。その様な話を聞く事は珍しいので、少し嬉しく思います。ありがとうございます」
「こちらが助けられた立場だ、礼を言われる謂れは無い」
「ふふ、そうなのですね。機会があれば是非その時の話を聞かせてくれますか?」
「無論、隠す事もないしな」
「やった!」
ギーファをきっかけに受け付けの女性ともそれとなく世間話が出来、ギルドにとって理解不能な逸脱者である俺としては少しはマシな評価になった事を期待したい所。
ま、誰彼構わず先手必勝で殴り掛かるスタイルのギーファが悪い噂が尽きないというのは然もありなんと言った話だろう。次のタイミングで先手必勝でギーファを殴りにいける奴もそう多くはないだろうしな。
個人的に奴は気に入っている。世間の評価など俺も地べたを這っている仲間。底辺同士で手を組むのも悪くあるまい。




