【第五十九話】vs ライオネルドラゴン
「チッ、小言は後で聞く」
「言わねェよ。これで俺のエクスプロージョンを防いだッて訳か。憎ッたらしい防御技だなこりゃ」
扉を越えた瞬間、前を行くギーファ達が狙われたであろうその強力なブレス攻撃は、当然後続の俺たちにとっても脅威な訳で。
相殺するつもりだったのか両手を前に構えていたギーファごと巻き込んで、俺は水のヴェール、蒼海朧月を展開した。
「てっきり、文句を言われるものかと」
「あァ!? 今のを俺が防いでいたのなら消費が馬鹿でけェ。前に見た防御技があンだろォが。知ッてッから任せた、つまんねェ事聞いてンじゃねェ!」
「合理的な奴め」
文句を覚悟した選択だったのだが、どうもそれは良いらしい。しかしながらどうにも先程からギーファはブレスの向こう側を睨み付けたまま動かない。
「何かあったのか?」
「ありゃライオネルドラゴンだ。ボス攻略の認識を改めねェと」
「成る程、つまりハズレか」
「臆病風に吹かれてンじゃねェ!! どう考えてもアタリだろォがァァァァァァ!!!」
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・完全鑑定の結果
ライオネルドラゴン
レベル:45
HP:1582/1582
MP:198/203
筋力:821
敏捷:442
耐久:951
精神:214
魔力:223
【火魔法 : A】
スキル
【・煉獄火炎・欠損部位再生・黒炎・水魔法耐性】
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立ち振る舞いや言動に反して博識な奴だ。というかあの燃え上がる様な風貌をして【水魔法耐性】だとは中々に詐欺師な奴だ。どうしたものか。
こちらの思案を他所に、自身の足の裏から爆発を発生させると、ギーファは俺たちから遠く離れ、一人ヘイトを買う様に移動を始めつつ遠距離からの射撃を始めている。敵から見て真横に進んだギーファはこちらと射線が被る事を嫌ったのだろう、本当にアイツに関しては考えを改めないとダメな様だ。
「リーシャン、ローメイはペアで動け。そっちの二人は大丈夫なんだな?」
「ぼぼぼ僕は適当に逃げー」
「任せて! こいつも戦うから!」
「ギャアアアアア巻き込まないでよぉぉぉ死ぬってこんなの死んじゃうって!! 何なのあれライオンなの!? ドラゴンなの!? ハイブリットなの!? 訳が分かんない馬鹿でかい魔物を相手に何をするってのさ!!」
「囮だよ!」
「味方が一番訳分かんないってえええええええ!!」
相も変わらず茶番を繰り広げるウェルキンとアナベル。ま、こいつらとてギーファと共に死なずにここまでやってきているのだ、大きく気にかける必要はあるまい。
「ルクレティアは俺とペアだ」
「ペペペアだなんてそんな! 私はどこまでもご主人様に着いて行きます!!」
「お前こんな時でも余裕綽々だな」
腰に下げられた二本のナイフを抜き、その閃光を僅かに滲ませるルクレティア。さて、どうやら俺たちも参戦して構わないらしいな。
「時に、良いのですか? 手出し無用との話でしたが?」
「ん? さっき許可されただろ?」
「え? そうでしたか?」
「ん?」
あれ? 許可されて無かったか?
そんな流れだった記憶があるのだが。
「ご主人様がその様に仰られるなら私は問題ありません」
「よし、なら行くぞ」
「はい!」
既に攻撃を始めているギーファに対し、逆側になる様に走り始め、俺たちも戦いに参戦する。
「まずは様子を見る、流水龍」
走り様に抜刀し、小手調とも言える水龍をライオネルドラゴンへ向けて疾らせる。いつもの勢いで迸るその攻撃は見事に敵側面へと直撃するも、見た所ダメージは【5】程しか効いていない。五叉をして与ダメ25というのは少々辛い。
水魔法対抗とはまた厄介なスキルを。一属性に頼り過ぎたツケか、やれやれだ。魔力無限は余り晒したい物ではない為、連発は不自然で目立つだろう。25のダメージを積み重ねてもやがては勝てるだろうが、その勝ち方はイマイチ。
ならばー
「ダメージが希薄に見受けられる。直接攻撃に切り替えるぞ」
「分かりました!」
「ガアアアアァァァァァァァァ!!!」
此方に向けたブレスを見舞われるも、そうなるであろう事に予想が付いていた俺たちは交錯する様に駆け回った。敵の的を絞らせず、確実に接近する。だがそのタイミングでー
「チッ、動いたか」
ライオネルドラゴンは前に出たのだ。図太い健脚に加え空へ舞い上がれそうな強大な翼を併せ持つライオン面のドラゴンモンスター。
そんな奴が前進してきたなら圧力は半端なものではない。
「蒼海朧月」
「ガアアアアァァァァルルルル!!!」
自身の周囲に発生させた回転式の水の守り手、水のヴェールによる360°防御を展開し、その鋭い爪による攻撃を受け流す事に成功する。大きければ受け流す能力は下がるが、代わりに防御範囲が確保出来る。小さくなれば物理攻撃の貫通も早々には許さない。
とは言え、受け流せこそしたものの、ライオネルドラゴンの爪はヴェールを僅かに貫通しており、あと少し回転の勢いが弱ければ命中していた可能性を示唆していた。油断ならんな。
「グルルルァァァァァ!!!」
「ハッ、せいやっ!」
俺を狙っていたと見せかけ、その硬い鱗に覆われ長く伸びた尾によってルクレティアを狙ったライオネルドラゴン。だがその攻撃を見事に回避し、逆に尾に向けた剣撃を見舞うルクレティア。
「固いですね、まるで刃が通りません」
「どいてろ女ァァァァ爆殺熱風拳!!」
だがその防御は厚く、刃が通る気配は見られない。そのタイミングでルクレティアとスイッチする形で状況に参戦するギーファ。奴の手には強力な魔力が集約しており、その拳を持って魔力を伴った打撃攻撃を敵側面へと仕掛ける。
着弾点から爆発が巻き起こり、その爆風によってルクレティアがやや押される形で後退する。
「ガアアアアァァァァアアアァァァァ!!!」
「チッ、まるで手応えがねェ」
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・完全鑑定の結果
ライオネルドラゴン
レベル:45
HP:1498/1582
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確かにダメージはそれほど大きくはないだろうが、俺のそれに比べれば確実に数字を稼げている。
「てめェはこの状況どう見る?」
俺の隣へと引いてきたと思ったらまさかの意見交換。こいつ合理的過ぎんだろ。
「水は手応えがまるで感じられない。込めた魔力に対してリターンが少な過ぎる。お前の炎は込めた魔力に対してを考えるなら効果は見込める様に思うが」
「俺のスタミナじゃこッちが先に魔力切れッてか。イラつくぜ」
「故に何処に当てるかを見極める必要がある」
「要は弱点を探ってそこに俺がブチ込めば勝てるッて算段だな。技に集中する」
「後は任せろ」
全く、要点が端的で助かるな。
「ルクレティア、聞いての通りだ」
「あの速度で動く相手に弱点の探索ですか、なかなか指南の技となりそうです」
俺の近くへと移動していたルクレティアへと方針の確認をし、そして直ぐに二人で走り始める。
敵はその巨大を緩やかに動かし、目にも止まらぬ速度で肉薄する怪物。とは言え俺とルクレティアが本当に目で追えないかと言えばそうでもない。
「ガアアアアァァァァルルルルァァァァ!!!」
「おっと、当たらんよ。ここはどうだ!」
「ガアアアアァァァァ!!!」
「ノーダメージか」
ルクレティアがライオネルドラゴンの前に出る事でヘイトを買い、その余り物の様な攻撃を回避しつつ背中と翼へと斬撃を見舞う。ダメージは見られない。尾はダメだった、なら次はー
「やはりここか……っ!?」
顔面が弱点としては定番かと背中から顔面側を狙いに移動しようとするも、そんな俺に向かってライオネルドラゴンの大きな翼が器用に襲い掛かってきた。そういう動かし方も出来るのかよ。さて、どう防ごうかー
「エアリアルドライブ!」
「助かったよ、リーシャン」
「油断、し過ぎ」
「今のは俺が悪かったな」
空中で俺を掻っ攫って行くリーシャン。彼女に抱かれる形で難を逃れた俺だったが、その上で。
「五発、どうですか!?」
「……浅い様だ」
「分かりました、場所を移します!」
ルクレティアを狙ったとみせかけて俺を襲っていたライオネルドラゴン、その大きく出来た隙に乗じて俺の仕事を肩代わりしてくれたローメイ。有能過ぎて主人として申し訳ないな。
「ルァァァアアアアア!! 前足も手応えありません!」
顔面への着弾はダメージこそ見られないものの、目は眩ませられている。その隙を突いた連携プレーで可能性をもう一枚潰したルクレティア。これで両側面、頭、前足、背中、尾、この流れで後ろ足が弱点とは考え辛い。先に狙うならー
「胸元を狙う、あの体毛の多い部分だ」
「了解、任せて」
と、ここでライオネルドラゴンが魔力を集中し始める。
何らかのブレス攻撃か。
「ガルルルルアアアアァァァァ!!!」
狙われたのは……ローメイか!




