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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
四章 火炎のダンジョンとドラッグオンナイト
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【第五十一話】夢のマイホーム

「ご主人様、今日はどういった動きを致しますか?」

「以前自前で家を所持する事を提案しただろ?」

「はい、ありましたね。……まままさか!」

「いやいや落ち着け。今回は一度この辺りの家の相場を調べておきたいだけだ。やがて買おう思ったその時に金が足りないというのも、或いは既に溜まっているのに買えていなかったというのも間抜けな話だ」

「購入へ向けた家探しという訳ですね!!?」

「念願の、家探し」

「僕まともに家住むなんてもう無理だと……うぅ……」

「まだ相場を調べる段階だぞ?」


 家の話を持ち出すとどうにもこの三人は過剰に反応している様な気がしてならない。こちらとしても個室を持つ事は急務なので、深く考えずに利害の一致程度に考えておくか。


「家や建築に纏わる話、何でも良いから聞かせて欲しい」

「えっと、家はドワーフの一族が主に担当しており、名のある職人の家ともなるととても値が張ると聞いた事があります」

「ドワーフしか作っていないのか?」

「いえ、ドワーフが多いのであって、勿論人族や獣族も関わりがあります。なのでその施工をどのチームが担当しているか、という括りで探す感じになると思われます」

「成る程な」

「それらのチームが作った家を纏めて買い上げ、私たちに販売している仲介業者が街の何処かに居ると考えられるので、まずはその方を探すのが良いかと」

「ならその感じで良いだろう」


 当然と言えば当然なのだが、こちらでも不動産屋の様な事をしている連中がいるのだな。お陰で家を建てる所から自前でやる必要は無さそうだ。


 俺たちは朝食を取り終えると、街に出て不動産屋を探し始めた。



 *



 普段歩く往来、意識しなければ見えないもので、案外と日常の景色の中に不動産屋は存在していた。灯台下暗しってやつだな。


「すまない、今は営業中か?」

「勿論です! ようそこパンドラハウスへ!」


 待て待て引っかかりを覚える店名だなおい。普通の家で良いんだからな、頼むぞ。


「当店では他社に無い様な選りすぐりの物件をご用意しております、地上200mの家や海の中の家まで! なんでも仰って下さい!」

「地上200mの家ですか!!?」

「海中の、家!!」

「凄い、僕考えてもどんな家か想像出来ないよ」

「待て待て待て、落ち着けお前ら」


 嫌な予感がしていたが早速これだよ。普通の家だっつってんだろタコ。海だけに。


「普通の家で良いんだ、まずは相場感が知りたい」

「あぁ成る程、そういう事でしたらこちらへお座り下さい」


 そうして漸く俺たちはまともに知りたかった情報にアクセスする事が出来たのだが、やはら金額はかなりピンキリで。


「この家で金貨五千枚か。途方もないな」

「あぅ、まだまだ夢の話の様ですね」

「……これ、何?」

「本当だ、このお家安いですね」

「ん?」


 リーシャンとローメイが見ていたのは何の変哲もないただの家、では無く、何故か無駄に広そうな印象を受ける家だったのだが、値段が何故か安い。


「この家って何故ここまで安く売られているんだ?」

「これですか、これは安いは安いんですけど……あまりお勧めは出来かねる物件でして」

「と言うと?」

「実はここを建築したのはドワーフを含む優秀なチームだったのですが、そろそろ完成だという直前に、ダンジョンが発生しまして」

「ダンジョン? 敷地内にか?」

「そんなまさか。家のすぐ近くにです。そのダンジョンがなかなかに強力なダンジョンでして、恐らく長期的な戦いが予想された結果【売れない物件を造っても仕方ない】と、一部仕事が為されぬままに放置されたのです」

「未完成の、家という訳か」

「その上で爆弾付き、という訳です」


 道理で安い訳だ。これならあと何度かダンジョンを攻略すれば購入出来るんじゃないのか? 何よりこの家は【部屋数が多い】のが最高だ。確約された個室、ビバソロ生活。


「ここ、少し気になるのだが見てきても良いだろうか」

「分かりました。地図をお渡しします。因みにダンジョンには近寄らない方が良いですよ」

「それは何か理由が?」

「単純に危険だからですよ」

「ふむ、ご忠告痛み入るよ。感謝する」

「いえいえ、これも仕事ですので。因みにここは本当に安いので、次に来た時に売却済みになっていてもご容赦ください」

「……分かった。また来るよ」

「是非是非、お待ちしております」


 地図を受け取った俺たちは早速件(くだん)の物件を求めて移動を開始した。今利用している宿から考えればかなり遠いが、ギルドや生活圏の事を考えればこれまで通りで過ごせそうな位置の様だった。そこはかなりプラスポイントだな。


「あの辺りではありませんか?」

「確かにそろそろなのだが……」


 近づいて来ると、思っていたのとは少し違った雰囲気を醸し出していた。辺りは木々に覆われて鬱蒼そしており、確かにダンジョンが発生してもおかしく無いだろうなという雰囲気が周囲に漂っている。


 そんな森の中、突如として開けた空間が出現する。


「うわー! 凄い、僕こんな家に住みたいです!!」

「私もなんだか地元の様な、実家での生活を思い出す様な雰囲気がここにはありますね」

「気持ち、良さそう」


 皆口々に家の感想を教えてくれているが、聞こえて来るのはポジティブな意見ばかりの様だ。全体の感想は平家、部分的に二階も存在する土地をふんだんに使った木造建築と言った印象。入り口からデザイン性に優れており、この家があの価格で買えるのならもうそれで良いのではと思えてしまう。


「あー、これですか」

「成る程な、確かに建築途中か」

「まだ、建てられる」

「僕、もうこれで十分過ぎるくらいだと思うんですけど」


 ローメイの言う通り、残りの建設が為されずとも十分に広さを確保できており、部屋数も完備されている。不動産屋曰く中の作りはバッチリだそうだから、飯を作る事や必要な内装も造られているのだろう。


 問題は、背面側に作りかけの部分、そしてここに造る予定だったんだろうなというスペースが広く残されている事。


 そしてもう一つの問題がー


「これか」

「た、確かにこれは禍々しい雰囲気がありますね」

「何か、怖い」

「僕もちょっと怖いです」


 我が家となるかもしれない物件から徒歩一分。


「これは……少し大変そうだな」

「ですね。中を確認するにしても装備を整えて来た方が良さそうに思えます」

「物見遊山、厳禁」

「そうですね、一旦帰るべきだと思います」


 そこに出現し、そのままにされているダンジョンの存在。


 ギルドの与えた名は【灼熱慟哭のダンジョン】。ギルド認定で【S】ランクと認定された未踏破のダンジョンが、その禍々しさを漫然と発揮しながら、そこに存在していた。

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