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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
三章 嘆きのダンジョンと双子の過去
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【第四十八話】その鷹は余りにも儚くて

 結局こうなったか、我ながら酷い有様だ。今日に関しては俺と言うよりルクレティアが……いや、これは良いか。強いて言うなら、彼女によってナニがヒリヒリする程に搾り取られた、くらいの話だろうか。結局は全員相手にしていたのだから彼女一人がという訳でもないのだが。


 俺は疲労困憊の少女たちを改めてベッドへと寝かし付けると、少し風にでも当たろうと刀だけを腰に下げつつ宿を出て道を歩き始めた。


 遠くに見える夜空の星々はかつていた世界のそれとなんら違いは無く、星座に詳しく無い俺はただその美しさに当てられ、自然の齎す穏やかな空気を満喫していた。今夜は夜風も少し肌寒いくらいで心地よく、火照った身体を冷ますには丁度いい具合だ。と、そんな時だった。


「君の様な美丈夫がこんな夜更けに何をしているのかな?」

「…え?」


 突然、背後から声を掛けられる。全然気が付かなかった、先程までの穏やかな雰囲気が嘘の様に汗が噴き出し、鼓動が早まる。これは恐らく【警戒】だ。拙いモノと遭遇している事実を全身が全霊を以て俺に逃げろと合図している。


 ニジリと、脚に力が集まる。


「止してくれ、私はこの後の話し合い次第ではどうなるとも知れぬ身。多少自暴自棄なのは認めるが、警戒するには値しないさ。そんなに怯えないで欲しいね」


 だがそんな俺の様子を見て、その声の主は柔らかくそんな言葉を俺に贈った。俺もまた、その言葉を受けて声の主が【女】である事に漸く気が付くレベルで頭に血が通い始める。血の気が引くってのはこんな感じか、嫌な感覚だ。


「で、その女戦士様が俺に何用だ?」

「ふむ」


 振り返り、その姿形を確認した俺は彼女にそんな言葉で問いかける。そう、その声の主は女性であり、絵に描いたような典型的な女戦士其の物だった。


「いやそんな大層な用件は無いんだ。まるで中身を失ったかの様な虚な青年が夜半にフラついていたものだからな。老婆心とでも言っておこうか」

「言い当て妙、だな」

「私の言葉にもまだ価値があった様で何よりだよ」


 中身を失って、か。確かに今日は中身を失ったと表す程には俺の中はカラっけつだろうよ。そりゃあれだけやればな。それを虚と呼ばれるのは少し怖い気もするが、言葉の上では【御名答】と答える他ないだろう。


「アンタはアンタで地に足が着いていない様に見受けられるが、先の言葉にもあった【話し合い】とやらが関係しているのか?」

「やれやれ、あっという間に攻守逆転か。我ながら自分が情け無いよ」


 よく見れば女戦士の風体ではあるものの何処かで軽装で、戦地に赴くと言うよりは、会議に出席すると言った雰囲気に近いのだろうか。それに今は夜中も夜中、これからどこかへ討ち入りって話なのであれば、中々に笑えない冗談だ。


 だが彼女のそれは【観念している】という雰囲気を孕んでいる。恐らくとしか言えないが戦う気は無さそうだ。


「……状況が良くないのか?」

「そうだな、私としては真面目に勤め上げたつもりなのだがな。どうやらここまでの様だ」


 むしろ【討たれに行く】と言った雰囲気の方が近いのかもしれない。これだけの実力を持ちながら?

 それにしても、「どうやらここまでの様だ」か。


「逃げてしまえよ」

「馬鹿言え、これまでの自身を否定するくらいならここで死んだ方がマシさ。尤も、どうせなら責務を完うした後に死にたいものだがな」


 ……あぁ。

 頭に引っかかる。


【死んだ方がマシ】


 何だろうな、頭が割れそうなくらいにその単語を聞き流すなと脳内に警鐘を鳴らされている。この美しくも気高い女戦士はこれから死地へと赴くのだ。恐らく、そこで死ぬかどうかは知らないが、少なくともまともな決着は無いのだろう。


 だがこの人はそれから逃げる道を持たないと言う。ルクレティアの時にも感じたが、この感覚は中々にキツい。


「死んだ方がマシ、か」

「何か言いたい事がありそうな様子だね」

「いや、過去に似た状況に立ち会った経験があってね」

「それは因果な事だ。君はそういう星の下に生まれてきたのかもしれないね」

「良せよ、過労で死んじまう」

「違いない」


 そして、俺より実力が上であるこの人に俺が助太刀する余地など【今の時点】では一ミリも存在していないだろう。そこが、ルクレティアの時との大きな違いだな。


「興味本位なのだが」

「何だ?」

「その似た状況に立ち会った際、今の私の立場に在った人は、その後どうなったのかな?」

「……今も俺と共に在るな」

「それは羨ましい」


 ……とは言え、この人を死なせたく無いな。だが、どう関われば良いのか皆目見当がつかない。何故ならこの人は【他人】に他ならない。それに今の俺には一人で突っ走る訳にもいかない仲間の存在もあるのだ。俺一人の話なら自分でケツを拭けばそれまでと言う話だが、今の俺が死ねば仲間である彼女らもまた道連れとなって死んでしまう。


 何より、実力的にこの人より劣る俺がどうこうした所で解決できる問題なのだとしたら、この人はとっくにそれを実践している様に思う。理知的で腕も立つ、俺の出番は無さそうだ。


「せめて、武運を祈るよ」

「ありがとう。私の歩む先が戦場であったなら、その祈りも届いたかもしれないな。それに君こそ、あまり無理の無い様に」


 そんな言葉を残した女戦士ライリスは、宵闇の中こちらを最後までこちらの身を案じながら、その歩みを死地へと向けて進み、暗闇の中一人消えていった。




 ━━━━━━━━━━━━━━


【ライリス・ドルイディア】

 ギルドランク【退会手続き中】


 レベル : 55

 HP:680

 MP:453

 筋力:462

 敏捷:566

 耐久:675

 精神:683

 魔力:451


 装備

【真紅の大剣】


 スキル

【地龍の祝福(地に足の着く限り大地そのものから力を吸い上げ、自身のHPMPを回復し続ける)】


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